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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.5 (2006/09/05 20:58) title:サマー・リーディング(1) 〜彼が邪道を読んだなら〜
Name:モリヤマ (i125-201-153-94.s02.a018.ap.plala.or.jp)

「来てたんだ、忍ーーっっ♪♪」
「キョウ! てめっ…危ねぇだろっっ!! 忍がひっくり返ったらどうすんだっ」
 小沼の甘ったれ声に、二葉の怒声が重なる。
 一瞬驚きに息を呑んだ俺は、突然身体を拘束されて身動きが取れない。
「ねっねっ、アレ、読んだ〜〜っっ?」
 マイペースな小沼のことはこの際ちょっと置いといて、ぎこちなくだけどなんとか二葉のほうに目をやれば、二葉も半分固まったまま心配そうにこっちを見ていた。
(――だ…大丈夫だから)
 そう二葉に目顔で告げると、ほっとしたように緊張を解いたのがわかった。
 それから改めて小沼に訴える。
「小沼、暑いし危ないから、やめないか? それ」
 それ、というのは小沼の挨拶。
 最近の俺限定の挨拶で、いきなり背後から飛びついて首に両腕をまきつけてくる。
 小沼としては親愛のつもりの行動でも、これが自分でもそのうち真剣に落ちるんじゃないかと思うほど見事な絞め技になるときがあって……。
 そろそろ止めさせないと本気で危険かもしれないと思ってたところだった。
「忍がつめたい…」
 今も入り口から一番奥にあるカウンターの椅子に座る俺めがけ、迷うことなく突撃ダイブしてきた小沼は、そんな俺の反応に「うえっ…」と泣きまねしてみせて、尚更ギューギューしがみついてきた。
「わ、わかった、いいよもう好きにして」
「えへ。だから好きさっ」
「…ったく、」
 しょーがねぇなぁ…って声と共に、再びテーブルの新聞に目を落とす二葉に心で謝る。
 でも、なんでか俺、小沼には甘くなっちゃうんだよな…。
 相変わらずな自分に呆れつつ、やっぱり暑いしちょっと苦しいので、そろそろと小沼の腕の輪を広げようと試みる俺だった。

 偶然お盆時期と重なった休みも今日で終わる。
 小沼に明日からのスケジュールの確認も兼ねて、俺は二葉と夕飯の買い物がてら開店前の『イエロー・パープル』へと足を運んだ。
 『ロー・パー』は俺達より一足先に休みを終えて、今日から営業なのだそうだ。
 特別用事がなければ、小沼はたいてい卓也さんと一緒のはず。
 でも、そう踏んで訪れた俺の予想は見事にはずれ、そこに小沼の姿はなかった。
 自宅の電話も携帯も留守電。
 仕方なく確認事項のメモを卓也さんに言付けて帰るつもりが、「あいつなら今に来るぞ」と断言されて待つことにした。
 軽く食うか?と声をかけられたけど辞退して、俺も二葉も普通にミネラルウォーターを頼んだ。
 そこへ、「近所の猫と遊んでて遅くなっちゃったよ〜!」と小沼が飛び込んで…いや、飛びついてきたんだ。

「卓也に今日帰ってくるって聞いてたから、上に寄って一樹に生八橋もらってきたんだ」
 気が済んだのか、ようやく俺を解放した小沼は、隣に座ると腕にかけたままの店名の入ったビニール袋から菓子箱を取り出した。
 生八橋かぁ…。
 一樹さん、今年もお墓参りに行ったんだ……。
 ていうか、さっきから俺の後頭部付近で軽くパコパコ暴れてたのは、生八橋の箱だったのか。
「忍も食べるよねっ」
 菓子箱の包装を綺麗に剥がしながら「俺、ジュース作るからさぁ〜♪」と、ご機嫌な様子の小沼が鼻歌まじりに、やや断定気味に訊いてくる。
「いや、小沼、あの、」
「いいからいいから。みんなで食べたほうが絶対美味しいに決まってんだしっ。遠慮なんて俺達の間で今更だよ〜」
 いや、そうじゃなくて…。
 生八橋じゃなく……。
 俺と二葉、さっき普通にミネラルウォーターを…。
「忍、ペリエでいいか? 二葉も」
「あ、はい」
 すぐに俺の目の前と、少し離れたスタンディング式のテーブル席で新聞に目を通してた二葉のところにペリエの瓶とグラスが置かれた。
「悪い、小沼。…卓也さん、いただきます」
 なんとなく小沼に謝ってしまう俺。
 それでも正直、心で『セーフ…!』と思ってしまってる俺…。
「…うそ。せっかく夏バテ気味な忍のために新しいスペシャルジュース考えてたのに…絶対生八橋に合うジュースなのにぃ…」
 グラスを口に運ぶ俺をじっと見てたかと思うと、小沼がうらめしげにつぶやく。
 ううっ…ごめんよ小沼…。
 でも、生八橋に合うジュースって…。
 小沼にはほんと悪いけど、ドリンク系頼んでおいて真剣によかったと思う。
 小沼特製のスペシャルジュース。
 別名、闇ジュース。
 そう、小沼は最近「ジュース」に凝ってる。
 小沼的には、美容と健康を考えた究極のスペシャルジュースらしいんだけど、小沼以外には、なんだかわけのわからないものをミキサーに放り込んだ挙句できあがったとんでもないものという認識でしかない。
 しかも究極の特製なので、レシピは秘密らしく、俺たちの間では「(原材料が)謎ジュース」→「(なにが入ってるかわからない恐ろしい)闇ジュース」へとネーミングが進化した。…進化するほど、凄い味だったんだ。
 いつもの小沼ならもっと味にこだわってくれるはずなのに、今回は効能重視らしく、「良薬口に苦し!」がモットーだとかなんとか。
 薬は薬で飲むから、できればいつもの美味しい小沼(って言い方も変だけど)に戻ってほしいよ……。

「…あ、そうだ、読んだよ。アレ」
「えっ!? …でっ? どうだった?」
 失意の小沼を浮上させようと、さっき突進してきたときに訊いてきた質問に遅ればせながら答えると、小沼は早速興味を示した。
「うーん…」
「卓也と似てるキャラ、わかった?」
「ううーん…」
 正直言って、さっぱりわからなかった。
 話は一週間程前にさかのぼる。
 モデル仲間の女の子に借りた、あるシリーズもののファンタジー小説&コミックにハマった小沼が、自分で全巻買いなおし、さらに「返さなくていいから!」と俺にも全巻プレゼントしてくれたのだ。
 しかも、宿題つきで。
「あのね、あのねっ! ジャーン! ヒント! 顔(?)が似てるわけじゃありません! …なんていうかね〜行動? 思考? よくわかんないけどっ、卓也なんだよね〜っっ」
 ヒントって…。
 よくわかんないけど、って…。
 そんな語尾にハートマーク飛ばしまくりの口調で発表してくれても…。
「ごめん。ストーリーとキャラの心情追うので精一杯で…」
「んー、まあ仕方ないかっ。卓也を愛し、愛されてる俺だからこそ、わかったのかもしれないし〜」
「あ、ははっ、そ、そうだよ、小沼」
「やっばり〜ぃ?」
「…あ、そういえば、俺も二葉にちょっと似てるかもと思ったキャラがいたよ」
「えっえっ、だれだれっっ!?」
「や、お、俺が自分でちょっと思っただけだしっ。そんな言うほどのことじゃ…」
 小沼のご機嫌ぶりに、つい口が滑った。
「いいじゃーんっ、教えてよーっ。俺も卓也キャラ教えてあげるからさっっ」
 や、別に、教えてくれなくても…いいから…。
 とは言えない小沼の勢いに、
「恥ずかしんなら、せーの、で一緒に言おっ? ねっ?」
「わ、わかったよ」
 案の定押されてしまう俺だった。
 ま、いっか…。
「いい? 忍。せーのっ…」

「「ティア!」」

 ………………。

「「…ええーーーーーーーっっっ!!」」

 たっ卓也さんと、ティアって…に似てるか?
「え、えーと。卓也さんと似てるって、嫉妬深そうなとことか、一筋なとことか?」
「…そういうとこは卓也に当てはまらないんだけど」

『そういうとこは卓也に当てはまらないんだけど』…って。
 そういうとこが当てはまるんじゃないのか?
 顔は笑ってるけど、あきらかに残念そうな小沼の答に、心でだけ突っ込む。
 小沼が見えてないのか、卓也さんが見せてないのか…。
 外から見てたらバレバレなのになぁ…。
「だったら卓也さんって、どっちかって言うと柢王とか山凍とか…そっち系なんじゃ…」
「絶っっ対、ないから!! だったら、二葉のほうが柢王ぽいじゃんっっ!」
「それこそ、絶対、ないね!!」


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