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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.4 (2006/09/05 13:38) title:色…サクラ (時期はずれでゴメンナサイ)
Name:桜草 (softbank219186026005.bbtec.net)

「綺麗だ…」

同性を好きな自分を認めるのが怖い。
それでも、鷲尾という男の存在を消す事ができない。
絹一は、そんな自分自身を持て余している。

「夜の桜もいいけど…」

灰色の空と淡いピンク色の桜の組み合わせ。
中途半端な色の組み合わせ。
今の絹一にはぴったりの色かもしれない。

「やっと咲いたか…」
「ぇ…」

声のするほうに振り返ると、絹一の真後ろに鷲尾が立っている。
気配など何も感じなかった。
それほど、桜に気をとられていた記憶はないのに…。

「曇り空の中の桜もいいもんだな。だが…」

鷲尾は素早く絹一の身体を自身のコートの中に包みこんだ。

「こんなに冷え切って…ったく、呆れて言葉も出ないな」
「…なら、放っておいてくれればいいんだ」

絹一は搾り出すような声を鷲尾にぶつけ、彼のコートの中から逃げ出そうとした。

「何故逃げようとするんだ?」
「何故って…こんなの間違ってる」
「間違い?」
「同性同士の恋愛なんて、こんなの…」
「…確かにな」

鷲尾はすんなりその言葉に同意した。
絹一は、その鷲尾の言葉に動揺を隠せずにいる。
自分から言い出した言葉なのに、鷲尾にその言葉を否定して欲しいと思ってる。
そんなの虫がよすぎる…わかってはいても落胆の色が隠せない。

「否定してほしいんだろう?」

鷲尾は、絹一の本心を見抜いたようかのような言葉を浴びせた。
いや。
実際は、鷲尾自身が絹一から否定の言葉が欲しかったのかもしれない。
今更、絹一を手放すことができるのか?
絹一を…。
自問自答しながら発した言葉に、余裕など全くなかったのだから。

鷲尾は沸きあがる感情を押さえられず、絹一の唇に自分の唇を重ねた。

肩にかけていただけのコートが落ちる。

灰色だった空は所々黒い色に変わっていた。
恋愛の相手が異性でなければいけないことはない。
ただ。
青い空の下よりも、灰色や黒に近い色の空の下が似合ってる…そんな気がしたのは、絹一だけではないのかもしれない。


No.3 (2006/09/04 12:08) title:台風の目
Name:碧玉 (210-194-208-95.rev.home.ne.jp)

「ねぇ、卓也。卓也ったらっ」
「―――――ん・・・」
 桔梗に肩を揺さぶられやっとのことで半覚醒する。
 それもそのはず、卓也は小一時間前にベットに入ったばかりだ。
「今日は休みだ、頼むから寝かせてくれ〜」
「分かってるって、俺もこれから忍と二葉と約束してるし。忍がボイスレコーダー壊れて困ってんだ、使ってないのあったよね、貸してやってくんない?」
 卓也はゴソゴソと布団から腕を出すと部屋の隅のダンボールを指した。
 ダンボールの上には黒マジックで『不用品』と書かれている。桔梗はそれを開けるといっぱいに入ったガラクタから古いボイスレコーダーを見つけ出す。と同時に丸い掌サイズの塊に手をのばした。
「なんだろ、これ?ゲームかな?・・・ねぇ〜卓也」
「・・・見つかったか?忍が使うならやってくれ」
「サンキュ、それよりコレって・・・」
「―――――そこのものは全部やるから寝かせてくれ〜」
「ハイハイ、じゃ起きたらちゃんとご飯たべなよねっ」
 眠そうな卓也を後に桔梗は早々に部屋を後にした。

「おっ、珍しい格好してんじゃん」
「珍しいってよりも俺には懐かしいよ」
 待ち合わせの店に現れた桔梗を見、二葉と忍は口を開いた。
「ジャーン、金持チックなちょい悪ハード系でまとめてみました」
「ちょい悪っていうより昔の小沼そのままじゃん」
「違うもん」
 言って桔梗は折り返したジャケットの袖をめくり何連ものブレスと一体化した時計やベルトについた皮のホルダーなどを見せここが違うと力説する。
「分かった分かった立派なちょい悪だ。それより何でもいいから食わせてくれ〜」
 二葉がもう我慢できないと口をはさむ。
 それもそのはず、桔梗と悠の最近おすすめ自然派食品の店でのブランチ約束で彼等は朝からまだ何も口にしてないのだ。
「肉じゃなくてもいいからさ〜」
 数日前帰国した二葉は焼肉と言い張っていたが、朝から焼肉×××と忍のブーイングにあい、美容と身体にいいとの桔梗の推しでこの店となったのだ。
「じゃオーダーしよう」
 二葉に急かされ桔梗は席についた。
 お奨めを中心にオーダーを済ませると桔梗はゴトンと古いボイスレコーダーをテーブルに出した。
「これでよかったら忍にあげるって」
「助かるよ。卓也さんにお礼言わなきゃ」
「それにしても年代モンだな。だから、この機に新しいの買えって」
「いいよ、せっかく二葉が修理屋さん見つけてくれたし」
 忍愛用のボイスレコーダーは一樹のお古で今時見ない年代物。それが壊れてメーカーに問い合わせたところ部品がなく修理不可能を言い渡され残念がる忍を見かね二葉が修理屋を探し出したのだ。
「けど今のはマイクもいいし、メモリー量だって」
「でも気に入っているから」
 なら仕方ないと二葉は首をすくめた。
「ねぇ、それよりコレ何だろ?ゲームかな?」
 桔梗は卓也のダンボールで見つけた黒い機械をテーブルに出した。
「ゲホッ!!ゲホゲホッ・・・ゲホッ」
「オイ、忍」
 突然飲んでいたアイスティに忍がむせこみ、その背を二葉がさすってやる。
「忍へーき?」
 桔梗も心配そうに覗き込むと忍は苦しそうに目に涙を浮かべていた。
「―――――ご、めん。気管に入ったみたい」
 少しの間苦しそうにしていたが、なんとか落ち着き忍は顔をあげた。
「それって・・・」
「ん、ああ。卓也にもらったんだけど何なのかわからないんだよね」
「もらった・・・の?」
「うん。不用品の箱に入ってて、その中の物はくれるって」
「―――――」
「ん、点滅してるぞ」
 手に取った二葉がスイッチらしきものを入れると赤い光がピカピカとつく。
「そうなんだ。あれ?動いてる・・・さっきはもっとこっちの端で点滅してたのに」
 不思議そうに首をかしげた同時に桔梗の髪が揺れ忍の前に見覚えあるシルバーのイガイガピアスが現れる。
「―――――っ」
 間違いない。以前に一度見たことがある忘れようにも忘れられない・・・高一の時、卓也さんが小沼につけさせていた発信機付きのピアスだ。
 発信機と受信機が揃ってるなんて悪夢のような偶然だ。
 ピアスが発信機になってるなどもちろん小沼は知らない。確か明日は雑誌の撮影が入っていたはず。何としても隠し通さねば。卓也さんが絡むと小沼はメンタルになりグッと表情が曇るのだ。一瞬の間に忍は頭で何通りもの防御策を打ち出した。
〜ピロリロピロリロピロリロリ♪〜
 桔梗の携帯が鳴る。
「もしもし、悠?―――え?なに?・・・もしもーしっ、聞こえる?」
 どうも電波が悪いらしい。桔梗は携帯を耳に当てながら店の外に向った。その背を見ながら忍は二葉に告げる。
「二葉、それ昔卓也さんが小沼につけてた発信機の受信機なんだ」
「受信機〜っ」
 素っ頓狂な声をあげ二葉はため息をついた。
 だが、さすが二葉。彼も一瞬で頭を切り替えた。
「キョウにはバラすな」
 発信機をつけて監視してたなんてキョウにしれたら明日からの忍のアフターファイブは間違いなく貸し切りだ。
 勘弁してくれよ〜こっちには一週間しかいられないんだぜー。声にならない声で二葉はぼやいた。
「とにかく話題を逸らすぞ」
 悠を伴って姿を現した桔梗を遠目に二葉は呟いた。

「よぉ」
「久しぶり」
 数ヶ月ぶりに顔を合わせた二葉に軽く応じ、悠は席につくと興味深そうにテーブルの上に目を留め口を開いた。
「それ何の受信機?」
「―――――!!」
「受信機?」
 突然の爆弾発言にカチンと固まる二葉と忍と別に桔梗はおっとり繰り返す。
「受信機だろ、それ。あれ、発信機も側にあるみたいだ」
 悠は受信機を手に取り覗き込む。どうやら彼はレーダーが読み取れるようだ。
「これ誰の?」
「一応、俺のだけど」
 答えた桔梗の首、そして腕をまくって腕、最後に髪を掻き揚げ悠は目を光らせた。
「発信機は多分、そのピアスだね。それ贈り物だろ?俺もやられたことあんだよね、しつこいストーカーに」
「・・・ストーカー?」
「そ、メカに強けりゃ自分で作れるものらしいし」
「・・・・・」
 絶句し桔梗はうつむいた。
 その様子をいまだ固まったまま二葉と忍は見守るしかない。
 沈黙の数秒がすぎ忍が声をかけようとしたと同時に桔梗の顔がクッと上がった。
 満面の笑みを浮かべて・・・。そして、
「ごめん俺帰るわ。買い物して卓也に食べさせてあげなきゃ」
「ち・・・ちょっと、小沼」
「これって愛だよねー、見守ってた証拠だろっ」
 桔梗は嬉しそうに笑うと「俺の分は食べといて」と悠に告げ急ぎ足で帰途につく。
「―――――はぁ・・・」
 緊張の糸が切れたのだろう二葉がやっとのこと詰めていた息を吐き出した。
「どういうこと?」
 そんな二葉を見ながら悠は首をひねった。

「バカっていうのか、おめでたいのか」
 忍の説明を聞き悠は呆れ顔を浮かべた。
「助かった」・・・と二葉。
 けれど恋人といえども発信機をつけて監視されていたと知れば普通は怒るものなのだろうが・・・。
「小沼はまるで台風だね」
「それに周りは巻き込まれる」
「アメリカじゃ台風に名前があるけど今にきっとあいつの名もつけられるぜ、きっと」
 三人は顔を見合わせ深いため息をついた。
 けれども卓也さえいれば、やがて台風も熱帯低気圧に変わることだろうと確信して。

 有機野菜のサラダをパリパリとたべながら二葉は思う。本当にこれは身体にいいのだろうか?
 いや焼肉でも何でも精神に負担をかけず食事する方が絶対身体の為にいいと思う・・・と。
「夜は焼肉にしような」
 二葉の言葉の意味を理解したのだろう、忍はパリパリとサラダを食べながらもコックリと頷いた。


No.2 (2006/09/01 14:06) title:空蝉恋歌〜焦がれて候〜           
Name: (p149032.ppp.dion.ne.jp)

鈍色の空から透明な針がふりそそぐ。
心に突き刺さった痛みを形にしたならば、それはまさしく針の山。
大切に見守ってきた愛しい人は、どうやら他の男のものになってしまったらしい・・・・・・。
触れたいと思っていた唇から今しがた告げられた事実。
口をすべらせたしくじりに、あの人は頬を赤く染めた。
それ以上見ていられなくて外へでては来たものの・・・・・・。
針はやがて棘となり、消えて無くなるどころか日増しに大きく育っていくだろう。
―――――と、雨音が急に大きくなる。
見ればアシュレイが自分に向かって傘を差しかけてくれていた。
「アシュレイさん・・・・」
「なにやってんだお前。いきなり出て行ったかと思えばこんな家のまん前でずぶ濡れになって」
「ちょっと・・・・・頭を冷やしてました」
頭だけじゃ済まねーだろ、とナセルの手を引き家の中へ入り、手ぬぐいで彼の顔や頭を拭いてやった。
黙ってされるがままナセルはアシュレイを見ている。
ジッと見つめられて居心地が悪くなり、少し乱暴に仕上げて手ぬぐいを彼の肩に掛けた。
「アシュレイさん、俺・・・・・」
「・・・・・なんだよ」
仰ぎ見るアシュレイをやはり沈黙のまま見つめて、ナセルはぎこちなく笑った。
「すみません、なんでもないです」
「なんでもないって事あるかよ、お前・・・・・・っ、待てよっ」
踵をかえし奥へ行こうとしたナセルにアシュレイが背中から飛び付いて引き止めた。
「途中で言うの止めんなっ!気になるだろっ!」
「・・・・・言っていいんですか・・・・」
「言え!」
密着したナセルの背中が濡れていて、染みてきた着物が生暖かい。
アシュレイは彼の体にまわしていた手を離す。
途端ひんやりと冷たくなった胸や腹に震えると、背を向けていたナセルが振りかえりアシュレイの体を力一杯抱きしめてきた。
「?!」
「・・・・・こんなこと言ってもあなたを苦しめるだけだと分かってるけど・・・・誰にも渡したくない」
「!」
「・・・ただあなたを想っているだけでも許されませんか?」
「ナセ―――」
「アシュレイさんが好きだ。ずっと前から」
両頬を抑えられ、至近距離から視線を捕えられ、身動きがとれない。
「俺だけの人になって欲しかった・・・・・」
覆いかぶさるように近づいてきたナセルの唇を受けるつもりはなかったが、アシュレイは動けずにいた。驚きのあまり固まっていたのだ。
あとわずかで触れる、というところで顔に雫が落ちてきて、アシュレイはハッと我にかえった。
「よせ!」
必死に反らした顎をナセルが追う。
そらす。
追う。
「止め―――・・・・」
奪われた唇は、言うべき言葉を飲み込こんでしまった。
大きな手のひらがアシュレイの後頭部を包むようにおさえていて、逃亡を許さない。
圧倒的な力と共にナセルの切なる想いが流れ込んでくる。
「〜〜〜〜」
アシュレイの目に涙が浮かんだ時、やっと解放されて大きく息を吸った。
「・・・・・・・謝りませんよ。俺だってあの人に負けないくらいあなたを想ってる。身分も・・・・体も劣るけど、この気持ちは決して負けはしない」
静かに―――――怒りを堪えているように語るナセルに、今の行為を反省させる気分にはなれなかった。何より彼の方がずっと傷ついているように見えたのだ。
「お前の気持ちは分かった・・・・・謝れとも言わない。でも俺はティアが―――」
言いかけたアシュレイの口を右手で覆うとナセルは首をふった。
「それ以上言わないで。後生ですから・・・・・」
辛そうに笑いかけられてアシュレイは黙る。
「・・・・・・・・帰る」
「気をつけて」
いつもなら見送ってくれるのに、ナセルは悲しげな笑みを浮かべたまますぐに戸を閉めてしまった。
アシュレイは泣きたくなって傘もささずに家路をたどる。
・・・・・いつからだったんだろう?自分を好いてくれていたなんて。
けど、そう言われると思い当たることが次々と出てくるのだ。
「・・・・ごめんナセル・・・・・・」
いつの間にか頭の中はナセルでいっぱいになっていた。

「こんなもんかな」
着替えながらさっき触れたばかりの唇を思い出す。
柔らかくて暖かくて・・・・・想像以上の甘さに興奮してしまった。 
よく止まれたものだと己に感心してしまう。
「アシュレイさんのあの様子・・・・・。俺を気づかってしばらくはあの男と進展することはないだろうな」
したたかな笑みを浮かべて、アシュレイが使った湯呑みに唇を寄せる。
「黙って盗られるのを見ているほど、お人好しじゃないんでね」
ナセルはまだ暖かい湯呑みを頬に当てると、打倒ティアを心に誓った。


No.1 (2006/08/30 22:27) title:宝石旋律 〜嵐の雫〜(8)
Name:花稀藍生 (p1007-dng56awa.osaka.ocn.ne.jp)


「・・・知ってっと思うけど、南領には火山地帯がある。」
 三人の驚きようにアシュレイが「知らなかったのか?!」と面食らい、「聞いたこともない!」
と、口々に事情の説明を求めてくる彼らに、アシュレイはためらいつつぽつぽつと説明を始
めた。
「熱すぎるから、誰も住んでねーし、入り込むのは火山観測に命かけてる火山学者や、欲の
皮が突っ張ったイカレた鉱石ハンターくらいなモンだ。・・・そもそも、まともな神経の持ち
主なら何があっても近づかないようなトコだ」
 三人は突っ込みを入れたい衝動を抑えて先を促す。
「休火山や死火山が多いんだが、そんでも活火山だってあって、そいつらが定期的に噴火す
るのさ。まあ、噴火っていったって、火口から溶岩を垂れ流すおとなしい火山がほとんどな
んだが、時々驚くほど派手に噴火をしてくれるヤツもある。中には噴煙柱の高さが2万mに
達するスゲエヤツもある」
「にまん・・―――20kmぉっ?! どんなだよ?!」
 柢王が驚きながらも先を促す
「そういうのになると、火山灰と一緒に火山弾(上空に噴出された溶岩の塊が回転しながら
落下して弾丸状に固まったもの)や噴石(火口を埋めていた岩石や古い溶岩が噴火によって
吹き飛ばされ、岩隗として落下してきたもの)も一緒に噴き上げて、そこら中にまき散らす。
噴石のでかいヤツになると5t位の大きさがあるしな」
「5トン!」
「そーゆーのが噴っ飛んできて落ちてくるってわけだ。―――以上。説明、終わり!」
 そそくさと話を切り上げてしまったアシュレイに、原因は察しがついたものの、こまかい
ところで納得がいかない三人は口々につめよる。
「・・・ちょっと待てよアシュレイ。火山地帯からあの境界線までどんだけの距離があると思
ってんだ? いくら二万メートルも噴き上がるったってそりゃ火山灰とかだろ。いくら何で
も五トン級の岩が境界線のトコまで飛んでくるとは普通考えられねえだろ!」
「・・・う。」
「そうだよアシュレイ。 私の知る限りの記録や資料に残る噴石や火山弾の最大飛距離は、
少しの例外を除いて噴火口から2km地点が限界のようだし。いくら何でもその説明じゃ信
じられないよ」
「・・・ううっ!」
「そうです。第一噴煙柱が20キロメートルも上がるような噴火なら、天界のあらゆる所で
目撃されているはずです。吾はここに来てそんなに経っていないですが、噴火が話題にあが
っているのは聞いたことがありませんよ」
 柢王、ティア、桂花にまとめて詰め寄られたアシュレイはダラダラ汗を流しながらタジタ
ジと後ずさったが、あっという間に壁際に追いつめられ、3人に囲まれると首を振りながら
叫んだ。
「・・・火山地帯は現国王の直轄地だ! そこに張り巡らされてんのは、当然親父の強力な結
界に決まってんだろ!
考えても見ろよ、二万メートルの噴煙柱なんかが目撃された日にゃパニックが起きるだろ
うが!火口から飛び出る火山灰や軽石の量だってハンパじゃねえ。ほっといたら天界中に降
り積もってとんでもないことになる!―――そうならないよう、噴火のない時はどんな奴ら
でも出入り自由だけど、大規模な噴火が起きた時だけ侵入できなくするような機能はもとよ
り火山灰や火砕流を火山地帯内で食い止め、一般民や他国の者から見えなくするような、
南領の王族、しかも直系の王族しか知らない特殊結界があるんだよ!」
『特殊結界』。―――ならばますます巨石がそんなところまで飛んでくること自体があり
得ない。
「・・・と言うことは、まだ隠していることがあると言うことだ!」(×2)
 アシュレイに柢王とティアが同時に詰め寄る。壁に背中が当たったアシュレイがほとんど
ヤケになって叫び返す。
「・・・しょーがねーだろー! 特殊結界については南領の機密なんだから! 王族の俺が
ベラベラ喋るわけにはいかねーんだよーっ!」
「・・・機密? ふうん。そういうことならますます是非とも知りたいねえ。天界の統治者で
もある守護守天の私には知る権利はおおいにあると思うよ。・・・言わないなら実力行使する
って手もあるけど!」
「つーか、そこまで言っといて、ハイおしまいってのはあんまりだろが!他言無用にするか
ら教えろ! ・・・さもなきゃ文殊塾時代にしでかしたあーんなことやこーんなことを天界中
に言いふらすぞ!」
「・・・て、てめえらあああぁぁぁ!汚ねえぞ〜〜〜っ!」
 顔を真っ赤にして怒鳴るアシュレイに、「絶対何があっても黙ってるから、教えろ!」と
さらに二人が詰め寄る。
 壁に張りついてもはや一ミリたりとも後退できないアシュレイはそれでもまだ逡巡して
いるようだったが、ついに観念して降伏の印として両手をあげた。それからちらりと二人の
後ろに控えている桂花を見た。
「・・・吾は柢王の副官であり、現在は守天殿の秘書でもあります。上官のお二方が他言無用
とおっしゃるのでしたら、吾はそれに従います」
 静かに応える桂花の肩の上で、冰玉までピピッと鳴いた。

 南領の機密なんだから本当に黙ってろよ!とさらに念を押したアシュレイが背中で壁を
こすって床に座り込み、ようやく口を開いた。
「現在一番高い火口から・・・ああ、大規模な噴火を起こす火山ってのは、たいがい高いヤツ
なんだ・・・上空2km地点を頂点にして、親父の結界が火山地帯いっぱいにドーム状に張り
巡らせてあって、火砕流と噴煙を食い止めてる。」
「噴石を止めるためのものじゃないのか?」
「・・・さっき、ティアが言っちまったけど、噴石ってのは高く高く吹き上がったとしてもそ
の重みでまっすぐに落下するから、そんなに遠くには飛ばないんだ。火山が噴火して何より
も怖いのは、噴煙柱が崩れた時に発生する火砕流なんだ。
火山ガスやら軽石やら火山灰やらその他モロモロがごちゃ混ぜになった、温度数百度にもな
る大量の火砕物が地響きをたてながら、秒速100メートルの早さで斜面を流れ落ちて何十
キロという範囲に広がる。巻き込まれたら、まず助からねえ」
「―――秒速100メートル。1キロメートルを10秒の早さで雪崩れ落ちてくる、灼熱の
大津波、ですか・・・」
 桂花が寒気を憶えたように肩をすくめた。
「・・・俺の小さい頃に人界のベスビオス山が噴火した時、それが原因で、ポンペイとヘルク
ラネウムって都市が一夜にして滅びている。」
 ティアが、資料で見た事がある、と頷いた。
「それに噴火によって噴き上げられる大量の火山灰が何メートルもの規模で積もるしな。
・・・まあ、そういうわけで、火山灰と火砕流を火山地帯内で食い止めることを重点において
作ってあるから、勢いよく飛び出した火山弾や噴石とかは結界を突き抜けちまう。・・・それ
から落ちてくる時に結界に弾かれて外に落ちるんだ」
「弾かれたからってそんなに飛ぶものじゃないでしょ?」
 聞き返すティアに、言いにくそうにしていたアシュレイが、渋々と口を開いた。
「・・・その結界ってのは、並はずれた膨張性と弾力性を持ってるんだ・・・」
「―――・・は?」(×3)
 三人が口を揃えてあっけにとられるのを見て、「あ− ちくしょう、バラしちまった」と
苦々しい顔つきでアシュレイはため息をついた。
「例えが適当じゃねえんだが、突ついても壊れないような、ものすごく丈夫なシャボン玉を
想像するのが一番わかりやすいと思う。薄っぺらい石けん水の膜に息を吹き込んでやればど
んどん膜が伸びて、もとの数十倍の大きさのシャボン玉が出来るだろ? 石けん水の膜が、
結界。噴火の勢いが、吹き込む息と考えて貰ったらいい。・・・俺の言いたいことわかるか?」
「だいたいの所はわかるぜ」
「まあそういうわけで、結界は噴火の勢いがどんだけ凄くても、上空に向かって膨張するか
ら結界は破れない。ただ、膨張するだけだと結界の機能としては弱いから、表面に弾力性を
付加して強化してあるんだ。結界の復元力も高まるしな」
 ・・・膨張性・弾力性を持たせることによって、噴火の衝撃や火山灰・火砕流の勢いも留め
ておける優れものの結界なのだが、数少ない欠点をあげるとするなら結界を突き抜けて高い
ところから勢いよく落ちてきた噴石などが弾力性のある結界の表面に弾かれることにより、
余計に飛距離を稼いでしまうと言うことだった。
「だから、高いトコから落ちてきた重い噴石とかは、結界の上を2回3回と跳ね飛んで、火
山地帯の外へ飛んで行ってしまうんだな」
 しかも結界にめり込む時に、結界の上に降り積もった軽石や熱いままの火山弾やらがそれ
にくっついて、さらに巨大化してしまうというおまけ付きだ。
「・・・そーゆーわけで、親父の結界に弾かれた噴石やら火山弾やらが四方八方に飛び散って
地面に刺さるわけだ。南領の各市街地上空には親父の結界があるから降ってこないが、結界
に弾かれて周りには落ちる。だから、郊外の森やら山にいきなり岩が増えてても、南領じゃ
別におかしくも何ともないんだ」

 ・・・沈黙がおちた。

「・・・何てデタラメな」
 桂花が呆然とつぶやいた。柢王とティアが思わず頷き返しそうになったほど、その一言は
聞き終わった後に訪れた彼らの心境を端的に現していた。
「―――だまれ魔族! 魔族の分際で何てことを言いやがる!先祖代々試行錯誤を重ねて
きた結界だぞ?! 口にしちまえば簡単なようだが、結界に膨張・弾力性を持たせることによ
って噴火の衝撃をうまく受け止められるよう改良されるまでどんだけの時間と呪言と霊力
が費やされたと思ってんだ!
カチンコチンの固い結界を使ってた時代なんか、噴火の勢いが強すぎて、結界が壊れてしま
ったその力の揺り返しの直撃を受けた当代の王が1月くらい意識が戻らなかったって話も
あるくらいなんだぞ!」
 起き直って桂花に掴みかかるアシュレイをティアが慌てて止めようとする彼らの背後で、
実に晴れ晴れしい笑い声がはじけた。
 柢王だった。
「で、でっけえ岩が空中をビョンビョン飛び回ったあげくに地面に突き刺さるなんざ、フツ
ー考えられねえって! ・・・なんてぇ すげえお国柄だよ、南領!」
 床に腰を落とし、体を震わせて笑っている。
「あ――― すっげーバカバカし! 悩んだ俺が馬鹿だった!」
 床に転がり腹を抱えてゲラゲラ笑う柢王にアシュレイが顔を真っ赤にして怒鳴る。
「バカだと!? 柢王!コノヤロ!俺の親父の仕事を馬鹿にしやがったな!」
「アシュレイ、アシュレイ、誤解だってば」
 桂花を離して今度は柢王に掴みかかろうとするアシュレイを止めに入ったティアも笑っ
ている。
「柢王が笑っているのは、安心したからだよ」
「ああ? どーゆーことだよ?!」
「あのね・・・」
 説明をしかけたティアがノックの音で振り返る。執務室の扉が開き、一メートル近い大壺
を使い女が三人がかりでよろめきながら運び込んできた。
「お・お持ちするのが、た・大変遅くなりまして・・・」
 使い女達はそれを長椅子の近くに置くと下がっていった。大壺の中には清水が満々とたた
えられている。
 桂花とティアが顔を見合わせた。
「・・・何回ぐらい(喧嘩を)止められそうかな」
「10回は確実かと・・・・」
 次の瞬間ティアが吹き出し、声を立てて笑った。桂花まで肩を震わせて笑っている。
 両側に笑い合うティアと桂花、正面には笑い転げる柢王。笑い声に囲まれてアシュレイは
あっけにとられて彼らを見回し、そして顔を真っ赤にして叫んだ。
「何なんだ!コラお前ら!内輪受けしてねーで、俺に説明しろ―――!」
 


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