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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.202 (2008/05/19 21:16) title:
Name:ぽち (softbank220002050189.bbtec.net)

 夕飯の支度をしている最中に勝手口からノックの音。
「ちわー、三河屋でーす。遅くなってすいません、ご注文の品もってきました」
 どすんとビールケースに一升瓶が3本土間に置かれる。
 きざみものをしていたアシュレイは声の主に目を向ける。かぶっているヘルメットから雫がぽたぽたと垂れているのを見て、雨が降り出したことを知った。
「ご苦労さん、アラン。えっ?雨降ってきたのか」
「はい、配達中に急に」
「ちょっと待ってろ」
 パタパタとスリッパの音を立ててアシュレイは奥に入っていった。ガス台からは美味しそうな煮物の匂いがただよってくる。
 1日に一回はこの家へ来ている。自分がこの町で働き出してからずっと親切にしてくれているお宅で、アランが密かに憧れている人が住んでいる家。
「ちゃんと拭け! 風邪ひくだろ」
 ヘルメットの上からバスタオルをかぶせ、きゅっきゅっとアシュレイは拭き出す。
 アランは、慌ててアシュレイの目前で手を振り、その勢いのまま拭いてくれている手首を握った。
「ありがとうございます。でもアシュレイさん、ヘルメットかぶってますから頭は濡れませんって」
「そっか?」
 アランはアシュレイからバスタオルを受け取り、軽く上着に付いた雨雫を拭き取った。
 アシュレイはじっとその様子を見ていたが、拭き終わったのが判るとアランからバスタオルを受け取り、肩越しに見える外の様子を伺う。
「結構降ってきたな、気をつけろよ、お前バイクなんだから」
「今日は、アシュレイさんのところで終わりなんです。あと、店に帰るだけだから」
「バーカ、降りはじめはすべるだろ。も少しで終わるんなら尚更気をつけねぇとな」
「そうですね」
 自分の事を心配してくれるアシュレイににっこりと笑って「気をつけます」と言うと、アシュレイもニコッと笑ってくれた。
 
「じゃあまた、お願いします」
 パタンと勝手口を閉め、雨の中急ぎ足でバイクへ向かう。
(今日は手首を握ってしまった)
 雨の中、つい両手を広げ先ほどのアシュレイの感触を思い出す。
(あーあ、人妻じゃなきゃなぁ。田舎につれてって自分のお嫁さんにしてしまうのに)
 出会ったのがちょっと遅かっただけ…。アランはぷるぷるっと頭を振りスーパーカブに跨った。
(毎日会えるだけ上等と思わないと…)
 明日もうまくすれば御用聞きと配達で2度会えるかもしれないと、頭を切り替え店までの道を安全運転で戻っていった。
 
 
 本日のメニューは肉じゃがと、アジの開き。ご飯を炊いて味噌汁作って… 後何にしようか思案していた。
 横で李々が、夫:冥界教主の為の酒のつまみを作っている。
 雨音はだんだん強くなり、台所に立っている2人の耳にもその音が聞こえるほどに激しく降ってきた。
「かぁさん、とぉさんたち傘持ってったかなぁ」
 アシュレイは過去、ずぶぬれで帰ってきて家の中をびしょびしょにしたことがある父親の事を思い出し、心配そうな顔を母親に向けた。
「お父さんは持っていったはずですよ、私が強く言いましたからね」
「ふぅーん」
 じゃあ、平気だなと夕飯の支度を続けたが、おもむろに台所においてある子機を持ち、悩むことなくピピピッと慣れた手つきで番号を押し出した。
 数回コールすると、相手の声が。
『アシュレイ、どうしたの?』
「あのさー、雨降ってきたから、お前傘持ってたか聞こうと思って」
『えっ、雨?』
 社内にいると気づかないのだろう、慌てて外を確認しているようだ。
「もし、持ってってないんなら、駅まで傘届けてやるよ」
『ホントに? 嬉しいなぁ。でも遅くなるかもよ』
「別にいい、駅に着く頃電話くれれば」
『ありがとう、じゃあ電話するね』
「うん」
 プチっと電話を切り、母親にティアの迎えに行く事を報告。
 何時に電話をもらってもいいようにアシュレイは夕飯の支度を急ピッチですすめた。
 母も横で支度をしながら、自分も若い頃は……と、クスクス笑いながら思い出していた。
 
 
「いいですね、家の方 迎えに来てくれるんですか?」
 横の席の山凍が、電話の対応を見てボソッと言った。
「ええ、雨が降ってきたので心配してくれたようです」
「新婚さんですねぇ」
 ティアは軽くテレ笑いを浮かべ、さくさくと今日の分の報告書と次の見積もりなどの書類を片付けだす。いつもより進みがいいのは、さっきの電話のせいに違いない。
 天気予報は微妙な状態だったが、会社のロッカーに置き傘をしているから何とかなるだろうと思って、家から出る時は傘を持ってこなかった。
 こんな風にアシュレイが気遣ってくれるとは思いもよらず、ティアは嬉しくて頬の肉が緩みっぱなしだ。
 気分を引き締めようと、喫煙ルームに向かう。吸うわけではない、コーヒーでも飲んで落ち着こうと思ったのだ。
 仕事中にこんなデレデレしていてはいけないと、軽く頬を叩いて気合を入れるが、先ほどの電話の声が耳に残っている。
 誰もいない事をいい事に携帯電話をパカッと開く。待ち受け画面には結婚式直前のウェディングドレス姿のアシュレイの写真。 
「愛してるよ、奥さん」
 早く仕事終わらせるから迎えに来てね と、小さな声で囁いた。


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