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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.111 (2007/05/09 22:36) title:統一地方選挙(8)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)

 
 その日(告示日)の夜遅く。
 
 ティアの選挙事務所部屋では早速、「反省会と明日以降の傾向と対策会議」が開かれていた。
 メンバーは、ティア、アシュレイ、柢王、桂花、江青、珀黄の6人。
 
アー 「なにーっ! 北は孔明に乗って回ってただとー!?」
ティア「お、おちついて…アシュレイ」
 
 デンゴン君による公職選挙法では、選挙運動のために隊列を組んで往来するなどの気勢を張る行為は禁止されている。そのためティアは、人数を極力おさえていた。
 陣営のイメージカラーである、白にちなんだ白馬にまたがりゆるやかなお手振りで領民達の心を掴むティアと、その周りをガードするアシュレイと天主塔警備からの有志数名(白のハチマキ着用)、そしてその両側では天主塔使い女協会からの派遣使い女ふたりによって、ティアの『微笑みチラシ(香りつき)』が配られた。
 南の主だった町のいくつかを回り、その先々の広場で演説し、その際軽く握手会のようなものもした。
 そんな地味ーな活動だった。(アシュレイ比)
 負けず嫌いでお祭り好きなアシュレイにとって、北が黒麒麟を出してきたことは、明らかに自分達の戦略負けを意味していた。
 だがなにより神獣である麒麟を、ましてやマブダチ孔明がそんなことに使われたということこそが、アシュレイには許せなかった。
 
 
江青 「アシュレイ様は見ないほうがよろしいかと思いますが…………、
    これが珀黄が隠し撮りしてきたあちらの活動報告Vです」
 
(珀黄、そんなスパイ活動みたいなことしてんのか…!?)
 
 と一瞬アシュレイの気勢がそがれかけたかと思いきや……。
 珀黄がハンディカメラから取り出した活動報告Vの映像と音声がプチ遠見鏡に映し出されるや否や、一気にアシュレイの怒りが沸点に達した。
 
「孔明に…俺の孔明に…なにやらせてんだーーーーーーーーっっ!!」
 
(俺の……?)
 
 瞬間、アシュレイの発言の中の所有格に、ピンポイントで反応したティアの表情筋がにわかにひくついたが、その孔明にまたがる人物の格好に、ティアは顎が外れそうになった。
 
 
 
--- + --- + ------- + --- + ------ + --- + ----- + ----
 
 山凍  「ネフィー様っっ、孔明の上でポーズはいいです…っ。
      普通にお手振りだけにして下さい…!!」
 ネフィー「だって皆喜んでるじゃないか。サービス、サービス」
 山凍  「ああっ…!! 駄目ですっ…! 出血多量の前に、お年寄りの
      心臓が持ちませんーーーーっっ…」
 ネフィー「うるさいなー」
 山凍  「だ、だからポーズは…っっ…ネ、ネフィー様っっ、しししし、下に
      なな、なにも……? なななまあし……!? ……ひ、」
 
 
   ひーーーーーーーーーーーーーっっっ……!!!!
 
--- + --- + ------- + --- + ------ + --- + ----- + ----
 
 と言う山凍(?)の大絶叫で、Vは切れた。
 
 ちなみに、執務室を選管に譲っているため、遠見鏡が使えないティアのために、持ち運び便利なプチ遠見鏡がアウスレーゼから特別に無料貸し出しされている。
 
柢王 「………な、なんか、凄そうだな、向こうは」
桂花 「も、盛り上がってる…というのでしょうか、あれも」
珀黄 「…私は、いつ山凍様の血管が切れるか…もう心配で心配で…。
    この身をかけて、ネフィー様をお止めに行こうかと何度も
    思いかけましたが……」
柢王 「……このV、ところどころ、妙に真っ赤な飛沫が飛んでんだよな…」
珀黄 「申し訳ございません…! 私の……鼻血です」
桂花 「………おつかれさまでした。珀黄殿」
 
 
 なんと言っていいか迷った挙句、桂花は一言だけ声をかけた。
 ティアとアシュレイにいたっては、言葉もない。
 
ティア(………暴挙は許さず、とお願いしたのに…っっ)
 
アー 「…………けて、たまるか」
江青 「…え? アシュレイ様、いまなにか?」
 
 アシュレイの地を這うような低い呟きに江青が訊き返せば、一瞬、アシュレイの身体を炎が包んだ。
 
「こっちは、明日はギリで行くぞっっ!!」
 
柢王 「…ギ…リ、って…。待て、落ち着け、アシュレイ!」
桂花 「…死人が出るんじゃないですか」
アー 「そこらじゅうに結界張って、万全でやれば大丈夫だっ!」
珀黄 「だ、大丈夫なんですか…っっ?」
柢王 「ンなはずねーだろ、たぶん」
 
 蒼白な珀黄に小声で訊かれた柢王は、あっさりと答える。
 実際のところ柢王は、選挙の勝ち負けに興味はなかった。
 それよりも…。
 
(ティアは、本当に守天になりたいと思ってんのか…?)
 
 守護主天としてのティアを常々気にかけていた柢王は、ティアの真意を測りかねていた。
 
アー 「…あんなに速く飛べて、あんなに綺麗で誇り高い奴なのに…
    許せねえ!!」
珀黄 「申し訳ございません…!」
江青 「ですが…」
珀黄 「江青っ!」
柢王 「いいから話せ、江青」
 
 差し出口を珀黄に咎められた江青だったが、柢王に促されて口を開く。
 
江青 「麒麟は、ネフロニカ様の勧めにより山凍様のおそばにあるもの。
    山凍様の願いもあるでしょうが、麒麟は自らすすんでネフロニカ様を
    乗せていらっしゃるのかも……」
柢王 「……おまえら、江青も珀黄も、向こうの新人、知ってんのか?」
江青 「…………」
珀黄 「いえ……あの…っ」
 
 言葉をなくした江青に代わり口を開きかけた珀黄だったが、なんと言えばいいか分からない。
 というか、なぜ先代守天のネフロニカが、昔と変わらぬ姿で突然暉蚩城に現れたのか、全くもって分からないのだ。
 
桂花 「…そういえば、前にこちらが『淫魔の城』と呼ばれていた御代の、
    その当時の守天殿の名前が、たしかそんな名前だったような」
 
 桂花の言葉に、柢王も以前執務室で見た目録を思い出す。
 
柢王 「あ、そーだそーだ! 『男殺し』とか呼ばれてた守天の名前が
    そんなんだった!」
アー 「…いんま? おとこごろし?」
 
 先代のこととはいえ、天主塔と守護主天に関わることなので、その場の全員の目がティアに集まる。
 ティアも、そろそろ隠しておくのは無理かと思い、だが、なんと説明すればよいものかと迷ったとき。
 
『ソコマデー!』
 
江青 「…ひ、ひゃあーーーーっっっ…!」
アウ 「…セーフ。そなたは、本当に危なっかしくて目が離せぬな」
 
 言葉どおり、いままで投票準備の作業の傍ら、執務室の遠見鏡からこの選挙事務所部屋を覗いていたアウスレーゼとデンゴン君。
 なにやら話の流れがヤバそうだったので、イエローカードの提示に現れたのだった。
 
江青 「あ、アウスレーゼ様。…いつも申し訳ございません」
 
 驚きで椅子からずり落ちそうになった江青を抱きとめたアウスレーゼは、満足そうにそのまま膝抱きにして椅子に腰掛けようとする。
 
珀黄 「…こ、江青…!?」
 
 妻子のある、いい大人である従兄弟が謎の男(だが、位は高そう)に妙な姫扱いを受けている。
 
珀黄 (……わ、私はどうすれば……っっ!?)
 
『あうすれーぜ、今、投票ノタメノ作業ニ チョット疲レテ飽キテキテタ。ストレス発散ノタメ、カワイイモノ、愛デタインダッテ。』
 
珀黄 「ぅわっ!…は、はいっ、わわわかり…いえ、かしこまりてございます!!」
 
 突然、最上界の神(?)に言葉をかけられ、珀黄の心中はてんわやんわだ。
 
アウ 「それで、新人候補のネフロニカのことだが。彼については、一切
    詮索無用。確かに、先代守天と関わるものではあるが、そのことに
    ついての他言も厳禁だ。北の山凍殿と珀黄と江青以外は、この
    天界で先代についての記憶はないことになっておるのでな」
 
 その場の全員が、それきり誰もなにも言わなかった。
 静かに怒るティア以外は。
 
ティア「……アウスレーゼ様。」
アウ 「ど、どうした、守天殿」
ティア「………あの、あちらの方のふしだら極まりない選挙運動に対して、
    どうしてレッドカードを出されないのか、理由をお聞かせ下さい。
    なんでキリキリ取り締まらないのか、そのわけを、ご説明下さい。」
アウ 「いや、それは、その…」
『不特定多数ニ対シテノ 行為ナノデ あうすれーぜモ 迷ッテタ。』
ティア「迷うもなにも…。デンゴン君も、選挙運動中のワイセツ行為に関する
    規制はないんですか…っ?」
『…わいせつ…ッテ?』
アウ 「ああ、まあ、なんというか、取り締まるべき不適切な行為、という
    意味だ」
『…我ノ セイ?』
アウ 「いや、デンゴン君のせいではない。気に病むでないぞ」
ティア「…確かにデンゴン君の責任ではないかもしれませんが、あの方が
    立候補した時点で、アウスレーゼ様なら予測できたことなのではあり
    ませんか? どうしてデンゴン君に進言なさらなかったんですか!」
アウ 「いや、すまぬ…! あ、明日からは、北に申し付けておくゆえ…」
アー 「ティア、ティア…落ち着けって。心配するなっ。明日は俺も、もっと
    頑張るからさ! 絶対、おまえを勝たせてやる…!」
ティア「アシュレイ……」
アー 「おまえ、今までずっと天界と人間界のために頑張ってきたんだ
    もんな。絶対、俺が負けさせねえ!」
 
 ティアの今までにないアウスレーゼへの怒涛の突っ込みに、アシュレイはティアの守護主天という尊い立場と仕事への思いと責任を目の当たりにした気がした。
 そして、声に出すとともに、心に誓った。
 必ず、ティアを守天にすると――。
 
 そんなアシュレイを見て、柢王は思った。
 ……勘違いは守天を救うと。
 
『あしゅれい…』
アー 「大丈夫だって。心配すんな。ティアももう怒ってなんかないから。
    …そうだ、おまえ、今夜はもう仕事終わったのか? もし終わった
    んなら、あとで俺と一緒に風呂でも入るか?」
『ふろ…ッテ、ナーニ?』
ティア「アシュレイ!!」
アー 「…な、なんだよ、いきなり大きな声で」
ティア「だ、駄目だよ。デンゴン君は…、そう、きっと水気厳禁のはずだよ。
    ……そうですよね、アウスレーゼ様」
 
 ティアの迫力の問いかけに、アウスレーゼも逆らえない。
 
アウ 「う、うむ。風呂は、守天殿と入れ、アシュレイ」
アー 「なっなっ…なんで俺がティアと…っ!!」
 
 真っ赤になったアシュレイに、よくわからないが残念なデンゴン君。
『我、駄目ナノ? あうすれーぜ』
アウ 「また明日、アシュレイに遊んでもらえばよいではないか」
『ウン。ソシタラ、あしゅれい、マタ明日。我、仕事ニ戻ル。』
アー「おう、また明日な!」
アウ「では、失礼する。…江青、またな」
 
 そういうと、ふたり(?)は現れたときと同様、あっという間に消え去った。
 
珀黄 「…なぜ江青にだけ?」
江青 「さあ……」
 
 不審がる珀黄をよそに、江青の頬はほんのり赤く染まっていた。
 
(…妻帯者殺し)
 
 柢王と桂花とティアの心の声は、幸い(?)誰にも聴こえなかった。
 
 
 


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