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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.110 (2007/05/09 22:36) title:統一地方選挙(7)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)

 
『天主塔ニュースの時間です。今日告示された守護主天選挙は、現職のティアランディア・フェイ・ギ・エメロードと、新人のネフロニカ・フェイ・ギ・エメロードが立候補し、現職と新人の一騎打ちとなりました。第一声はそれぞれ、現職が天主塔前、新人が北領・暉蚩城前で、午前と午後という時間差で行われました』
 
 
柢王 「とうとう始まったか〜」
 
桂花 「…あなた、まだこんなところにいたんですか」
 
 扉を開けて中に一歩踏み入れた途端、どこかのんびりとした口調に桂花は顔をしかめた。
 こんなところ、とは、天主塔・臨時執務室。
 守天選の間は、選挙管理委員会が執務室を使うことになったので、別室に臨時執務室が設けられた。
 おかげで桂花は、要りようのものがあるたびに、執務室と臨時執務室の往復を余儀なくされている。
 
桂花 「今日は文殊塾で剣術指南の授業がある日だったんじゃ?」
柢王 「あれな、再来週の分とまとめてすることにした」
桂花 「…またいい加減な」
柢王 「つーか、四海が休んでいいってさ。たぶん、ティアの味方になって 
    やってくれってことなんだろ。でも表立って動くとうるさいからな〜」
 
 …血の繋がったかまびすしいハエがあなたにはいらっしゃいますからねぇ。と心で思ったが、桂花はただ柢王を冷たく見るだけに留めた。
 
桂花 「だったら、ここじゃなくて事務所部屋に行って江青殿の手伝いでも
    してきたらどうですか」
 
 一応柢王は、三男とはいえ東領の王子なので、とりあえず裏方でティアを支えようと……思っているらしいのだが、選挙事務所ではなく、たいていこの臨時執務室に入り浸っている。守天の仕事の分類・整理をしている桂花のそばでくつろぎっぱなしの毎日だ。
 
柢王 「江青かぁ…。お邪魔虫にはなりたくねぇしなー」
桂花 「は?」
柢王 「そりゃそうと、なんでティアは朝から晩まで帰ってこないんだ?」
 
 選挙期間中、ティアは午前中は選挙で天界中を走り回っているようなのだが、午後には戻ってきているはずなのに、なぜかいつも姿が見えない。
 
『ソレハ、秘密デス。トリアエズ 言エルコトハ、公職選挙法デ 定メラレタ 約束ダカラ、デス。候補者ハ、皆、平等。』
 実は、柢王が気づいてないだけで、ティアは一応戻ってきている。ただ速やかに執務室で新人候補と交代し、遠見鏡から北に直行しているだけで。
 
桂花 「…なにか御用ですか?」
 
 突然現れたデンゴン君に、一瞬目を見張ったものの柢王も桂花も冷静だ。
 
『あしゅれい、知ラナイ?』
桂花 「…いませんよ、ここには」
『嘘。つんつん、あしゅれいト友達。つんつん、あしゅれいニ 会ワセテ』
桂花 「なんで吾が友達なんですか。吾と彼とはいつも喧嘩ばかりでしょう」
『ダッテ、喧嘩スルホド 仲ガ 良イッテ』
桂花 「誰が」
『あうすれーぜ ガ。』
桂花 「残念ですが、大嫌いです、お互いに」
『…キライ キライ モ、好キノ ウチッテ』
桂花 「誰が」
『あうすれーぜ ガ。』
 
桂花 「とにかく、猿はいませんよ」
 
『サル…? ナニ、ソレ??』
柢王 「猿ってのはな、馴れればすっげぇ可愛いんだけど、喜怒哀楽が
    激しくて、なかなか手に負えない野生の生き物のことだ」
『フゥーン…』
柢王 「ところで、その、ツンツン、てのは桂花のことか?」
桂花 「そうですよ」
デンゴン君より早く桂花が応える。
 
柢王 「…どういう意味だ、そりゃ」
桂花 「別に」
 
柢王 (別に…って)
 そんな妙な名前で呼ばれて桂花がなにも言わないのはおかしい。
 
『アノネ、』
桂花 「教えなくていいです」
柢王 「や、教えてくれ!」
『…ドッチ?』
柢王 「桂花は知ってんだろ? だったら俺にも頼むっ!」
『つんつん、イーイ?』
桂花 「……お好きなように」
 
『アノネ、』
柢王 「うんうん」
 デンゴン君、柢王と桂花を交互に見て、口を開く。
『教エナーイ』
柢王 「……なんじゃ、そりゃーーー!!」
 
 柢王も、どうしても知りたいというほどではなかったが、思わぬ肩すかしにがくっとくる。
 
『つんつん、あしゅれい ハ?』
桂花 「今日は、守天殿と一緒に南の領内を回ってるはずなので、そろそろ
    戻ってきますよ」
 
なんだかんだ言いつつ、桂花もデンゴン君に親切だ。
 
『帰ッテキタラ、遊ンデクレルカナー』
桂花 「ここに寄ったら伝えておきます。あなたもお仕事に戻って下さい」
『分カッター。民主主義、バンザーイ!』
 
 そういい残し、デンゴン君はスルッと消えた。
 
 
 
 そして、ここはティアの選挙事務所部屋。
 仕事に戻るはずのデンゴン君。
 これまたティアの選挙部屋に入り浸っているアウスレーゼを呼びに来たらしい。
『アレ? 江青、寝チャッタノ?』
アウ 「疲れておったみたいなのでな。休ませた」
『…ドウヤッテ?』
アウ 「子供は知らなくていいことだ」
『……オ邪魔虫?』
アウ 「ん? なにがだ?」
『分カンナイケド、サッキ 覚エタ。つんつん ノ 相方 ガ、ココ来ルト オ邪魔虫、ッテ。我、今、昆虫?』
アウ 「……いや。大丈夫だ。デンゴン君はデンゴン君のままだ。
    安心しなさい」
『ヨカッター』
 なにがよかったのか、アウスレーゼにも分からないが、デンゴン君がよかったのなら、まあいいか、と思っておくアウスレーゼだった。
 
アウ 「ところで、アシュレイには会えたか?」
『あしゅれい、てぃあらんでぃあ ト、オ仕事ダッテ。』
アウ 「ああ、選挙運動中か。臨時執務室に誰かおったのか?」
『つんつん ト 相方』
アウ 「桂花と柢王か…」
 
 そういうと、アウスレーゼはククッ…と笑った。
 
アウ 「デンゴン君くらいだろうな。そんな呼び方で許されるのは」
『ナンデー?』
アウ 「…まぁ、その愛称の由来があの魔族の気に入ったのだろうな」
『ナニガー?』
 
 デンゴン君にはよくわからない。
 三界主天様・作で、そのメッセンジャーで、自称・神ではあっても、創造されたばかりのいわば赤子同然なのだ。
 
 
 
 その頃。
 夜中戻ってきた守天が、溜まった書類の処理を少しでも早く終えられるよう、鋭意分別作業中の桂花が孤軍奮闘する臨時執務室。
 
柢王 「ヒマだなー。なぁ、桂花ぁ…」
桂花 「吾はヒマじゃありません」
柢王 「俺はヒマなんだって。なぁ…桂花……桂花って。……け、い、かっ」
 
 そう言って、作業中の桂花のすぐ横においた長椅子に寝そべった柢王が、桂花の髪を指に絡めて甘えてくる。そうしてそのまま絡めた髪を自分の口元に持って行ったり、軽くひっぱってみたり。
 
柢王 「お茶にしようぜ。なっ、桂花」
桂花 「…………わかりましたから、ひっぱらないでください」
 
 根負けして、手にした書類の束を置いた桂花は、ふと人形の言葉を思い出した。
『髪ノ毛 つんつん ヒッパラレテ、ナンデ嬉シソウダッタノ? 痛クナイノ?』
 意外な言葉に、自分がなんと答えたのか覚えていないが、続いた人形の言葉は覚えている。
『ダッタラ、我ハ つんつん ッテ呼ボウット。ソシタラ つんつん サレテルミタイニ 嬉シク思ウー?』
 
 柢王にされてることだから自分は嬉しく感じるのだろうと思ったが、人形の言葉がなんだか微笑ましかったので、桂花はつい「お好きなように」と応えてしまった。
 
柢王 「…そういや、ツンツン、ってさ、おまえがツンケンして見える、ってこと
    だろ? 失礼な人形だよなー」
桂花 「・・・・失礼なのはあなたでしょう」
柢王 「はーっ!? なんだよ、それっ。…桂花っ、桂花って!」
 
 そっぽを向いてしまった桂花の髪をツンツンひっぱって訊く。
 
 それが答えですよ、なんて絶対教えてやらない。と、桂花は思った。
 
 
 


No.109 (2007/05/09 22:35) title:蒼天の伝言
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)

 
(↓以下は、NO.98〜NO.99「蒼天の行方」とここの前後の「統一地方選挙」のミックス(?)になってます。軽く…深く追求せずに、軽く読んでいただければ…幸いです)
 
 
 
 後戻りはできない。
 自分の意志でここまで来たのだ。
 ……掌に、爪が食い込むほど強く拳を握り締める。
 懐かしい空に背を向けて、声にならない痛みに堪えるように、桂花は強く目を閉じた。
 
 
 そうして、次に目を開けたとき。
「…………っっ」
 桂花は目の前に立つ物体に、思わず息を呑み、部屋の隅まで一気に後退った。
『つんつん、久シブリ。』
「…ど、どうして、あなたがここに」
『遊ビニ 来テミタ。』
「来なくていいです」
『つんつん、冷タイ…』
「冷たくて結構。さようなら」
『ダッテ、我、ココデ あしゅれい ト 待チ合ワセ中』
「ここでって…」
 なんて傍迷惑な……。
 そう思い、桂花が懐かしい(?)デンゴン君を追い返そうとしたとき、扉が開いた。
 
「桂花! 大丈夫…か…? なっ…なんだ、それはっ!?」
 桂花を心配して急いで戻ってきたカイシャンの目が、奇天烈な銀人形に釘付けになる。
『ソレ、ッテ……。失礼ナ 子供ダナ』
「うわっ、なっ……こいつ、喋ったぞ! 桂花、聞いたか!?」
『コイツ、ッテ。つんつん、言ッテヤッテ。モウ。……我ハ 神ナリ。オマエ、チョット失礼スギルゾ。つんつん2号』
「2号…って。なんですか、それは」
『ダッテ、ソイツノ髪ノ毛 少シダケド つんつん 立ッテル。』
「…………」
 前はもっとツンツクツンで、やっとでここまで収まってきたところなんだとは、カイシャンの前ではいえない桂花だった。
 
「桂花、桂花、凄いぞ!! おまえ、ゲルでこんなもの作ってたのか!? 陛下もこれを見たらきっと驚くだろうな。…桂花、これ陛下に見せてきてもいいかっ!?」
 だが当のカイシャンは、人形の言葉を聴いているのかいないのか(たぶん聴いてない)、おおはしゃぎだ。
 桂花もそんなにキラキラした期待の瞳で尋ねられては、嫌とはいえない。
「…吾も行きます」
 そういうと、桂花はデンゴン君をひょいと持ち上げ、カイシャンとともに部屋を後にした。
『チョット待ッテ。つんつん、ドコ行クツモリ? つんつん! つんつん ッテバ!!』
 
 そうして、フビライの御前。
『ナルホド、ソナタガ ふびらい カ。』
 ときに甘えん坊なデンゴン君だが、腐っても三界主天様・作。締めるときは締める人形だ。
「おおっ…。なんと見事なからくり人形じゃ!」
「いえ、まあ…その…」
「桂花、この人形、儂に譲ってはくれぬか!」
 そう言って、桂花の手の中のデンゴン君を奪い、自分の目の前まで持ち上げ見とれるフビライ。
「見れば見るほど、なんと面妖な…」
『……子供バカリカ ジジイ マデ 失礼ダナ』
「はっ! なんとおもしろい! このフビライをジジイとは!」
 楽しげに笑うフビライに、桂花は冷や汗タラタラだ。
「陛下、それは吾が作ったのではなく…」
「なんと! ではどこの誰が!?」
「………」
 桂花にしては歯切れの悪い物言いに、フビライも気にかかる。
「陛下」
 そこへカイシャンが声をかけた。
「陛下、それは、神なのだそうです」
「神、とな?」
「はい、それが自分でそういいました」
「ほぉ…。ますますおもしろい!」
『オモシロクナイヤイ。つんつん、あしゅれい ハ? 我ハ、あしゅれい ト 遊ビタイ』
「神は、あしゅれい、とやらを所望か!?」
『ウン』
「で、あしゅれい、とは神のなんなのだ?」
『あしゅれい ハ… 』
 
と、デンゴン君がうっとりとアシュレイについて語ろうとすると…
 
「残念ですが、ここまでです」
『ナニガ?』
 デンゴン君のあどけない質問など気にもとめず、桂花は声をひそめて続けた。
「陛下、この人形は吾が作ったものではありませんが、実はこの人形には呪いが…」
「なんと!?」
「ほら、ここに…」
と、桂花はフビライから人形を受け取り、デンゴン君の額を指差す。
「なんじゃ、それは…」
「陛下…。これこそが、呪いの『選管マーク』なのです」
「…だから。なんじゃ、それは」
「これは、国や領地を治める王のところに突然現れ、その地位から引き摺り下ろしたり、治世を混乱に陥れる人形であり、この印はその混乱を見守り管理する、邪悪な印なのでございます」
「…よくわからんが、よくないものだということか…?」
「はい」
 桂花の答えに、フビライはいまだ意味不明ながらも、さきほどの桂花の歯切れの悪さにもようやく得心がいった。
「普段はお茶目な人形なのですが」
「ふぅむ…」
 ふたりが声を潜めて話し出してから、カイシャンは少し下がっていた。
 そのカイシャンに、人形が不思議そうに話しかけた。
『…オマエ、確カ つんつん ノ 相方 ダロ? ナンデ チッチャク ナッタンダ?』
 …は?とカイシャンが聞き返そうとした瞬間、
「ああっ…!!」
 桂花が盛大にうめき声をあげてその場にうずくまった。全力でデンゴン君の口を封じながら。
「どうした、桂花!」
「桂花殿!」
 フビライや周りに控えていた者たちの声があちこちであがる。
「桂花っ、まだ具合が悪かったのか!? 陛下っ…!」
「うむ。ひとりで大丈夫か?」
「はい!」
 カイシャンは、すぐに陛下に退出の許しを得、桂花を抱き起こしてその場をあとにした。
 
 
「…ごめん。俺がその人形を陛下に見せに行くって言ったから…。だから、おまえまだ具合よくなかったのに…」
 桂花を支えてゆっくり歩きながら、カイシャンは桂花に謝った。
「吾は、いつでも自分の意志で動きます。あなたのせいじゃありませんよ」
「…桂花」
『・・・ク、苦シイッテバ、つんつん…!』
「…あ、ああ。すみません」
 桂花は、塞ぎっぱなしだった人形の口から自分の手を外した。
『モウ、死ヌカト 思ッタジャナイカ!』
 
(死ぬんですか? というか、息してるんですか?)
 
と心で疑問がスパークしたが、桂花はそこらへんを一切スルーした。それは桂花が長く生きる中で自然と身につけた処世術のひとつだった。
 
「おまえ、呼吸してるのか!?」
 驚いたようにカイシャンが叫ぶ。
『生キテンダカラ、当然ダロ!』
「おまえ、生きてるのか!?」
『我ガ 死ンデルヨウニ 見エンノカ!』
 
 ……たとえ柢王の転生とはいえ、この目の前の子供はまだこの世に生を受けてたった10年…もうすぐ11年にしかならないのだ。
 スルー、などという高級テクがあろうはずもない。
 だが、この馴れた感じのボケとツッコミはなんなんだ一体…。
 桂花は、真剣に頭痛を覚えた。
「桂花、桂花っ! この人形、すごく可愛いなっ!」
『…ナンダ、オマエ、イイ奴ジャナイカ。』
 
「…………カイシャン様。大変申し訳ございませんが。」
「なんだ?」
「この人形のことはお忘れになって下さい」
「…なんでだ?」
「この人形は…」
 
 そのとき、ふたりを閃光が包んだ。
 
 
 
『あしゅれい ガ 来タカラ 行ク。つんつん、マタナ』
「…ったく、なんでこんなとこ待ち合わせ場所にしたんだよ」
『ダッテ、つんつん ト 相方 、人間界デ ドウシテルカナッテ思ッテ。あうすれーぜ、教エテクレナインダモン。…デモ、一緒デ ヨカッタ。』
「…全く、おまえは可愛い奴だよな」
 
 
 
 まばゆい光りの中で、桂花の目に、赤い光が銀の光を愛しそうに腕に抱いて空に上っていくのが見えた。
 
「…い、今の、なんだったんだ、いったい」
 カイシャンの問いに、桂花もしばし言葉が見つからない。
「でも…空耳かもしれないけど、俺、なにか聴こえた気がする」
「え…?」
「桂花は聴こえなかったか?」
「…なんて?」
「たぶん、あの人形の声だと思うんだけど……安心した、って」
(安心した……?)
 それは…いったいどういうことなのか…。
 桂花には、言葉の意味がつかめない。
 ましてや人形の心など……。
 
 それでも桂花は、なぜか、とても泣きたい気持ちに襲われていた。
 
 
(終)
 
 
 


No.108 (2007/05/09 22:33) title:統一地方選挙(6)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)


 
アー 「いったいどこ行ったんだ、アイツはっっ!」
江青 「申し訳ございません」
アー 「…なんでおまえが謝るんだっ。おまえのせいじゃないだろっ」
江青 「はぁ…それはそうなのですが…」
 
 つい謝ってしまう、人のいい江青だった。
 
 ここは天主塔内の一室で、現在はティアの選挙事務所。
 今こそ一致団結して、選挙へGO!直前だというのに、肝心のティアが
いつも決まった時間になると消えるのだ。
 
アー 「執務室にもいない、誰も知らないって、いったいどうなってんだ…っ!?」
 
不審がるアシュレイに、江青はただおろおろとするばかり。
 
江青 (本当に、守天様はいつもどこにおいでなのか…。
     いや、今はそれよりも、守天様が戻られる前に、
     まずアシュレイ様に落ち着いていただかなくては……!)
 
 でないと、最悪、守天が消し炭にされてしまうやも……
(守天には最強の結界があるし、第一アシュレイがティアに向かって火技を繰り出すはずがないのだが)
……と、江青の血圧がはあがるばかりだ。
 
『あしゅれい、遊ボー♪』
 
江青 「でででででで……っっ」
 
「出たーーーーーーーーー!!」
なのか、
「デンゴン君…!?」
なのか、
今回も突然現れたデンゴン君に、どっちの「で」か推理不能な言葉を発し、
とうとう江青は意識を手放し、その場にくず折れそうになった。
 
アウ 「危ない…大丈夫か、江青殿」
 
 突然現れたアウスレーゼ、江青を抱き寄せ、捕獲。
 
江青 「あ…アウスレーゼ様。も、申し訳ございませんっ…」
アウ 「気にするな。少し休むがよい。そこの長椅子まで我が運んでやろう」
江青 「…え? ええっっ!? あの、ああああ(←アウスレーゼ様?)」
 
 そうして、青くなったり赤くなったり大忙しな江青、お姫様抱っこで長椅子へ。
 
アー 「……江青だって、ぶっ倒れるまで選挙の…いやティアのために
    働いてんのに…アイツと来たらっ…!」
 
 その頃、暉蚩城から戻った守天は、疲れのため今は寝室でやすんでいた。
 アウスレーゼとデンゴン君は、この事務所部屋に来る前、それを見届けてやってきたのだ。
 
アウ 「アシュレイ。そなたが心配なのも分かるが、」
 
 アウスレーゼが守天のフォローをしようとした、そのとき。
 
『ぷらとにっく ッテ 誰カヲ運ブコト ナノカ?』
 
アー 「は!? なんだ、そのプラ…と、ニックって」
『我モ 微妙ニ理解不能。今度、てぃあらんでぃあノ 秘書ノ つんつん ニデモ 聞イテミル』
アー 「あー!? なんであんな奴に!!」
『ダッテ、つんつん、あしゅれい ヨリ オ年寄リポイ。キット ソノ分 イロイロ 物知リ』
アー 「…まぁ、そういう理由なら仕方ねぇな」
江青 「あ、あの…。ツンツン、というのは、もしや……」

 ふらつく身体をアウスレーゼに支えられながら、江青がおそるおそる尋ねる。
 
アー 「アイツだろ」
『ソウソウ、アイツ』
江青 「…ですか。やはり…」
 
 「アイツ」だけで江青にも分かったのは、天主塔に来ていろいろと鍛えられたからだ。
 
(桂花殿は冷静な人(?)だし、私などが心配することではないのかもしれないが…)
 
 この後の桂花とアシュレイ(with デンゴン君)のバトルを思うと、やはり今のうちに
失神しといたほうがよかったのかも…と思う江青だった。
 そして、そんな物思いに沈む江青の肩を抱き、満足げに見守るアウスレーゼ。
 江青は、まだ気づいていない。
 誰よりも、いま最もデンジャラス・ゾーンへの入り口に立っているのは、自分だと。
 
 
↑その頃のアシュレイとデンゴン君。
 
アー 「でも、プラとニックって、いったいどこの誰なんだ」
『誰? 人ナノカ?』
アー 「違うのか? んじゃ、なんだ、いったい。ますますわかんねぇ」
『デモ、ソウイエバ、あうすれーぜハ 「ぷらとにっくシタイ」トカ言ッテタ』
アー 「プラとニックとしたいってーーーー!? なんか、あいつが言うと、
    すごいやらしい感じ……3人でってことか? 考えたくねーっ」
『ナニ、ナニ? あしゅれい、我ニモ 教エテ』
アー 「…いや、俺の口からは言えねぇ。悪い。アイツに聞いてくれ」
『エエーーーーーッッ。ソンナ殺生ナーッ! ダッタラ あしゅれい、つんつんノトコロニ
 連レテッテ! あしゅれい、連レテッテ!』
アー 「ほんと、おまえ可愛いぜっ。(←デンゴン君を抱きっ!)
     ……あいつはここで待ってりゃ、そのうち来るって。な!」
 
 おねだりデンゴン君にメロメロな、アシュレイだった。
 
 
 


No.107 (2007/05/09 22:28) title:統一地方選挙(5)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)


 
北領・暉蚩城。
ネフロニカの選挙事務所。
 
山凍 「なに!? あちらは天主塔の中に事務所を…。いや、わざわざ 
     すまぬ。おまえたちにも苦労をかける」
珀黄 「いいえ。私も江青も、誓って主君は終生山凍様おひとりと心に決めて
     おります。ただ、このたびばかりは守天様のお力になりたいのです」
山凍 「ああ、わかっている。守天様を頼むぞ」
珀黄 「はっ…! では」
ネフィー「もう帰るんだ〜?」
珀黄 「はっ…、いやあの、その…」
ネフィー「相変わらず景気の悪い顔してるね、珀黄。私には挨拶なしかい」
珀黄 「こっ、こちらの守天様……お久しぶりというか……いや、あの…」
 
(さ、山凍様っ、こちらの守天様はなんとお呼びすれば…っ)
 
こそこそ珀黄が小声で山凍にお伺いをたてていると、
 
ネフィー「名前で呼んでいいよ。知らない仲じゃないんだしさ〜。ま、すぐに
     また私がこの天界で唯一無二の守護主天になるけどね」
 
と言ったかと思えば、珀黄相手になにやら無駄にチラリズム。
 
山凍 「ネフィー様。…珀黄を出血多量で葬り去るおつもりですか」
ネフィー「ええ〜〜っ!? ……珀黄、おまえが軟弱にも鼻血なんか垂らすから、
     私がいらぬ嫌疑をかけられてるじゃないか。責任とって、
     奥の部屋でちょっと」
山凍 「ちょっと? なにするおつもりですか、珀黄に、なにさせるおつもりですかっ!?」
珀黄 「もも、申し訳ございません!! こ、これにてっ…………」
 
目配せで退出を促され、珀黄、鼻血にまみれて脱兎のごとく退去。
 
ネフィー「あーあ。つまんないの〜」
山凍 「仕事はいくらでもあります。それに告示後は息つく間もないですよ」
ネフィー「ケチなティアランディアは、告示前はお昼の数刻しか譲ってくれないしぃ」
山凍 「守天様には執務がおありです。たった数刻といえど、大変な調整を
     なされているはず。それをご承知の上でおっしゃっておられるの
     ですから、あなたは…」
ネフィー「ふふん。タチが悪いって?」
山凍 「とにかく、その数刻を有効的に利用して準備を…」
ネフィー「だ・か・ら、友好的に使おうって、さっきから言ってるのにおまえときたら…」
 
ネフィー様、ソファーに大胆悩ましポーズでふんぞりかえって山凍を手招き。
 
山凍 「そのお身体はいまの守天様のものですから…。滅多なことは
     なりません。……それに、本気ではないのでしょう?」
ネフィー「あーあ! つまんないの!!」
 
(つまるとかつまんないとかではなく…。)
 
 大きく息をひとつ吐き、山凍はネフロニカを見た。
 
(ネフィー様は、どうしてまた守天選などに立候補されたのか……)
(どうしてまた、自ら修羅の道へと行くおつもりなのか……)
 
(…いや。ふざけているようでも、やはりネフィー様は根っからの守護主天。
  天界をそして人間を愛しておられるのだ)
 
山凍流ハッピー解釈では、ネフロニカこそ愛の権化、愛の伝道師。
「この方のためなら死ねる…!」と心新たに誓うのだった。(天界版「愛○誠」)
 
 
『オメデタイ奴ダナ。山凍ッテ』
 
場も空気も読まないデンゴン君だが、人の機微は読めるらしい。
 
『腹芸ノ ヒトツモ 覚エナイトナ〜』
 
アウ 「そういうところがまた、あの子の気に入るところなのかもな」
『ソレガ 恋?』
アウ 「………ああ、そろそろタイムリミットだ」
『しかと カ!? オイ』
 
 勤勉(?)なのは結構だが、またアシュレイからガラの悪い言葉を習得したなデンゴン君…と思いながら、天主塔より遠見鏡で守天の身体を見守っていた(見張っていた)アウスレーゼ(with デンゴン君)は、その日の交代時間を告げるべく、遠見鏡を通して暉蚩城のネフロニカに「終了」のサインを送った。
 
---------------------------
 
守天(ネフィー)が帰ったあとの暉蚩城。
 
山凍 「結局、できているものはポスターのみか…………」
 
告示まであと2日。
果たして、間に合うのだろうか………。
 
と、はじめての選挙に不安が隠せない、雛だった。
(というか、そのポスターに不安があるのかも) 
 
 
 
 


No.106 (2007/05/09 22:26) title:統一地方選挙(4)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)

 
アー 「北が新人についただとーっっ!?」
柢王 「投票日にどっちに入れようがかまやしねぇが、四天王が選挙事務所
    までもってやるなんて、とち狂ったと言われても仕方ねぇな」
アー 「くっそー…っっ!!」
 
ティア「心配してくれるのはありがたいけど、山凍殿にもいろいろと理由が
    あるんだよ」
アー 「でもあの山凍が、おまえを蹴って他の奴につくなんてっ…!」
桂花 「恋は盲目、とか聞きましたが」
アー 「…なにボケたこと言ってんだ、おまえんとこのエロ魔族は」
 
 桂花を一瞥だにせずアシュレイが柢王に言ったかと思えば、
 
桂花 「あちらの方、噂ではとても美しい方と聞きました。山凍殿にも 遅い
    春がきたのかもしれませんね。野生の小猿にもくるくらいですから」
 
 臨戦態勢に入ったふたりをそれぞれの相方が全力で制御。
 
柢王 「まあまあ。落ち着けって。なっ? …んで、アシュレイ、桂花はな
    江青から聞いたんだと。なんでも、新人候補の選挙事務所等に
    ついては選管も了承済みだとかで」
アー 「江青…まさかあいつらまで向こうにつく気じゃ…っ」
柢王 「そりゃ、珀黄も江青ももともと北のもんだし、なんつったって
    あいつら山凍ラブだかんなー。仕方ねんじゃね?」
アー 「…ーーーーーっっっ」
ティア「アシュレイ、大丈夫だから。珀黄も江青も、私の手伝いをして
    くれるって言ってくれたよ」
アー 「おまえの選挙事務所はどこなんだっ、もしまだなら俺んとこで…っ」
柢王 「おまえんとこって、南の王子宮かぁ? 駄目駄目」
アー 「なんでだよっ、つか、おまえには関係ないっ」
桂花 「南、というか炎王は静観するおつもりでしょう。申し訳ありませんが、
    あの方にとって、守天が誰かということはさほど問題ではないで
    しょうから」
柢王 「だよな。たぶん、つか、うちもそうだ。もちろん西もな」
アー 「…出てけっ、てめーらふたりとも出てけっっ!!」
ティア「アシュレイ、待って、ね? 柢王も桂花も、悪気で言ってるんじゃ
    ないんだ」
柢王 「そうそう…っと、てめっ、んなとこでそんなもん出すなっ振り回すなっっ!」
桂花 「バカはすぐに手が出る足が出る」
柢王 「おまえもやめろって…」
桂花 「フン!!」
 
 トホホ顔な柢王を哀れに思ったのか、
 
『仕方ナイ。特別ニ てぃあらんでぃあ ノ 事務所ヲ ココ天主塔ニ 開クコトヲ許可』
 
ティア「デンゴン君…」
アー 「やっぱり頼りになるな、おまえはっ!」
柢王 「いやでも…それこそマズイんじゃ…」
桂花 「選管との癒着を疑われますよ」
 
アウ 「マズイ…確かにマズイ…」
 
柢王 「…ティア、誰だこの人」
 
 江青と違い、突然の闖入者に驚くものはいない。
 
ティア「ああ…えーと…柢王と桂花は初めてだったね。こちらは選管の
    アウスレーゼ様。ほら、額に選管マークが入ってる…」
桂花 「……なるほど」
柢王 「選管マーク……ね。了解」
 
 なんとなく察しつつも、人形のデンゴン君と違い、生身の、自分達と
そう変わらないように見えるアウスレーゼを最上界の神だと紹介することこそ、
マズイのだろうということを、柢王も桂花もわかっていた。
 
アウ 「ふ…。そなたのまわりは物分かりがよいの。……ところで、そなたの
    事務所だが。選管と同じ場所ということは確かにまずい。だが、
    選挙の間、『守天』が天主塔に全く存在しないというのも困る。
    なので、市中の者が出入りしにくい(というかほとんどできない)と
    いう点で候補者にとっては不利だが、特例として天主塔の一室を
    事務所に使うことを許可する」
『ソノホウガ楽シイシ。ナ? あうすれーぜ』
ティア「……………」
桂花 「そういえば、さきほど話していたとき、江青殿が急に頬染めて
    言葉に詰まったので、どうしようかと思いました」
アー 「江青が!? やっぱりつらいんだな、山凍と敵味方んなって
    戦うのが……」
 
 なのにこっちについてくれるなんて…。
(なんていい奴なんだ!!)
 と心でガッツポーズなアシュレイが江青を絶賛してる頃。
 
柢王 「なんの話だったんだ、桂花」
桂花 「暉蚩城が事務所になることと、自分達は現守天サイドにつくこと、
    そして、執務室で選管の方にお会いしたことを話したとき、急に…」
アウ 「ほぉ…」
 
 嬉し楽しそうなアウスレーゼに、これまた場も空気も読めて察しもよく
物分りもいいティアと柢王と桂花は、複雑な表情を見せていた。
 
『天界ッテ オモシロイカモ!』
 
 空気も場も読まない、というか読む必要のないデンゴン君の発言に、水でもかけたら
壊れるかな…、と一瞬守護主天にあるまじき殺意が芽生えたティアだった。
 
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↑その直後。
 
アウ 「こ、こらっ。…す、すまぬの、守天殿。ははははは」
『慌テルあうすれーぜモ、カナリ つぼ』
 
アー 「あっ、そうかも! 滅多に見れねぇよなっ!(笑)」
 
 と仲良く笑いあう(?)ふたり。
 殺伐(?)とした選挙戦で、デンゴン君とアシュレイの真の友情が芽生えた瞬間だった。
 
 
 


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