投稿(妄想)小説の部屋

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No.241 (2001/05/04 16:35) 投稿者:ナホ

ちび慎吾君水族館へ行く

 とある、日曜日の昼下がり。
 お休みの貴奨さんとたまたま遊びに来ていた高槻さん・正道君に連れられて今日は水族館にやってきた慎吾君の姿がありました。

 最近、貴奨さんの仕事が忙しくてあまり一緒に過ごす時間がなかったので「あっ貴奨っ!! 次はあれ!!」と貴奨お兄ちゃんの手を嬉しそうにグイグイと引っ張り、慎吾君はいつも以上に甘えん坊さんになっています。
 綺麗なお魚や普段目にする事などない珍しい海の生き物達を見れてとっても楽しい時間を過ごしているけど慎吾君は少しだけ元気がありませんでした。
 ………なぜなら今日は健さんと江端さんが一緒ではなかったからです。
 でもせっかく久しぶりにいられる貴奨さんや大好きな高槻さん達には「自分のワガママ」を気づかれないようにしなきゃ、と顔には出さないようにしていました。
 そんな中、館内放送で『ペンギンのお散歩』が始まると聞き高槻さんに「行ってみようか?」と提案されて皆でその場所に移動しました。

 1列に並んで飼育係さんの後をテケテケと一生懸命ついて歩くペンギンを見て「うわ〜っすごくかわいいね♪」と喜ぶ姿を見て『お前の方がもっと…』といつものポーカーフェイスの下で内心突っ込む(?)貴奨さん。
 そして実はさっきから慎吾君が少し元気がない事に気づいていた高槻さんはやっと心からの笑顔が見れて一安心し「そうだね、かわいいね」と慎吾君の目線にあわせるようにしゃがんでにっこり優しく微笑みました。
「うんっ!!」と、とても嬉しそうに笑いかけた慎吾君でしたが無意識の内に「健さんと江端さんにも見せたかったなぁ…」とぽつり呟いてしまいました。
 それを聞いた正道君は「ならまた来ればいいじゃん」とあっさり言いますが「慎吾君はいま見せたかったんだよね?」とぎゅっと優しく高槻さんが抱きしめます。
(そして悪気がなかったとはいえ正道君はもちろん高槻さんに釘をきっちりさされました)

「…仕方がないだろう? 慎吾。今日は急だったし、向井君達にも色々都合というものがあるんだから」と、慎吾君の目の前にかがんで宥めるように頭をポンポン優しく叩く貴奨さんでしたが大きな目に涙をためているのを見て、少しだけ良心が痛みました。
 …実は水族館に出かける前に「健さん達は?」と慎吾君に聞かれ「今日は予定があるそうだ」とウソをついていたからです。
 そんな事とは知らずに高槻さんに涙を拭いてもらった慎吾君は「…ごめんね、貴奨。せっかく連れてきてもらってるのに。でも、俺本当に今日は楽しいよ!! だってこの頃仕事が忙しくって貴奨の顔見れなかったし、それに高槻さん達も一緒で!!」
 慎吾君は頭にあった手をひしっと握り一生懸命貴奨さん達に謝ります。
「大丈夫だよ慎吾君。ちゃんと芹沢も君が嬉しいってわかってるから。ね? 芹沢」
「あぁ。だからもう泣くな慎吾」
「…うん、ありがとう貴奨」
 ーーー…と、そこへどこからともなくペンギンの人形が一匹やって来ました。

 そのペンギンは自分の持っていた風船を「どうぞ」という風に慎吾君に差し出しました。
「え、いいの? …ありがとうペンギンさん」と戸惑いながらも嬉しそうに受け取った慎吾君でしたが次の瞬間、「なーに泣いてンだよシン」と言う声にびっくりしてせっかく貰った風船を飛ばしてしまいました。
 なんと着ぐるみの上だけを脱いだ中にはねじり鉢巻にタンクトップ姿で「あっちー」と少し不機嫌顔の汗だくになった健さんでした。
 驚きながらも慎吾君は着ぐるみお腹の部分をぎゅっと掴んで嬉しそうに健さんを見上げます。
「あっ、風船…。ごめんなさい、せっかく貰ったのに俺…」と風船を飛ばした事を思い出しました。
 しゅんとなった慎吾君にあの笑うと目の消えちゃう笑顔で頭をぐりぐりと撫で回しまし「ンな事は気にすんな」と健さんに言われホッと小さな胸をなで下ろしました。
 その一方ではペンギンの健さんを見て「――…なんかイメージが」とぼう然の正道君にクスクスと可笑しそうに笑いを必死で堪えている高槻さん。
 そして貴奨さんは着ぐるみで登場した健さんに少し動揺していましたが「偶然だな向井くん」と相変わらずのポーカーフェイスで対応します。
「今日は仕事でそんな格好なのかい?」
「…まぁそんなトコですかね(ンな訳ねぇーだろ!!)」
 声は普通なのにただならぬ雰囲気の2人に挟まれ、オロオロしていた慎吾君の目にしたのは…。

 …いつものようにどこまでも睨み合いが続きそうな2人は「もうその辺でやめにしないか?」の声にはっと我に返り、間にいたはずの慎吾君がいない事にやっと気づきました。
「シンは!?」「慎吾は!?」と焦って声のした方を振り返るとそこにいたのは江端さんでした。
「…慎吾なら高槻さんらに連れられてとっくにイルカショーを見に行ったぞ。
 長くなりそうだから先に行くように言っておいた」
「「なにーーーっ!?」」

 ―――またしても、おいしいところを高槻さんに奪われた貴奨さんと健さんが
「「次こそはっ!!」」と2人してメラメラ闘志を燃やしているなんて事は知らずにちび慎吾君にとっては皆と過ごせてとても楽しい1日だったみたいです。


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