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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.71 (2007/01/16 15:59) title:飛火
Name:碧玉 (210-194-218-71.rev.home.ne.jp)

ああ、会いたい会いたい会いたい・・・・アシュレイに会いた―――いっ。
 正に禁断症状。
 限界っ、限界だあっ〜〜〜。
 ティアは黒ずんだ机に突っ伏した。机の汚れはアシュレイ、アシュレイと何百、何千と書かれたインク染みだったりする。
 アシュレイは寂しくないのだろうか?もしかして愛されてない?
 ズ―――――ン
 繰り返し思い出すのは数ヶ月前、アシュレイが魔風窟のつる草の作用で子供かえりした時のこと。
 ああ、あの時はよかった。
 腕におさまるほど小さくて、いや大きさなんて関係ない。あの時のアシュレイは警戒心などまったくなく私の腕に抱かれていたのだから。
 その時の記憶が残らなかったのは有難く・・・いや憶えがないと知ってれば、もっとあーして、こーして・・・。
 大後悔っ。
 今だったら・・・今だったら・・・今・・・今なら。
 小さく!!
『小さく―――!!!ならぬなら、ならせてみよう、ホトトギス!!』
 こっ、これだ!!
 ティアはにんまり笑うと素晴らしきスピードで柢王に使い羽を放った。 

「ホラ、頼まれたブツだ」
 柢王はティアの前にドサッと麻袋を置いた。
「ンな面倒くせぇことしなくてもよぉ・・・相変わらずの変態ぶりだな、etc・・・」
 柢王の言動など今のティアには右から左。
「おーおぅ、こりゃ重症だな」
 心此処にあらず、遙か遠くに意識をとばしているティアに柢王は肩をすくめた。
「ま、あとは勝手にやってくれ。特別サービス、天主塔にくるようアシュレイに伝えといてやったから、礼は上乗せで頼むな、さて結界とくぞ」
 柢王が麻袋の結界を解くと同時にアシュレイがバルコニーから姿をあらわした。
 焦って隠すべく袋に飛びついたティア。その瞬間を狙っていたかのよう中から伸びた蔓が彼の身体を包みこんだ。
「ティア!!」
 アシュレイが炎を投げる。
 ボオ―――――ッ―――――
 凄まじき火力に蔓は瞬時、炭化した。
「ティアっ!!―――――!!」
 駆け寄ったアシュレイとティアが見たもの・・・それは・・・。
 天使―――の如く、子供にかえったティアの姿だった。

「参ったなぁ〜〜〜〜〜」
 腕の中を覗く。
 ハァ―――――ッ―――――
 小さなティアがにこにこアシュレイに笑いかける。
 柢王め!!
 数日で戻るってのは本当だろーなっ。
 その柢王は冷ややかに怒る片腕の協力を仰ぎ、変化し守天代理を務めている。
 ティアの安全を考えると天主塔にいるのが一番なのだが、そうもいかずアシュレイは自国の王子宮に進路をとった。
 顔にかかった黒髪をはらってやる。
 黒髪、正体を隠すためとられた原始的処置。原始的・・・つまり御印には絆創膏がはられ、髪は桂花によって染めあげられただけなのだが。
「早く戻れよな」
 そうこうしているうち王子宮が見え、アシュレイは一旦足を止めた。
 バレなきゃいーけど・・・考えても仕方ねぇか、バレたらバレただ。
 開き直りと、やけっぱちで再度足を進めた。

 世継ぎの王子の子連れ帰国は宮全体を騒然とさせた。
 だが当人たちは絵本を開いてみたり、絵を描いたりと至って穏やかに過ごしていた・・・それまでは・・・。

―――――ガタン―――――
「わっ―――父上っ!!」
 ノックも断りも前触れすらなく突如現れたのは父、炎王。
 炎王は部屋に入るなりアシュレイに構わずティアを抱き上げた。
 ティアは手足を硬直させ、ちんまり抱かれている。
「なにすんだよっ」
 我に帰ったアシュレイが腕にかじりつく。
「綺麗な子だが強さが感じられぬ。――む、守護主天さまの気を感じるが・・・」
「ティ、守天さまに守護術を分けていただいてんだ」
 ティアの腕をめくり刻印入りの腕輪をみせる。
「おお、そうかそうか、守天様からは既に祝いの品が・・・だがアシュレイ、こういうことは父である我に先に報告するのが筋というものだぞ。例え身分違いだとしても隠すのはよくない」
 なにを報告しろってんだ!!内心がなりつつアシュレイはプイと横を向いた。
「コラッ、父親にもなってその態度はなんだ」
「ちっ―――ちっち父親―――っ!!ち、違っ、ティアは俺の子なんかじゃねぇーっ」
「ティア?」
「ティ・・・じゃなくて『ちあー』だ」
 まったくもって苦しい嘘。その嘘を隠すべくアシュレイは続ける。
「俺は知らねぇっ、柢王の奴が―――」
「なに、柢王殿の・・・そうか・・・そうか柢王殿の・・・」
 炎王は子供をじっくり見分すると「そうか」と頷きティアを放した。
「柢王殿とは二つ違い、おまえもおめおめ負けておれんぞ」
 もはや興味なしと、だが心なし肩を落とし炎王は退出していった。
「なんか分かんねーけど、助かった」
 アシュレイは額に浮いた汗をこぶしで拭った。

―――――ガタン―――――
 一難去って、また一難。
 又しても扉が開かれた。もちろん今度もノック、断り、前触れもなく。
 現れたのは姉、グラインダーズ。
 先ほどと同じ展開を予測しアシュレイはガックリ肩を落とした。

 ああ、会いたい会いたい会いたい・・・・アシュレイに会いた―――いっ。
 ティアは更に黒ずむ机に突っ伏した。
 あれから数日、元に戻ったティアの側にはアシュレイはいない。
 聞いた話では、この数日、寝食シャワーはもちろんのこと、正に四六時中アシュレイがつきそっていたそうで・・・だが、もちろんティアにその記憶はない。
「懲りない奴だな」
「まったく・・・。懲りない方ですね」
 替え玉とその片腕はお役御免と嘆くティアを残しさっさと退却した。

「ハァーッ、終わった終わった。花街の湯殿貸切ってのんびりしようぜ」
「その前に蒼龍王さまと皇后さまから呼び出しがかかってます」
「親父と御袋から?」
「それから、詰所に届けられた荷物、何とかしてくださいね」
「荷物だぁ?」
「あなたの息子宛だそうです」
「息子っ!!」
「隠し子宛です」
「―――!!」
「吾は先に帰宅していたほうがよさそうですね」
「ま、待てっ、待て、桂花―――!!」
 美貌の片腕は既に窓の外。
 扉の中からは今だ苦悶の声が・・・廊下にたたずみ柢王は、二度と軽率に手を貸すものかと心に誓った。
 


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