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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.7 (2006/09/05 21:10) title:サマー・リーディング(3) 〜彼が邪道を読んだなら〜
Name:モリヤマ (i125-201-153-94.s02.a018.ap.plala.or.jp)

「リバだって受けだって、卓也とティアが全く同じだと思ってるわけじゃないなら、別に気にしなくていいじゃないか。ちょっと似たとこがあるだけなんだろ?」
「それでも、なんかっ…なんかっ…リバ…!? 受け!? 俺の卓也がっっ…!!」
「落ち着け。俺はここだ。リバだか受けだかの疑惑の人物は本の中の奴だろが。一緒にしてどうする」
「う、うっ…卓也…俺、助けてあげるからね。絶対、リバにも受けにもさせないよぉぉぉ」
「…一樹、こいつになにか飲ませたか?」
「さっき、事務所に顔出したときに、喉渇いた〜!とか言って、俺のグラス勝手に飲んでたかなぁ…」
「……酒か。桔梗、おまえ少し休んでろ」

 そう言うと、卓也さんはバーの壁の向こうにある臨時の控え室に小沼を連れて入って行く。
 会話は聞こえても、俺には専門用語(?)の知識がなくて内容がいまひとつ理解できなかったんだけど、なんとなく落ち着いてきた…の、かな?
 それにしても小沼、妙にご機嫌だったのは、ちょっとお酒入ってたのか?
 そんなにお酒臭くなかったし、あんまり酔ってるって感じじゃなかったから、大丈夫だとは思うけど…。
 ていうか、心配なのは精神面のほう。
 なんでか凄いショック受けてたみたいだし。
「桔梗なら大丈夫だよ。卓也がついてるからね」
 そう言って俺達のほうを見た一樹さんの顔には、いたずら好きの子供みたいな笑みが浮かんでいた。
 そういえば、元はと言えば一樹さんの発言が原因なような…。
「そっちも大丈夫みたいだね」
 後ろから抱き込むように腕を回し俺の肩に顎を乗せてる二葉を見て「でも…」と一樹さんは声を潜めた。
「わが弟ながら、子泣き爺を彷彿とさせるのが悲しいとこだね」
「るせぇっ!!」
 二葉が片手で「シッシッ!!」とやってるのが目の端に映る。
「……忍。今は可愛くないけど、小さい頃の二葉はそれはもう可愛くてね。そんな二葉の門外不出のとってもカワイイ写真があるんだけど、見たい?」
「え?」
「そりゃもう可愛くて、いろんなとこが可愛くて、二葉が見たら卒倒しちゃうかもしれないから、忍にだけ見せてあげたいな」
「二葉のいろんなとこがカワイイ写真…」
 どんなんだろう…と思った途端、二葉が俺の前に出てきて一樹さんとの間に入る。
「…一樹。その写真、焼却するか、俺に渡せ」
「可愛い弟のカワイイ証拠写真を? やだね」
「一樹……っ!」
 艶やかな微笑ですげなく断る一樹さんと比べて、二葉の声には必死さがにじみ出ている。
 俺としては、二葉の味方をしなくちゃいけないんだろうけど…。
「わかったわかった、忍には見せないよ」
 ううっ……残念。
「ほんとだなっ!?」
「俺がおまえに嘘ついたことあるか?」
「…嘘三昧じゃねぇか」
「心外だな。兄さん、悲しいよ…。じゃあご期待にお応えして…忍、二葉の写真…」
「わわわわかった!! 信じる!!」
「最初からそう言えばいいんだよ。…じゃあ忍、またの機会に」
 二葉の後ろに強制的に匿われてるみたいな俺に、そっとささやき声が届く。
「あってたまるか!」
 …二葉にも届いていたようだ。
 て言うか、わざと聞こえるように言ったんだろうなぁ…。
 ても、そういうとこが一樹さんなんだよな。
 楽しそうに笑い声をあげながら、一樹さんはカウンターの中に入っていった。
 そんな一樹さんを牽制して二葉はひとりグルグル唸ってる。
 時計を見ると、開店まで1時間ほどだった。
 小沼も大丈夫みたいだし、
「二葉、買い物もあるし、そろそろ…」
 俺に全部言わせず、すぐに二葉はさっきまで新聞読んでたテーブル席まで戻ると、新聞を片付けグラスと瓶をカウンターまで運んで、「俺達帰っからー」と控え室にも聞こえるような大声で言った。
 俺も慌てて「それじゃまた」と会釈して、『ロー・パー』をあとにした。

「あ、明日のスケジュール…!」
 外に出て、少し歩いたところで気がついた。
 それを伝えに行ったはずなのに、肝心なこと忘れて帰るなんて、俺って……。
 でもそんなに長居してたわけじゃないのに、なんだか妙に疲れた気がする。
 大騒ぎだったもんなぁ…。
 それにさっきの状態じゃ、小沼に伝えてもどうせ右から左に抜けてただろうし。
 卓也さんに一応メモは渡してあるから、あとで電話入れとけばいいよね。
 その頃には、小沼も落ち着いてるといいんだけど……。
 …そういえば、ノベルズでのティアって、どうなっちゃうのかな。
 小沼のさっきの様子思い出したら、なんだかすごく気になってきちゃったよ。
 今までのとこだと柢王と桂花のほうが…なんだかつらそうなんだけど……。

 邪道って……。
 読み始めたときはなんとなく一樹さんがティア系で、二葉は柢王系かなって思ってて。
 だから、二葉に好きキャラを訊かれて『柢王』って言ったんだけど、本から離れて思い返してみたら、柢王よりティアと二葉がダブったんだよね。
 でも、ただそれだけのことなんだ。
 小沼に『卓也と似てるキャラがいるから、探してみて』って言われてたから、意識しただけで。似てるから、だからどうだってことじゃなくて。
 ただ、俺が二葉のことを、いつもと違った面から見て考えるきっかけになっただけで…。
 それだけなんだよ、二葉。
 ほんの少し二葉と重なるところを見つけただけ。
 それに、どんなに重なっても、二葉と似てても、誰も二葉の代わりになんてならないし、
(二葉より好きになんかならないよ…)
 そっと二葉の背中に心でつぶやいた。
「っと、ぅわっ!!」
 いきなり前を歩いてたはずの二葉にぶつかって、俺は急停止を余儀なくされた。
「胡瓜って、まだ冷蔵庫にあったよな?」
「……は!?」
 突然立ち止まって振り向いたかと思ったら……きゅう…り?
「トマトと卵はあったよな…うん…あと…モヤシに鶏肉…と……」
「…………モヤシ……とりにく…って」
 ……邪道のキャラの中で、そんなこと考えながら歩く奴なんていないよね。
 ていうか、俺の周りでも二葉しかいないし。

 俺の返事を待たず、また前を向いて歩き出した自問自答な二葉に、さっき飲み込んだ笑いが再びこみ上げてきたのを、俺は優しい気持ちで感じていた。

終。

◎余談ですが・・・◎

 ちなみに、「邪道」で一番好きなシーンはどこですか?

  桔梗 「一番って、それ、ひとつだけってこと? 無理無理無理無理っ! 選べるわけないよーーっ!!」
  二葉 「そうだな、俺はアシュレイが…」
  忍   「ふぅ〜ん?」
  二葉 「…やっ、あの…ああアシュレイが…アシュレイが…」
  一樹 「忍は? どこ?」
  忍   「俺は…好きなシーンっていうのが、よくわからなくて」
  一樹 「わからない?」
  忍   「幸せなところも、せつないところも、つらいところも、本を閉じれば全部好きだって思えて…」
  一樹 「…忍らしくていいね。…あ、ところでさっきちょっと思ったんだけど、」
  忍   「はい?」
  一樹 「桔梗の美容と健康にいい闇ジュースって、桂花の作る薬とどっちが凄いと思う?」
  忍   「…小沼のジュースと桂花の薬?」
  一樹 「まあ、卓也が言ってたんだけどね。読んでてつい桔梗が目に浮かんだって」
  忍   「卓也さんが? 桂花で、小沼を……? (桂花で小沼…。小沼と、桂花………? それって…)
       一樹さん…」
  一樹 「うん?」
  忍   「二葉も…」

    二葉がアシュレイを好きなのって……。

    柢王と出会った頃の桂花って、猫のイメージがあって。
    それも、ちっともなつかない猫って感じで……。
    俺が二葉を初めて意識したときのことを思い出した。
    二葉も、なつかない猫ってイメージだったから。
    ……って、二葉には絶対言わないけど。
    でも、そんなふうに俺が柢王やティアや桂花の中に、俺だけの視点や理由で
    二葉を思い出して好きになったように、二葉も……
    二葉もそうだったら…………

 好きシーン探しにひとり悩み悶える桔梗に、いまだ冷や汗中の二葉。
 一樹の言葉に、黙って考え込んでるような忍。(しかもちょっと赤くなってる?)
 『……まあいつものことか』と、これまたいつものごとく、見守る卓也なのでした。


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