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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.302 (2011/10/11 13:16) title:柢王元帥の査察 番外編
Name:真子 (kd113151204178.ppp-bb.dion.ne.jp)

「後朝の別れを覗く趣味はないけど、桂花の安全のためだから」
とティアは遠見鏡で桂花の居場所を探した。見えた、正門にいる。
桂花は門の内側にいる、柢王が門の外で少し浮き上がり(行け)という様に手を振っていた。
桂花は深く一礼をして 建物の中へ入っていく。
それを見届けた柢王は一気に高度を上げ、南の空へ消えていった。
(なんで南?東領とか蒼穹の門ではないの)考えているとドアがノックされた。
「桂花です。」
「入って。」遠見鏡を消すと 椅子に座りなおした。
「柢王は帰ったようだね。もっとゆっくりしていけばいいのに。」
「蒼穹の門で部下と待ち合わせしているとかで、出立つしました。」
それでは桂花は、柢王が向かった先を知らないのか。どこへ行くつもりなのか。ティアの考えなど知る術のない桂花は話を続ける。
「今朝は謁見の申し出が二件あります。その間に吾は昨夜途中にしてしまった仕事を終わらせます。午後には仕立て屋が参ります。」
「わかった。」ティアはすっきりした顔をした秘書を見上げる。
いつもの様に有能な秘書を演じているけれど、顔色もいいし 纏っている空気も艶めかしい。
(後朝の別れを充分に惜しんだらしい)クスリと笑みをうかべた。

順調に午前の予定を終えた頃には、柢王の行き先など頭になかった。
「色々な紫があるね。桂花どれがいい?」
仕立て屋が持ち込んだ色見本を広げながら ティアが聞いた。
「二藍ですか。」
「二藍というんだ。」
「はい よくご存じですね。人間界では 紅と藍の二色で染めることから二藍と呼ばれています。
紅の濃さや藍の加減で この様に赤紫から灰青色まで染めることが可能です。桂花様の肌に似合う色目が探せますかと。」
別に紫にこだわらなくてもいいが、鮮やかすぎない 落ち着いた色目は好きだと桂花も見本を肩にあててみる。
「昨日の生絹は桂花にぴったりだった。あまり飾りとかがないほうが 桂花の姿が際立つ様に思う。」
「そうでございますか、それならば生絹だけで長衣をお作りしましょう。肌の色が透けて見えてさぞおきれいでしょう。」
「そんな服あるんだ。フーン」ティアがつぶやく。
なにを想像しているのだ、こんなスケスケ服 吾に着せようとでも と桂花がねめつける。
「南領で今年 流行しています。下に胸覆いと腰布をつけて、透ける長衣をはおり 幅広のリボンを蝶結びにし止めます。」
厭だ 限りなく嫌だ、と桂花は目で訴える。
「南領は暑いからいいけど ここではどうかな。それよりこの布で浮織りできる。胸と背中 二の腕に 唐草模様を浮き上がらせられる」
桂花が肩にかけていた布地を取り上げる。
「はい 可能です」
「模様は地色より濃いめの紫で それと赤紫で花の模様も入れてみてくれる。」
「それでしたら 花の糸に加工をしまして花の香をつけてはいかがでしょう。東領のご婦人方に人気でして、挨拶なさる親密度によって香が違うというものです。」
なんなんだ、それは。袖に一輪 襟に多くなのか。桂花は頭を抱える。
「いい考えだ。桂花には甘すぎない さわやかな香りがいいな。百合とか鈴蘭とかでお願いしよう。」
それも嫌だ。柢王には見せられない。スケスケより意味ありげなのがいやらしい。絶対に柢王には見せられない。
その時 バルコニーに人影が立った。
「アシュレイ 来てくれたの。」ティアが声を上げた。
「なにやってんだよ。また変態ドレスの相談か。変態守天はよ。」
「違う、ほら園遊会とかあるし士官服以外の礼装の必要だなと思って。君の服も作ろうよ、どんなのにしようか。」
助かった。桂花は胸をなでおろした。ティアの関心がそれた。サルに感謝する日がこようとは思わなかった。
ティアがアシュレイにまとわりついている内にと サクサク片付けてしまった。


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