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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.297 (2011/09/22 01:39) title:柢王元帥の査察V
Name:真子 (kd113151204178.ppp-bb.dion.ne.jp)

桂花は書き上げた報告書に砂をかけて乾かした。
柢王は悪筆ではない、自由すぎるだけ 大小さまざまでまっすぐに書かない。揃えればそれなりにみられる。
「これでよろしいでしょうか」ティアに見せる。
「いいよ。柢王の報告書として通る。桂花は器用だね。柢王の筆跡真似て書類つくって 他にも色々できそう」
クスクス笑うティアに「おまえなー」と柢王はかみつこうとする。
しかしノックの音がそれを遮った。使い女だ。
「桂花様 お夕食のお時間ですが、こちらにご用意しましょうか。それとも食堂になさいますか。」
「今日は柢王がおりますから、食堂に行きます。」
ちらりとティアをみるとニッコと肯いている。
「お腹すいたね。後の仕事は夕食後でいいや。行こう桂花」
「はい」桂花は机の上を手早くかたずけドアを開けた。
ティアの後から出てきた柢王の手が桂花の髪をつかもうとしたがかわされた。
桂花は柢王との間にティアという楯をおいて歩き出した。
(キゲンわるいな)柢王は頭をガシガシ掻く。
食堂はすでに準備ができていた。使い女が椅子を引いた。
「若様は何になさいますか」
「桂花様のお水はこちらです」
「柢王様には御酒を用意しました」
使い女は賑やかに世話を焼き始めた。
柢王は出された料理を平らげながらちらちら桂花を見るが完全に無視された。
天主塔に初めて来たときは「吾が守天様と食事してもいいのですか」と言っていた桂花だがいまでは当たり前の事になったらしい。
使い女は次々に料理をすすめるが、桂花は申し訳程度しか口にしない。
使い女のきれいに整えられた眉がひそめられる 気を取り直したように果物をとりわけ始めた。
「柢王様 若様と桂花様の演奏はご覧になりましたか。」
「ああ 見た。」
「私達も教えていただいていますが桂花様にはかないません。」
もともと洋箏は男性用だから女性にはきついかもね。」
ティアが口をはさんだ。
「手の大きさがちがうから。桂花は指も長いから洋箏にむいているね。」
「若様のデザインされた服もよくお似合いで」
「桂花様が若様に見立てた色合わせもよくお似合いです。」
使い女が楽しそうに盛り上がっていたが、桂花は静かにフォークを置いた。
「もう食べないの。桂花?」
「もう充分です。先に失礼して仕事に戻ります。」
ごちそうさまでしたと使い女に笑顔を向けると退出した。
「私も仕事に戻ろう、柢王はゆっくり飲んでいて。」
使い女の一人がホッとため息をつく。
「またですわね。」「今日は進まれるかと」「ダメでしたね」
意味不明の主語抜き会話をしながら食器をさげに部屋を出た。
変わりに料理長が顔を出した。
「柢王様本日の料理はいかがでしたか?」
「とてもうまかった。満腹だ。」柢王は腹をさすった。
「本当でしょうか。花街とくらべて見劣りするとか。」料理長はなさけなさそうな声を出した。
「うまかったぞ。でもどうしてそんな事きくんだ。」
「実は桂花様が召し上がってくださらないのです。」泣きそうな声だ
「桂花様がいらしてから若様は時間通りにお食事なさいます。仕事も溜まらないと文官も言っています。桂花様のおかげです。
それなのに桂花様お口に合う料理が私には作れません。
リクエストはと聞いてもみなさんと同じでというばかりで」
とうとう泣き出した料理長の肩をたたいて柢王は慰めた。
「心配ないって あいつ量は食べないからさ。」
「いいえ 先日衣装の仮縫いに来た仕立て屋がお痩せになられたといってました。私は修行の旅に出ます。お客様を痩せさせるなんて料理人失格です」
(う〜ん どうするかな)やさしい料理長を困らせてはいけない。
「あのさ あんまり凝った物よりあっさりしたもん出してやってくれるか ソースも醤油とかでさ 肉より魚が好きだし。」
「あっさりしたものですか いままで栄養あるものをとおもいましたが逆効果でしたか。それでしたら」
考えこんでしまった料理長を残して柢王は立ち上がった。
見たいものはみた 桂花が大事にされているのはわかった。
あとは桂花をつかまえよう。


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