投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3
三界学園の名物の1つは、朝の風紀委員長による、風紀チェックである。
クールビューティーな風紀委員長にチェックされたいが為に、わざと違反して、罰則を淡々と言い渡され、泣いたものは数知れず…
「桂花風紀委員長、おはようございます!」
「おはようございます…空也さん、ネクタイをしていませんね。もう何度目ですか?罰として、学校中のトイレそうじを1週間、一人でなさい」
にこりともせず、冷たい口調で淡々と言い渡されて、空也は、地面にガクリと膝をついた。
薄い微笑付きで、罰を言い渡される事を、夢みているのに、今まで、一度も見られたことがないのだ。
桂花が風紀委員になった、最初の頃は、たくさんいた、そんな生徒達も、今は、空也一人となっている。
とぼとぼと教室に向かう空也の背中を見ながら、桂花は、懲りない人ですねと、ため息を押し殺し、腕時計で時間を確認した。
もうすぐ予鈴の鳴る時間だ。
そこへ、焦った様子もなく、のんびりと登校するものがいた。
担任で、体育の先生だ。授業は鬼だが、ざっくばらんで、生徒の人気も高いのだが…
「柢王先生、おはようございます…なぜ、生徒と同じ時間に登校するのですか?しかもぎりぎりに…ジャージを着て登校するのは、如何なものでしょうか」
先生の風紀チェックまでする必要はないと思うのだが…当の柢王先生は、ふぁぁ〜と、大あくびしている。
「おはよう。それは、前から言ってるが、桂花の風紀チェックを受ける為だろ」
「何度も言ってますが、風紀委員が、風紀チェックするのは、生徒だけです」
「残念すぎる…俺も学生になろっかなー」
こんな先生に、付き合っていられないと、桂花は、ゆるく頭を振って、足早に教室へ向かう。予鈴まで、校門にいる風紀委員は、本鈴までに、教室に向かわなければ遅刻になってしまうのだ。
「おはよう。いつも美人だね」
教室につくと、隣の席の一樹が、机に頬杖をついたまま、ふんわりと笑って言った。
「…おはようございます。シャツを第3ボタンまで開けて着るのは、何度も、風紀違反だと言ってますが?」
「似合ってるから、いいんじゃないかな」
そう言う問題ではないのだが、ふわっと、笑うこの人に罰則を与えても、代わりに罰を受けたい生徒達が列を成してもめるので、桂花は、注意するだけにしていた。
本鈴が鳴るのと同時に、ガラッと乱暴に教室のドアを開け、アシュレイが「間に合った〜」と、教室中に聞こえる声で言った。
桂花は、なぜそのような事をわざわざ宣言するのだろうかと、いつも疑問に思う。だから、注意せざるをえないのだ。
「生徒の見本となる、生徒会長が、ぎりぎりの時間に登校するなど、生徒会長の自覚が足りませんね」
「ちっ…風紀委員長だからって、でかい面しやがって」
「しかも、ネクタイは、きちんと結ぶように、毎日言ってますが、いつになったら風紀を守ってくださるのですか?」
「うるさいっ」
「はいはい、そこまでにしておけよ」
校門で、桂花に会った後、急いで職員室に立ち寄ってから来た、柢王先生が、風紀委員長と生徒会長をとめる。
それが、この学園の毎朝の名物である。
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