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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.282 (2011/02/07 08:45) title:当日限り有効 後編
Name:まりゅ (jalpx.mobile-p.jp)

前回までのあらすじ

 親友のティアの手により、コールドスリープから十年ぶりに目覚めたアシュレイ。
 だがアシュレイは、十年後の彼を、どうしても本人と認められないのだった。
...って、2行で終わる内容です...。前編すっ飛ばしてOKです...。

「私たちの国では、コールドスリープは認められていないのよ。重犯罪になるの。いいえ、我が国だけでなく、今では世界的にも認められてないの。十年前、あなたの葬儀を執り行ったわ。あの時、ティアランディア殿に全てをお任せした。彼なら、きっとあなたを幸せにしてくれるわ。こうして、元気な顔が見れたのも、彼が大事にしてくれてるからと良く判る。もう、ティアランディア殿に護っていただくしかないの。解ってね?父上は立場上、来れないけど、いつかあなたに会える日を心から待っているわ。アシュレイ、愛してる。これは父上の分」
そう言うと、姉上はもう一度唇を俺に押し付けた。
俺は、どんな顔をしてたんだろう。姉上は心配そうに帰っていった。

「は、はは…。俺は、もう家族にも国にも不要になってたんだな、十年も前に!葬式もしたって?俺は、アシュレイ・ロー・ラ・ダイは、今や存在もしてないってか?じゃあ、ここにいる俺はなんなんだよ!何で、何で俺をそのまま死なせなかったんだよ!」
喚く俺の肩を、やつは優しく抱きしめる。
「十年前の私は、君を誰にも取られたくない独占したいというだけの、ただの我が儘な子供だった。でも今は違う!今なら、君を護る術を身につけたし、それだけの自信もある。君を護れるのは私だけだ。私に君を護らせてくれ」
「おまえに護られるだけの人生に、なんの意味があるんだよ!」
俺はティアを護りたかった。それが俺の存在する意味だと思ってた。
「てめえなんか嫌いだ!触るな変態!俺の親友を返せよ!俺の大好きだったティアを…」
情けなくて、ヤツの腕を乱暴に払う。
ティアはいつでも俺の一番欲しい言葉をくれた。口下手で、いっつもどうやって説明していいか解らなくて、とりあえず思うままに動いては、周りに怒られてた俺の考えを、ちゃんと理解してくれてた。
ティアに会いたい。俺は、慰めて欲しいのか?なんでこんなに情けないヤツになっちまったんだろう。
いつも大人っぽいティアに、いつかは肩を並べて対等になりたいと思ってた。俺を必要として欲しかった。でも、それはもう、一生できなくなっちまった。どんなに追いかけても追いつかない、それどころか、護られなきゃ生きていけないだなんて、俺の存在価値なんかないじゃないか。

「お願い。今だけ、十年前の私だと思って聞いて」
くちなしの香りがベッドに伏せた俺の体にそっと被さる。
「子供の頃、私は命を狙われてて、何度も君に助けてもらったよね」
そう、解んねーけど、なんでか、俺はティアが狙われてるのに気付いて、あいつを突き飛ばしたり、相手を倒して危機を免れてた。ティアは獣の勘だって言うけど。
「でも、体や命だけじゃなくて、君は私の心を救ってくれた。誰も信じられなくて、早く殺されてしまえば楽になると思ってた私に、君だけがいつでも真実をくれた。君の高潔で真直ぐな心に魅かれていった。君がいるから、君を本気で好きになったから、私も生きていたいと思った」
あの日、ティアが女子に優しくしてるのに嫉妬して、あいつに冷たくあたった。その後にあの告白。きっとあれも、確かなものが欲しいという俺が望んでた言葉だったんだと、今ではわかる。俺だって、おまえが...。
「君が眠っている間、私は笑えなくなっていた。君が必要なんだ。君がいなければ、私も生きていけない」
こんな俺を必要としている?本当に?
「---今日は私の誕生日って覚えてる?お願い。私に君の一年をプレゼントしてくれない?私の為に生きて欲しい。本当に意味の無い人生なのか、一年後に考えてもらえないか?何でも君の好きにしていい、君が嫌がることは絶対にしないから。愛しているんだ…」
涙が零れる。
凍りついた心が少しずつ溶かされる。俺の大好きだったティアの優しさで。
こいつは、この十年間、どんな想いで過ごしてきたのだろう。
十年前の親友と、今ここにいる男が一つに重なっていく。
「お願い」
ティアの泣きそうな声に、俺は小さく「うん」と答えた。

あれから一年。
俺はこの時代にもやっと慣れたし、やりたいことも、やるべきことも解ってきた。
護られるばかりじゃなくて、あいつの役に立てるように、俺が俺でいられるように、きちんと治してくれたティアに感謝している。
あいつは約束通り、相変わらずの態度の俺に、無理強いはしなかった。切なそうな瞳にほだされそうにはなったが。

「ティア…。今日、誕生日だな…」
ティアの顔が真剣になる。この一年の俺を見ていても、まだ心配なんだろうか。俺はすまない気持ちで一杯になる。
「俺…、今は生きてて良かったと思ってる。おまえと一緒にいられて幸せだと思うし、感謝もしてる」
ティアがゆっくり微笑む。
「だから、感謝の気持ちをこめて誕生日プレゼント渡したい…。その…今の俺が唯一持ってるものを…。……俺…自身を…」←古典
「え?」
思い切り勇気を振り絞ったけど、最後は消え入りそうな声になってしまい、聞こえなかったかもしれない。だけどこんなこと二度は言えねえ!
「アシュレイ…本当に良いの?」
う…、聞こえてた…。俺は、自分でも耳まで真っ赤になってるのが判り、死ぬ程恥ずかしかったが、首を縦に振ってやった。
「ありがとう…。こんな嬉しい誕生日プレゼントはないよ…」
くちなしの香りに包まれると、気負ってた体からちょっとだけ力が抜けていった。

時間だけ十年スキップしたけど(スキップがぶっ飛ばすって意味なことも覚えた)、やっぱり俺は未だ15歳のガキだと思うし、一年ずつ年をとって成長していきたいと思う。ティアなら俺の戸籍を何とか復活させることも可能らしいけど、俺は15歳の別人の戸籍を新しく作ってもらった。ティアと10歳違いの。
今は、未だあいつのずっと後ろにいるけど、十年後には手を伸ばせば肩に届くくらいの距離まで近づきたい。そしていつかは、ちゃんと肩を並べられるまでになってやる。十年の年の差なんて関係ない。いつかは無くしてみせる。
それまで、ずっとティアと一緒にいたい。-----結婚は兎も角。(だから俺は未だ15歳のガキで、そんなとこまでは考えられねえよ!)

ちなみに、翌朝しつこいティアには「誕生日は終わった!」って、掌底を食らわせてやった。「そ、そんな…」って言いながら床にのめりこんでたけど、知るか!ああああんなこと、もう、しねえ!------俺がもう少し大人になるまでは…。


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