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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.269 (2010/04/15 18:21) title:薄紅色
Name:薫夜 (p4106-ipbf7004marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp)

―「いっぺん、桜の木の下に埋まってみますか?」
人間界の桜を眺めながら、柢王は、天界にいる相棒の言葉を思い出していた。

あれは、いつだっけ?
思い出せねぇな。
その時の表情や、声はすぐに浮かんでくるのに、原因は思い出せない。
ま、いっか。
なんかで、あいつを、恥ずかしがらせた時だ。
いつもは、青白い毒舌も、そんな時は、この桜の花のように染まって…
何度でも聞きたくなるんだよな。
その時の表情ときたら…
頬が緩むのがわかる。

桜を眺めながら、にやけてるなんて、誰もいないとわかっていても、
辺りを見回してしまう。
相変わらず、群生する桜の花が、まるで雲のようにたなびいているだけだった。

一斉に咲き乱れる姿は、妖しく美しい
まるで、桂花みたいだ。

あぁ、そうだ。
―「あなたが養分の桜なら、吾が大切に育てます」
なんて言うから、桜なんて勝手に、咲くんじゃないかと言ったら、
「桜は、少しの傷にも弱い、手のかかる植物なんですよ。
だからこそ、咲き乱れる姿は美しいんです」
人間界の桜を懐かしく思い出すように、桂花は遠い目をしていた。

危ないところだった。

任務の途中で、ここに立ち寄ったのは、あまりにも桜が綺麗だったので、
この桜を桂花への土産にしたら、喜ぶかなと思ったからだ。

桜を、手折ったりしたら、桂花を悲しませるところだった。

風に乗って、微かに春の甘い香りがする。

―もちろん、桂花には、俺が養分になったら困るだろうことを、
寂しさを吹き飛ばすくらい、しっかり教えたけどな。

さっさと任務を済ませて、桂花のそばに帰ろう。
それが、一番の土産に決まってる。

自信ありげに柢王は笑って、最後にもう一度、満開の桜を見上げた。

風に吹かれて、桜がひらひら舞い落ちる
その中の1枚が、柢王の服にくっついて
天界で、桂花に見つけられ、
また、寄り道してましたね
と、軽く睨まれて、
桜の話をしたら、
気持ちだけで吾はうれしいですよと
微笑うのが愛しくて
柢王は思わず、桂花を抱き寄せた。
そんな日常が、薄紅色。


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