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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.244 (2008/12/12 16:30) title:ブラック・サンタ (中)
Name:薫夜 (51.143.138.210.bf.2iij.net)

 ぽかぽか陽気に誘われて、庭のテーブルにお茶の用意をしている桂花のそばで、柢王がふわぁぁっとあくびをしていると、突然金色の嵐が現われて、平和な午後の終わりを告げました。

「我は、クリスマスプレゼントを所望する」
 冥界教主様は、挨拶もなくそう宣うのでございます。
「クリスマスはサンタクロースが、プレゼントを渡すものではありませんか?」
 人間界に詳しい桂花は、サンタクロースらしきお召し物の冥界教主様に、伺います。
「我は、ブラックサンタだ。だから、クリスマスプレゼントをもらう資格がある」
「…」
(ブラックサンタ…って、黒いサンタか?)
(知りません。どうしますか?)
(…任せた。お前が適任だ)
(柢王っ)
 柢王と桂花のどちらが対応するか、視線で押し付けあっている事も意に介さず、冥界教主様はお話しをお続けになりました。
「この紙に書かれたものを、人間界で買って参れ。その間、こいつの世話はしておいてやろう」
 こいつと、捕まえられた氷玉は嫌がって、ぴぃーと鳴きます。
「お待ちくださいっ」
「天主塔にいる。優しく世話をしてやるが、遅いと焼き鳥にしてしまうぞ」
 突然現われた嵐は、哄笑と一枚のメモを残して、氷玉を連れ去ってしまいました。

「…人質だろ、それは…焼き鳥にしてどうすんだ?…まさか、食うのか?」
 唖然と呟く柢王に、我に返った桂花は、冷たい目を向けております。
「柢王、突っ込むところは、そこではありません」
「いや、あんまりにも、アレだったから」
「…それにしても、あの人は、何を企んでるのでしょうか」
「仕方ない。さっさと、買い物すませようぜ。あいつなら、本当に焼き鳥にしかねないからな」
 疲れたように柢王が申しますのに、桂花も確かにやりかねないと思うのでございます。

 ティアランディアとアシュレイが、人間界から戻って参りますと、天主塔にも、クリスマスツリーが飾られておりました。
 大きなもみの木のてっぺんには金色の星がキラキラ輝き、枝にはたくさんのクリスマスオーナメントが飾られ、幻想的な風景を演出しております。
「なっ!なんだこれ!!どうしたんだ」
「いつの間に!人間界で見たのと変わらないね」
 驚く二人に冥界教主様が、お声をおかけになりました。
「ようやく、戻ったか」
「冥界教主様?どうして天界に、いらっしゃるのですか?」
「そなた達とクリスマスパーティーとやらをしようと思ってな。我らが、そなたの為に飾り付けたのだ」
 アシュレイが「すごいな」と、ティアランディアが「綺麗ですね」と申し上げるのを、冥界教主様が当然のようにお聞きになっていらっしゃいます。
 それを、少し離れたところで、柢王と桂花が見ておりました。
「…俺らが、ほとんど飾ったんだが…」
「柢王。聞こえますよ」
「だって、桂花っ!あいつは、遠見鏡で人間界を見て、アシュレイのお尻が可愛いとか、ティアが美人だとか、あの子は可愛いなとか、アウスレーゼ様と盛り上がってただけなんだぞ」
「何もしてないのに、そこの飾り付けは気に食わぬとかもおっしゃってましたが…触らぬ神にたたりなしですよ」
「桂花」
 噂をすればなんとやら…冥界教主様にお声をかけられて、桂花と柢王はぎくりといたしました。
「これは、そなたへのクリスマスプレゼントだ。冥界に咲く花を、天界でも育つように李々に改良させた」
「このような花が冥界に?ありがとうございます。大切にいたします」
「こんな男は捨てて、冥界に永住すれば、もっといろんな花が見られるぞ」
 桂花は、以前から冥界教主様に冥界に住まないかと、強引に誘われておりました。
 李々がいる事には、心惹かれるけれど…
 何度断っても、「断られる」という言葉が辞書にない冥界教主様は、あきらめてくださらないのです。
「吾が離れられないのですよ。李々に宜しくお伝えください」
「嫌じゃ。冥界に参って、自分で申せばよい」
ふんと機嫌を損ねた冥界教主様は、ティア達のほうにお戻りになりました。

「桂花っ」
 桂花の後ろに寄り添うように静かにしていた柢王が、冥界教主様が去ると耐えきれなくなって、桂花を強く抱きしめました。
 どこへも行かせないと言うように。
 それに桂花は、困った人ですねと微笑い、小さな箱を渡します。
「柢王…これは吾からあなたへの、クリスマスプレゼントです」
「小さな陶器のマリア像?こんなに小さいのに精巧だな。ひんやりしているのに、この微笑みを見るとあたたかく感じる」
「フェーヴと呼びます。人間界の西の方の国では、エピファニーと言う祭りの時、ケーキの中に入れて焼き、切り分けたケーキの中に入っていた人は、その一年幸せに過ごせるそうです。自分で幸せにしたい人を決めるマリア像。柢王が気に入ればいつまでも、そばにいてくれますよ」
 このマリア像のように、桂花はずっとそばにいるのだと、伝えたかったのでございます。
「自分で決めるか…」
 桂花のプレゼントに込められた心を受け取って、不敵な笑みを浮かべる柢王に、桂花の笑みはマリア像と同じくらい、あたたかくなっておりました。


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