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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.240 (2008/11/12 13:14) title:移りゆく季節
Name:碧玉 (62.152.12.61.ap.gmo-access.jp)

(実際は、2008/11/10 13:42に投稿されました)

「年取るごとに若くなってくよね♪ホントに年を盗っちゃうみたい」
 接客する一樹を見ながら桔梗は笑う。
「神に魅入られ時を止めた話を思い出すね。あれは少年だったっけ」と忍も微笑み「恋してるのかな?」と続けた。
「なに、なに?」
 待ってましたと桔梗が体を乗り出す。
「だって『恋すると綺麗でいられる』って一樹さん言ってたから」
「なーんだ」
 脱力する桔梗に、五杯目をあけた二葉が口を開いた。
「けど一樹変わったぜ」
 ふんわりとした雰囲気はそのままに、だが時折見せる壮絶な危なさや壊れそうな儚さの輪郭がぼやけてきた気がするのだ。
「そ・れ・よ・り」
 弾んだ桔梗の声が響く。お得意の強制話題変更だ。
「先週で二葉も『30』になったしぃ、ビッチピチの20代は、俺・だ・け!!♪」
 勝ち誇った桔梗に二葉はムッとしたが、すぐに不適な笑みを浮かべ
「そうそう。 オレも忍も卓也も一樹もみーーーんな30代だもんな!!」
 <オマエ以外>と告げる。はじきを嫌がる桔梗への当てこすりだ。
 案の定、桔梗の笑みが消えた。
 更に二葉は携帯でカレンダーを映し
「あ、忍の誕生日、俺と同じ曜日じゃん!! いやーーー、こんなところまでピッタリ〜!! 運命感じるよな」とわざとらしく、はしゃいでみせた。
 バカらしいと呆れた忍が見たのは、瞳いっぱいに涙を浮かべる桔梗。
 やっぱ、こいつら従兄弟だわ・・・ため息をついた。
「二葉が一緒ってことは俺も忍と同じってことだね」
 いつの間にカウンター内にいたのか、ヒョイと顔出した一樹に二葉は盛大にむせこんだ。
「曜日が運命なんて知らなかったなぁ〜〜〜」
 笑う一樹に桔梗は即便乗。
「そうだ!! 今日は一樹の誕生日だしっ忍かしてあげたら〜〜運命なんだろっ!!」
「ヤダ」
「いいね」
 さすが兄弟。息ぴったりの返答だ。
 事態を素早く替えたのは忍。
「一樹さんお誕生日おめでとうございます。 花なんて芸がないけど、これしか思いつかなくて」
 用意しておいたアレンジフラワーをさしだす。
「綺麗だね。ありがとう」
 早速カウンターに飾った一樹は「帰りまで待っててね」と花に語りかけた。
「プリザートフラワーにしようと思ったんだけど、飽きちゃうかもしれないし」
「花は生が一番だよ」
「人もね」
 微笑む一樹に桔梗も付けたす。
「ところで何の話?」
「えっと・・・『一樹さんの年が止まってるみたい』って」
 運命云々に戻る前に素早く答えた忍に「実は止まってるんだ」と一樹は声をひそめた。
「どうして俺がこの『イエロー・パープル』に居続けてると思う?」
 本能的な危険に身を引く三人。
「それはね、若いエナジーを吸いとるためだよ」
 ズイッと身を乗り出す一樹の瞳は魔性のミッドナイトブルー。
 深く澄んだ妖かしに魅入られ動けない三人。
―――――――ガッシャーーーン―――――――
 沈黙を破ったのは忍。厳密には忍の手から滑り落ちたグラス。
 弾けるように覚醒した桔梗はグラスが割れてないのを確認すると「ダスター」とカウンター内へ滑り込んだ。
 音の割に被害は少なくカウンターを少し濡らしただけだ。
 タオルを手にカウンターを越えた一樹に「兄貴が言うとシャレになんねぇー」と二葉はボヤき、桔梗から受け取ったダスターでテーブルを拭く。
「ホラ!忍もいつまでも腑抜けてないで」
 いまだ呆ける忍に桔梗が叱咤。
「だいじょーぶ♪ 一樹には有り余る俺のエナジーをあげてるから。それで俺も一樹にもらって循環、循環。 贅沢なエコだろ?」
 明るく言い放ち「でもね」と声をひそめ
「でもね、時には補充も必要で―――きた、きたエネルギーの素っ」
 現れた卓也に三人は吹きだす。
 なんだ? わずかに顔を顰めた卓也に
「太陽発電の話だよ」と一樹が言えば
「光合成だろ」と二葉が返す。
 さすが兄弟。主旨は違っても示唆するものは同じ。
 笑いが溢れる。
 楽しげな一樹を見ながら桔梗は思う。
 一樹の太陽は心に封印されたままなのだろうか? それとも海の向こうの・・・
 桔梗は願う。
 ―――彼が太陽になるといい・・・と。
 でも今日は俺たちが―――――
      Happy Birthday 一樹
 たくさんの思いと一緒に心で復唱し、桔梗は静かにグラスをかたむけた。


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