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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.238 (2008/10/23 10:17) title:四国対抗歌合戦
Name:碧玉 (210-194-208-98.rev.home.ne.jp)

 ガシガシ、コツコツ・・・。ハァ〜〜〜・・・。
 天主搭執務室の隣。与えられた桂花の部屋では数刻この状態が続いている。
 騒音の主は柢王。また面倒を持ち込んだのだろう。
 だが今日こそは自力解決をと桂花は無視を決めこんだ。
 なのにっ!!
「あ゛ああ゛ああ゛あ゛あ゛・・・・」
「わわわわわ・・・わ・・・・・わわ」
「ふふふふーーーーーーーふぅっ・・」
 外から沸き起こる濁声。
 咄嗟に柢王に視線を向け、桂花の決意はあっけなく砕け散った。
 チャンス到来、柢王はニヤリと扉に結界を張る。
 防音できるなら始めからすればいいものを、しないのはモチロン故意。桂花ヘルプのオネダリだ。
「何です、アレは・・・」
「八紫仙だろ」
「聞けばわかります」
 噛み付かんばかりの桂花に
「恒例の『四国対抗歌合戦』の季節が来たんだ」と柢王は告げた。
 また恒例か・・・と息をつく桂花に柢王は四年に一度と付け足した。
「あなた持ち込みの面倒もコレですね」
「文殊塾協賛だからな」
「つまりは関係者・・・」
 東の元帥と同時に文殊塾の体術講師を務める柢王は既に主催者サイド。
 面倒だが仕方ない。
 柢王の自力解決をキッパリ諦め、読みかけの本を閉じた桂花に、待ってましたと柢王は関係書類を飛ばした。
 目を通し分類していく動きには一つの無駄もない。その流れる作業はしばらく続き、やがてプログラム原版で止まった。
「何です、この穴あきは?」
「順番が決まってねぇんだ。 四国とも同希望で」
「トリでもやりたいと?」
「いやトップ狙いだ」
「トップ!?」
 印象を残すにはラストじゃないのか・・・首をひねる桂花に柢王は
「あの前振りがあるからさ」と扉を指差し
「ケドあいつら凄いぞ。 唄いだしはズレんのに最後はキッチリ揃うし、ハモリも見事なのか、そうじゃねぇのか分かんねーシロモノなンだ」と妙な後ひれをつけた。
「唄いだしがズレる? それは輪唱なんじゃ?」
「いやズレは不定期だ。 後のヤツが抜かすことも、一緒にもなることもあるし・・・」
 俺にも分かんねぇ・・・と柢王は両手をあげた。
「―――――八紫仙のことはわかりました」(本当は全く理解できないのだが)
 言って桂花は<順番→保留>と余白に書き込み、「出場者は?」と次に進んだ。
「資格は王族、貴族だ。まぁ、ほとんど王族だが」
「東はどなたが?」
「ウチは親父」
「なら西は洪瀏王さまですね」
 桂花が東西の出場者名を書きかけたところ、柢王は首を振った。
「いや、西はカルミアだ。それに親父のライバルは毘沙王だろ」
「さ、山凍殿!!!」
「さ、山凍―――まっさかぁ」
 目を見開く桂花と秒差で柢王は笑い出し涙ながらに言い直す。
「ハハハッ、わるいっ、前毘沙王だ。 山凍パパがライバルだ」
「前毘沙王さま・・・です・・ね」
 ホッと額に滲む汗を拭う桂花。
 その横で柢王は回想。
「そういや前回、北は江青と珀黄だったな。経みてぇって爺婆のアイドルだったっけ」
 それを右から左に受け流し、桂花は「南はどなたが?」と話を進めた。
「南ねぇ・・・」
 柢王は小さく息をつくと、身体全体不機嫌のオーラを滲ませた昨日のアシュレイを思い出した。

 今時期、天界はどこへ行っても話題は決まって歌合戦。
 アシュレイの苦痛は手に取るようだ。
 そんな親友に苦笑しつつも柢王は、わざとテンションを上げ絡んでいった。
『よっ! 腐ってンな♪』
『うっせぇ!!』
『ケド仕事なんだ。な、おまえンとこは姉上の巫女姫が出んのか?』
 歌合戦企画進行書をチラリと見せ協力を仰ぐ。
『姉上の大反対で断念だ』
 オマエまで歌合戦かよ!!と悪態をつきつつも仕事なら仕方ねぇと吐き捨てた。
『じゃあ誰が?』
『さあな』
『―――炎王ってことはねーんだろっ?』
 言ってブッと噴出す柢王に、アシュレイもクッと笑う。
 二人して前回を思い出したのだ。
 四年前、華々しくトップを飾ったのはアシュレイの父、炎王だった。
 自信満々、迫力満点でステージに立つその御姿は会場中を圧倒した。
 加えサビから始まる攻めの選曲。『今回はコレで決まり!』誰もが思っただろう。
 イントロが流れ聴衆の期待は最高潮。
 ―――その初っ端・・・事態は起こった。
 出だしをトチる・・・まさかの失態。
 固まる炎王。
 固まる聴衆。
 生バンドが慌て修正したときは既に遅く、会場は割れんばかりの爆笑に包まれていた。
 誰にも増しプライド高く自信家の炎王の傷心はことさら深く、その影響は下界にまでおよんだ。
 川、湖は干上がり海面が沸きあがる灼熱地獄。
 まさに壊滅一歩前の大惨事。
 以来、南ではあの歌合戦は禁句の一つに数えられている。
『ああ見えてナイーブなんだ』
 笑いを収め、珍しく父を労わるフォローをいれたアシュレイは先ほどの憂鬱はどこへやら 『出場者は決まり次第連絡してやる』と足取り軽く去っていった。

「南はまだ決まってないらしい」
「そうですか」
 桂花は南の欄に保留と書き込むと、次の書類に目を落とし首をかしげた。
「この改定規約・・・変化なしってのは?」
「ああ。 前回な・・・親父のヤツすげーぇ若作りしやがって・・・それも整形、化粧バッチリで。 あの目張りにゃ身内もドンびきだ。―――それを幕裏で見た洪瀏王が」
「―――便乗したんですね」
「ああ」
「クレームは?」
「モチロン出たさ。中でも前毘沙王が厳しくってな。 ま、ありゃ仕方ねぇな」
「仕方ない?」
「ああ。前回、北は江青たちって言ったろ? ありゃ練習で声を枯らした前毘沙王の代わりだったんだ」
「それは自業自得でしょ?」
「いや声は治ったんだ、ティアの守光でさ。 けど守護主天の援護を受けたのはズルイ!!って親父たち他国王がイチャモンつけ、泣く泣く辞退」
「――――・・・・」
 子供のケンカか・・・なんて低レベルな。
桂花は痛み始めたこめかみに片手を添えた。
「―――で結果は?」
「結果?」
「対抗歌合戦の勝者は?」
「ンなのつけられるわけねぇだろ」
「勝敗が・・・ない?」
「そ、出場者は好きな曲を歌い、審査員はそれを誉めちぎる。そして国に戻って自賛しつつ賛辞を聞き次回に闘志を燃やす。―――だからジジィたちが競って出場すんだろ」
 ―――つまり、対抗というのは自己自慢・・・。
 バサッ!!
 桂花は机に手元の書類を投げ出した。
 そして震える怒りを忍耐力で抑え、読みかけの本に手を伸ばす。
「けっ、桂花」
 慌て呼び止める柢王に−273,15℃の視線を突き刺し静寂を確保。
 ガシガシ、コツコツ・・・。ハア〜〜〜・・・。
 ページをめくる音と共に交わる不定音。
 秋の夜長の天主搭。そこでは各部屋ごとに様々な音楽が奏でられている・・・そうだ。
 
 
 

 
 
 
 

 


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