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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.237 (2008/10/23 10:14) title:ある月の綺麗な夜に
Name:薫夜 (51.143.138.210.bf.2iij.net)

 −プロローグ−

 人の声が聞こえると夢うつつに慎吾は思った。
「また、ソファーで寝ている」
「可愛い寝顔だね。風邪をひくといけないから、上着をかけてあげよう」
「俺の上着をかけるからいい」
「ずるい。お前はいつもしているだろ」
「…スーツがしわになって、困るのはお前だろう」
 小さな声だけれど、うたた寝の慎吾が目を覚ますには十分だった。
目を開けると、スーツの上着を手にした高槻さんと貴奨がいて、慎吾はあわてた。
「た、高槻さん、いらっしゃい。すみません、寝てしまって」
「今来たところだから、気にしなくていいよ。それより、疲れているんだったら、寝ていていいんだよ」
「いえ、大丈夫です。あの…何をしていたんですか」
「どっちが、慎吾君に上着をかけるかをね」
 くすくす笑って高槻さんは言った。
 その相手は、びっくりした慎吾に驚いて逃げ出したミルクを、抱き上げていた。
「そんなところで寝ていると風邪をひくといつも言っているだろう」

 −ある月の綺麗な夜に−

 貴奨が、ソファーでうたた寝をしている。
 慎吾は驚いて、リビングの入り口に立ち止まった。スーツの上着を脱いで座ったら、眠ってしまったみたいだ。
 今日は、高槻さんが夕食を作りに来てくれてるのに。いつもは見せない疲れた姿を見ると心配になる。
 じっと見ていると、貴奨の膝の上の特等席をゲットしたグレースが、上機嫌で尻尾を振った。
本当に貴奨が好きなんだなと、自然と笑みが浮かぶ。
 その時、キッチンで料理をしていた高槻さんが、「どうかしたの?」とリビングに顔をのぞかせ、
その気配に目を覚ました貴奨が、しまったという顔をした。

「珍しいね。体調が悪いの?」
 驚く高槻さんに、貴奨はグレースの頭を撫でながら苦笑した。
「いや、すまない」
「休んでいてもいいんだよ。慎吾くんと二人で、ディナーを楽しむから」
 ふふっと笑う高槻さんに、貴奨は疲れを感じさせない、不敵な笑み浮かべる。
「お前の料理が食べられるチャンスは、逃さないさ」
 リビングの入り口に立ちつくす慎吾は、気付いていても、こちらに視線さえ向けない貴奨に、
俺もいるんだけど…と、顔をしかめた。
「そんなところで寝てると風邪をひくって、いつもお前が言ってるくせに」
 心配なのに、つい嫌みを言ってしまった。
「心配してるのか?ん?」
 まるで、愛猫をみるように目を細めて、貴奨はわざと聞くのだ。
「そんなわけないだろっ」
 赤くなった慎吾に、ふっと笑った貴奨は、高槻さんに、「着替えてくる」と言って自室に入った。
慎吾の側を通る時、心配するなと言うように、慎吾の頭をぽんと叩いてから。
 立ち尽くす慎吾の足に、グレースが身をすり寄せて、にゃーと鳴いた。
まるで、素直じゃないんだからと言うように。

 貴奨のやつ…グレースまで…高槻さんには「仲の良い兄弟でうらやましいね」とくすくす笑われる始末。
恥ずかしいだろ。
 足元のグレースを抱き上げて、ふかふかするお腹に、慎吾は赤くなった顔を隠くした。


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