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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.232 (2008/06/22 19:21) title:テンポ ドルチェ
Name:ぽち (180.152.150.220.ap.yournet.ne.jp)

 数日続いた長雨がやみ、久しぶりの日差しを浴びる週末。ティアは、近所の本屋さんから一冊の雑誌を購入してきた。車のカタログ本だ。
「どれがいいかなー、前は2シーターのスポーツタイプだったけど、今度はファミリーカーかなぁ、それともミニバン…ワンボックスタイプがいいかなぁ」
 ペラペラとページをめくり、品定め。普段はこれと言って必要とは思わないが、出掛ける時ぐらい時間を気にせずゆっくりしていたいと思ったのだ。
 以前乗っていた車は、アシュレイとここに住むことを決めた時点で手放した。なんてことはない、置くところがなかったからだ。
「ねぇねぇ、アシュレイ。君はどれがいいと思う?」
 雑誌をバッと広げて、どう? と見せる。
 珍しくTシャツにジーパンとラフな格好で寛いでいるティアに冷たい飲み物と菓子を持ってアシュレイが入ってきた。
 アシュレイの格好もいつものいでたちとは異なり、ダブダブのTシャツに膝下まで丈がある紺色のスカート。体にフィットしたシャツに短パンで動くことが好きなので、普段から気にした事はなかったのだが、ティアが買い物一つ出かけるのにも「そんな格好で出かけたりしちゃダメっ!」とムキになって反対するので、最近は体のラインが判らない衣服を着ることが多くなっていた。
「なんのことだ? ──あぁ、車か、お前好きだもんなぁ。よく運転して、色んなトコ連れてってもらったのを覚えてる」
 楽しかったよなぁ と、満面の笑みを浮かべたアシュレイにティアは買ってきた雑誌を渡した。
 雑誌を斜め読みするアシュレイに、ティアはニコニコとしながら話し出す。
「私達二人だけって訳にはいかないだろう? 皆が乗れるボックスタイプのほうがいいかな」
 これとか、これとか どう? と指をさして紹介する。広い室内を説明した内容にティアはうっとりとした。
 義父母家族、柢王夫婦、自分達 全部合わせて8人。一緒に海ぐらい行けたら…… と、妄想まっしぐらだ。
 ボーっと別世界へ飛んでいってしまっているティアを、アシュレイは呆れながらも面白がって見ていた。
「ねっ、アシュレイ。いいと思わない? すっごく便利になると思うんだ」
「そうだな、いいかもしれねぇな」
 適当に相槌を打つ。免許のないアシュレイには別段欲しいものでもない。
「買っちゃおうか」
「バカな夢見てんな。どこに置くつもりだよ、ウチにはそんなスペースはねぇ」
 これだから金持ちのボンボンは… と、更に呆れた表情でティアを見つめる。
「あのね、裏のハンタービノさんのところで置かせて貰えるかもしれないんだ」
「ビノん所に?」
 うんっ と、嬉しそうに頷くティアを見て、アシュレイは ハァァ〜と大きな溜息を吐いてティアの肩をポンポンと叩いた。
「あきらめろ、ティア。一時しか置けねぇぞ。あそこんちの息子がもうすぐ出張から帰ってくるからすぐに置けなくなっちまうって」
「えっ??」
 知らなかったのか? と、アシュレイは首を傾げティアの表情を見る。何も知らなかったティアは呆然とするばかりだ。
「あそこんち、ハーディンって息子が確かあと半年ぐらいで、九州からの出張を終えて帰ってくるはずだぜ。あいつもすっげー車好きで向こうへ行くときも自分で運転して行きやがったから」
 置けなくなるぞ と言うと、ティアの端正な顔がグズグズと崩れてきた。
「ティアー、そんなに落ち込むなよ。車に金かける事ねぇだろ? すぐ近くに駅もあるし、便利なとこなんだからさー」
 いざとなったら、レンタカーって手もあるだろ? と、ティアの頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でてやる。
 しばらく撫でているとティアの青白かった顔色に、すぅーと頬に赤みが戻ってきたのを見たアシュレイは、温かい飲み物を用意しようと席を立とうとした。
 が、ティアがアシュレイの腰に腕を巻きつけ、胡座をかいた自分の膝に座らせる。アシュレイの背中とティアの胸板がべったりとくっついた状態。
「おいっ」
 何をするんだと、アシュレイは身じろぐが、ティアはどうってことないという顔つきでアシュレイの肩に顎をのせる。
「結婚前みたいにドライブして遠くまで行きたかったんだ、君と」
「……」
「私も仕事が忙しいから、君といる時間は少ないけれど。それでもこうやってお休みの日ぐらいは、家族皆で出掛けるのもいいかなって」
 ぐずったティアの声が耳元で聞こえる。溜め息のように吐くティアの息がアシュレイの耳に掛かる。アシュレイはくすぐったくて仕方なかったが、珍しく凹んでいるティアを慰めたかった。
「あ………、ありがとな、ティア。そんなに気ぃ使わなくてもいいよ、お前がバテちまう。休みの日くらいゆっくり休まねぇとなっ」
 相手の顔を見なくてもいい状態に座っているので、アシュレイも照れずに言える。しかしアシュレイのウエストラインにがっちりとティアの腕が回されており、なかなか外せない。
 仕方なくアシュレイは、ティアの手に自分の手を重ねる。ありがとうの気持ちと 気ぃ使わせて悪ぃなという気持ちを込めて。
 その瞬間、アシュレイの腰を拘束していた腕が解かれ、くるっと反転させられる。逃げる余裕もなく、あっという間に組み伏せられていた。
「ティアッ! 何しやがんだ! 寝ぼけてんのか?」
「ちょーっとね、君からの愛情が不足してるから補充しておこうと思って」
「何が不足だっ! 毎朝毎晩、有無も言わさずしてっじゃねーかっ! 寝ぼけた事言ってんな!」
 隙あらば、おはようのチューだとか、おやすみのチューだとか言って、ベッタリ貼りついて離れねぇ癖に! と怒鳴るが、ティアはどこ吹く風 気にもしない。
「本当は、君からして欲しいんだけどね。それに、朝晩だけじゃなく、行ってらっしゃいとお帰りなさいの時もしたいし、して欲しいな♪」
「できっかっ! んな恥ずかしい事! 家族皆に見られちまうじゃねぇかっ!」
 出勤時間は父親と同じだし(電車だから)、帰宅時間はほぼ全員揃っていることが多い。そんな中、帰宅しても出迎えるのはアシュレイじゃなく弟妹たちが先に玄関に走っていく。
「そう? 新婚さんなんだからいいかと思ってたのに。ケチだなぁ」
「何がケチだっ! 離せってばっっ!」
 身体を左右に動かし何とかティアの下から抜け出そうとしたが、ティアの要領がいいのか、上から押さえつけられているせいなのか逃げ出す事ができない。
 両手を頭の上で押さえつけられ、顎を抑えられると顔を動かす事ができない。ゆっくりとティアの唇が近づいてくる。
「車がダメなら、マンション…別荘でも買おうか。そうすれば家の人たちに見られないところでイチャつけるね」
「無駄な買い物の夢ばっか見てんなっ! ここはよせって言ってるだろっ、誰かに見られたら…」
 自分達の部屋なら、襖を閉めれば一応見られることはないはずだから… と言ってはみるが、ティアは頑として受け付けない。アシュレイは真っ赤になって抵抗してみるが、ティアの方が一枚も二枚も上手だった。
「お義父さんは接待ゴルフで、お義母さんは隣の奥さんと観劇で遅くなるって言ってただろう。小ティア君は学校行事で今日は泊まり、帰ってこないし誰もいないよ」
 大丈夫 と、ティアは押さえつけた手に更に力をこめる。
「滅多に家でイチャつくこと出来ないんだから黙って」
「ばっ!!」
 もうよけられないっ! と、アシュレイは目をギュッと瞑った。
「なにしてるの? おねぇちゃん。おにぃさんとちゅーでもするの?」
「!! ちぃっ!」
 ティアも気づかなかったらしい。慌ててアシュレイを押さえつけていた手を離す。
「するの? おねぇちゃん」
「しないっ! どけっ、ティアッ!」
 妹に見られたことがとてつもなく恥ずかしいアシュレイはティアからの拘束が緩んだと同時にティアを押し飛ばし、一目散に自室へ逃げてしまった。
 
「逃げられちゃったね、おにぃさん」
 姉が走って行った方を見つつも、小さいアシュレイはテーブルに置いてあるクッキーに手を伸ばし、口いっぱいに頬張る。
 アシュレイに押された時に壁にぶつかったが、力の加減をしてくれていたらしい。あまり痛くなかった。
「君に見られちゃったからね、君のお姉さんはとても恥ずかしがりやさんだから」
 お義父さん、お義母さん達には内緒ね と、軽くウィンクをする。暫くは部屋に入れてくれないだろうなぁと思いつつも、彼女の事を思うと胸の中に大輪の花が咲くような幸せな気分になれる。
 他の人に捕られたくなくて、半ば強引に自分のものとした。誰に見られてもいい、隙あらば抱きしめて自分の伴侶だと確認したいのだ。いつでもどんなときでも。
「おにぃちゃんには言ってもいい?」
 ビ○ターの犬のように首を傾げ、確認する義妹にティアは大きく左右に首を振る。
「絶対ダメ。君のお兄さんに知られたら、私はここに居られなくなってしまうからね。君にお菓子を買ってあげる事もできなくなってしまう」
「そうなの? じゃあ、言わない」
 口に両手を当てて、言わないと意思表示を見せた。
「いい子だね。一緒にアイス買いに行こうか。なにがいい?」
「イチゴー!」
 おにぃちゃんの分も買ってね と、小さいアシュレイはティアにおねだりをした。
 
 
 数日後──────
「車もダメ、マンションもダメ。ズルイよ、アシュレイ。全然イチャつけないよ」
 Booと頬を膨らませて、反論するティアにアシュレイも少しだけ申し訳ないような気はしていた。
 殆どプライバシーはなく、プライベートスペースも自分と一緒だ。そんな狭い自分の家へ来て貰っていて、ティアだって窮屈なはずだ。
「今度、お前の休みの日 どっか行こうか」
 外へ出かければ気分転換になって、ティアもちょっとは落ち着くかもしれない。そんな淡い期待を持ちつつアシュレイは提案した。
 家族で仲良くどこかへ行けば…、軽い解放感がティアを落ち着かせてくれるかもしれないと。
「本当? 必ずだよ、約束だからね! あっと……その時は二人っきりで出かけたいな♪」
 目を輝かせて自分を見るティアに気持ち的に後退りをしたアシュレイだが、ふっと思いなおした。二人きりで出掛けた方がティアに余分な気遣いをさせなくても済むかもしれない。
 自分の親、弟妹に気を使って疲れさせるより、自分だけなら多少我が儘言われても、対応できるかもしれないと。もちろんティアがセクハラまがいなことをするかもしれないということは、頭の中からすっかり落ち切って入っていない。
「2人で!? ──まぁいっか、わかった。他の連中には言わないし、連れてかない」
「プランは私に任せてくれる?」
「──無茶な計画はすんなよ、わかってんだろうけど」
「うん! 任せて♪」
 浮かれきったティアに釘をさすが、きっと届いていないだろう。諦めたように大きく溜め息を吐いたアシュレイにティアは尋ねた。
「この間、君に聞きそびれたんだけど、君はどんな車が好き?」
「軽トラ」


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