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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.228 (2008/06/13 13:58) title:黒海も笑ってる1
Name:薫夜 (51.143.138.210.bf.2iij.net)

「桂花、こっち来て一緒にテレビ見ようぜ」
居間から聞こえた柢王の声に台所で昼食の片付けをしていた桂花は、最後の皿を洗いながら時計を見た。いつの間にかティアとアシュレイが出演する番組の始まる時間になっていたようだ。
「新婚さんを呼んで話を聞く番組でしたか?」
桂花はエプロンを外しながら柢王の隣に座ろうとすると、下から伸びてきた腕に腰を抱きよせられて、柢王の足の間に座らされる。
「そう。アシュレイがこんな幸せそうな新婚さんは他にはいないから是非にって頼まれて、ティアには事後報告で引き受けたらしいぜ」
俺たちだって負けてないけどなと柢王は桂花の腰を抱いたまま笑う。
「ティアさんも私達のラブラブ度をアピールしてくるから、是非見て欲しいとおっしゃってましたね」
「張り切ってたな、どうなる事か楽しみだ」
 
テレビからオープニングテーマが聞こえて、黒髪の二人の男性が優雅にソファーに座っている姿が映る。
『こんにちは。「新婚さん、よく来たね」の司会アウスレーゼと』
ダークグレーのダブルのスーツを見事に着こなした方が、いたずらっぽい微笑を浮かべて言った。
『冥界教主だ。早速、今日の新婚さんに登場してもらおうか』
細身のストライプのスーツを身にまとった方が流し目で登場する場所を示した。
 
「…なあ、桂花。この番組であってるのか?」
「ええ、間違いありませんが…」
笑いながら椅子から転げ落ちる新婚さん番組ではなさそうだし、この二人と新婚さんは似合わない。
 
疑問に思っていると、結婚式を思わせるような曲で、真っ白のタキシードのティアと真っ赤なウェディングドレスのアシュレイが手をつないで登場した。
意外と普通に自己紹介や出会いの話が続いていく。聞き上手な司会者にティアが余計な事まで話しすぎて、照れたアシュレイに怒られる姿が笑いを誘っている。 
『夫婦の間に隠し事があるのではないか?』
アウスレーゼが面白そうに問いかけた。
『ありません』
胸を張って言うティアに、冥界教主が鼻で笑う。
『嘘だな』
『な、何を…』
実はいろいろありますとは言えないティアが焦るのをアシュレイは不思議そうな顔をして見ている。
『証人に登場してもらおうか』
 
優雅に笑った冥界教主の後ろから水城が登場して、冥界教主の膝の上にちょこんと座った。
少し遅れて氷暉がアシュレイ達の後ろから出てきて冥界教主をにらみつける。
『水城を返せ』
『人聞きの悪い事を言うでない。彼女は自分で選んだのだからな』
くくくと笑う冥界教主にアウスレーゼは『お主も悪よのう』と笑って傍観者の構えだ。
ティアとアシュレイは困惑してお互いの顔を見合せた。
『お前の知っている奴らの秘密を話せ』
『くそっ。何も知らん!』
『強情な事よの。これでも白をきるか?』
冥界教主が合図すると後ろにスクリーンが現われて、映像が流れ始める。
 
今より少し幼い水城が「綺麗」とガラスの指輪をうっとり見ている。
氷暉がその値札を見ると「1000円」と。とてもお小遣いで買えるものではないが、毎日のようにガラスの指輪を見に行く妹。
氷暉がティアに何事か囁いて、焦ったティアから「内緒だよ」とお小遣いを貰うところで映像が終わる。
 
冥界教主の指が水城の小さな手にはめられたガラスの指輪をなぞる。
『綺麗な指輪だな。よく似合っている』
『兄さんからのプレゼントなんだ!』
『いい兄さんだな』
自慢する水城に向けた冥界教主の優しい笑顔が氷暉に向けられた瞬間に恐ろしい笑みにかわる。
『…ティア義兄さんは、アルバムの中に壱万円のへそくりを隠している』
観念した氷暉は早口に言った。帰ったら水城に知らない奴についていってはいけない事を教えなければと思いながら。
 
『今日はその金で焼き肉食べ放題だ!』
その言葉を聞いたアシュレイはウキウキとガッツポーズをして、アシュレイの誕生日プレゼントを買おうと思ってたのにとティアは涙目だ。
『あんまりだよ…』
『なんか言ったか?』
『…なんでもありません』
 
弱った顔のティアを見てくつくつ笑う冥界教主にアウスレーゼも笑う。
『なかなか、やるではないか』
『あなたほどではありませんよ』
妖艶で挑発的な冥界教主にこちらは余裕ある大人の微笑みを浮かべるアウスレーゼだ。
『ふふっ…ならば、アシュレイの秘密を教えてあげよう。アシュレイは弟の氷暉とこの間まで一緒にお風呂に入っていたのだよ』
 
何を言われるのかびくびくしていたアシュレイだったが、なんだそんな事かと安心してティアを見ると。
『ずるい!私だって、アシュレイと一緒に入りた…むぐっ…』
慌てたアシュレイの手でティアは口を押さえられた。妻の実家に来てからずっと遠慮してたのに…そうか、みんなが寝たあとならいいのだとその天才的な頭脳でひらめいて、口の前にあるアシュレイの手をペロッと舐めて笑った。
アシュレイが、怒りと羞恥心でドレスと同じくらい真っ赤になって言葉をなくすのをアウスレーゼは楽しそうに見ていた。


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