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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.224 (2008/06/09 23:38) title:「甘えた」
Name:きなこもち (zaqd37c493c.zaq.ne.jp)

「困ったもんだな。」
「困ったもんですね。」
           やつらだよな。」」
「「ほんとに困った          ・・・・・・・・・・同時に溜息をつく二人だった。
           人たちですよね。」」

うららかな午後、磯○家に集う若妻のおしゃべりタイム。
なぜか表情には陰りが見える。
顔を合わせているのは磯○アシュレイと入○桂花。
アシュレイの従兄の奥さんである桂花は、今ではすっかりアシュレイとその母李々と仲良しだ。
今日も李々お手製のちらし寿司の作り方を教わりにやってきていた。
レシピも教わり一段落ついたのでアシュレイとおしゃべりをし始めたのだが、互いの夫の話になり、話の雲行きが怪しくなっていった。
「ママ、冰玉と公園に行って来てもいい?」その時アシュレイの子供が桂花の子供の手をつないでやって来た。
「おう、いいぞ。でももうすくおやつだからな、すぐ帰って来るんだぞ。」
「冰玉、ジュニアの言うことをちゃんと聞くんですよ。」
母親たちがそれぞれ子供に声をかける。
「「はーい♪」」
子供たちは嬉しそうにかけて行った。そして母親たちの話は続く。
「最近チビティアのやつ物語に興味持っててさ、毎晩寝る前に読んであげてるんだけど。」
「へえー。さすがですね。見かけだけでなく中身までそっくりなんですね。」
桂花に他意はなく、思ったことを口にしただけ。面白くはないがその通りなので、アシュレイも反論はしない。
「まあな。俺は本読むの苦手だし…。それで昨日も読んでたんだけど、そしたらティアのやつが部屋に入ってきてさ。『私にも読んで』って言うんだぜ。」
「家もそうです。子供の足の爪を切ってあげていたら、夜、『俺にも〜』とか言ってきて。しかたないから膝の上で耳掻きしてあげましたよ。」
その時の旦那のしつこさを思い出し、桂花は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「俺もさ疲れてたんだけど、『昔は二人で一緒に読んだりしたよね』とか言われてさ。しゃーねーから読んでやってたら、イタズラしてきやがんだぜ!」
「イタズラ―?」その言葉に桂花は片眉をピクリと吊り上げる。
「ああ!やめろって言ってもきかなくて、け、結局、その、読めずに終っちゃたし。」怒ったり赤くなったり、目まぐるしく表情が変わるアシュレイ。
「ガ、ガキみたいだよな。まったく!」
それはガキというより○○○○と言うのでは・・・と心の中で桂花はツッコんだ。
「お前んちはそういうのないのか?柢王はしないか?昔は俺と一緒に色々悪さしてたんだぜー。」ニヤッとしながらアシュレイは聞いた。
無表情を装いながら桂花が答える。
「確かに柢王もよくイタズラしてきますよ。時々付き合ってあげてますけど。」
そう、桂花の夫もアシュレイの夫と似たようなことをする。ただしそれはお互い合意の上のお遊びだ。
「だろー?」やっぱりな、とアシュレイは笑った。
(私は知っていて遊べますけど、貴女は違うでしょう?)無垢というより無知過ぎる義従妹を心配しながらも、この夫婦に若干引き気味の桂花である。
それからしばらくは柢王の下宿時代の思い出話になり、桂花の知らなかった、まだやんちゃで子供な柢王の話で盛り上がったりした。
「あれ?そういえばチビ共遅いな。」ふと、アシュレイがつぶやく。
「そうですね。もうとっくにお腹を空かせて帰って来てもいい頃なのに…。」顔を曇らせて桂花が答える。
にわかに不安が心に広がっていく。母親たちは、急いで公園に向かった。
玄関を出てすぐにジュニアのお友達のリ○ちゃんが、アシュレイたちの来た方に走ってくるのにぶつかった。
「リ○?どうしたんだ!?」自分の名前を呼んだ人に気がついて、リ○ちゃんはアシュレイたちのほうへやって来た。
「あ、おばちゃん!大変なの、公園に大きい犬がいるの!」リ○ちゃんは、必死にアシュレイと桂花に伝えた。
「何ですって!?」それを聞いて真っ青になっている桂花に、「桂花、俺先に行ってる!」それだけ言うと、アシュレイは二人を置いてどんどん走って行った。
あっという間にアシュレイが公園に着いた時、小さな公園の中には二人と一匹しかいなかった。
小さい子がもっと小さい子を必死で背中に庇っている。その子供とほぼ同じ大きさの黒い犬が、向かい合わせに立っていた。
「冰玉、大丈夫だからね。」一生懸命後ろの子供に声をかけるジュニアだが、よく見ると腕や足が震えているのがわかる。
その姿を見たアシュレイは頭の中が真っ白になった。
ようやく桂花が公園に着くと捕物はすでに終っていて、アシュレイの足元には、大きな黒い犬が四足をダランと伸ばし転がっていた。
「ばぶう!」「冰玉!」涙を浮かべて母親の元へ駆け寄ってきた子供を、しっかりと抱きしめる桂花だった。
「桂花、安心しろ。チビ共は無事だぜ。」かかかっと笑うアシュレイに桂花が尋ねる。
「これは貴女が?」と、いつの間にか雑草のツタやそこら辺にあるヒモを使って、縛られている犬を指す。
「ああ、まあな。」
「ありがとうございます、アシュレイ殿。」心の底から感謝の意を述べる桂花だった。
「立派だったぜ、冰玉。よく泣かずに我慢したな。」アシュレイは冰玉の頭を撫でる。そしてくるっと振り返ると、傍に立っていた自分の息子の頭も撫でてやった。
「チビティア、お前もよく頑張ったな。頑張って小さい冰玉守ったんだろ、偉いぞ!」そう誉めてやると、ジュニアは「ふぇーん。」と咳を切ったように泣き出し、母親の膝に抱きつく。
「よしよし。」そんな我が子をアシュレイは優しく抱きとめ、ずっと背中をさすってあげてやるのだった。

その後。
あまりに緊張し過ぎた反動か、チビティアはいつも以上に母親にべったりとくっついていた。
夕食の支度をしていても、母親のエプロンの裾をつかんで離さない。
食事をしていても食べさせてとアーンする。
もちろんお風呂も一緒。最近は弟妹かお祖父ちゃんと入ってくれていたのに、しかたなくアシュレイは順番を早めて入ることになった。
とにかく早く寝かそうとチビティアに絵本を読んでいると、仕事から帰って来たティアが部屋に入って来た。
「あ、パパ!」
「おかえり、ティア。」
「ただいま。」
にこにこと笑っている我が子と、今朝よりもやつれたように見える愛妻が布団に寝そべっていた。
「ティア、ちょっとチビ寝かしつけといてくれよ。俺、母さんの手伝いしてくっから。」
「え〜、私も今帰ってきたところなのに?」
今日は玄関に出迎えてもくれないと、内心ティアはご機嫌斜め。
「頼む。ずっと任せっきりなんだ。お前のご飯の支度もしてきたいし。」両手で顔の前に拝まれ上目遣いをされると、ティアは何も言えなくなる。
「わかったよ。」
「サンキュ。」そそくさとアシュレイは部屋を出て行った。
「さ、ジュニア。ママは用事があるから、今日は私が読んであげるよ。」
ジュニアの隣に寝転びながら、ティアは絵本を開いて読み聞かせをしようとすると、子供がぐいぐいとティアのワイシャツの袖を引っ張る。
「ん、何?」
「あのね、パパ。今日ママ凄かったの!」チビティアは目をキラキラさせながら、父親に今日あった出来事を話し始めた。
「僕が冰玉と遊んでたら大きな犬が現れたんです。ビックリしてどうしようと思ってたら、ママがやって来てその大きい犬をガツンって殴ってやっつけたんですよ!!」
「ママ、とってもカッコ良かったなー。」
うっとりと話す子供に、アシュレイらしいと嬉しく思いながら、ティアはさすがママだよね、と同意した。
「僕決めました!」
「何を?」まだ微笑みを浮かべているティア。
「将来ママを僕のお嫁さんにします!!」高らかに宣言するジュニアだった。
ティアの表情がすーっと無くなる。
「…コホン。あのね、ジュニア。ママはパパのお嫁さんだから、君のお嫁さんにはなれないんだよ。」
ティアはわざとらしく咳払いした。
落ち着け相手は子供だ、しかも自分の子だ。そう言い聞かせて動揺を隠そうとする。
「どうしてですか?ママは僕のこと好きですよ。」きょとんとしてジュニアは言った。
「好きには色々な種類があるんだよ。君を好きという気持ちと、パパを好きという気持ちは別なんだ。」
子供相手にあしらうことも出来ずに、真面目に答えてしまうティアだった。
「そんなの、僕が大きくなったら変わるかもしれないでしょう。」ジュニアもなかなか負けていない。
ティアの頬がひくっと引き攣る。
「それじゃ理由を言ってあげよう。一番の理由は君とママは血が繋がってるから、結婚出来ないということなんだよ。」
「血が繋がってるから?僕はママと結婚できないんですか?」ジュニアはショックを受け、ぽろぽろと泣き出してしまう。
「えっと、ジュニア。つまりそれはね・・・・・」ティアがどう宥めようか迷っていると、ガラッと襖戸が開く。
「どうした、チビティア!」血相変えてアシュレイが部屋に入って来た。
「ママぁ。」ふぇ、ぐすっと泣きじゃくる息子を抱きしめると、ティアをキッと睨みつけた。
「もう何やってんだよ!寝かしつけてくれって言ったろ!?」
「わ、悪かった、アシュレイ。」降参のポーズをとる旦那はもう放っといて、アシュレイはさっさとジュニアを布団にくるむ。
ティアはすごすごとお風呂場に向かうのだった…。

結局李々に給仕をしてもらい部屋に戻ると、ちょうど眠い目を擦りながらアシュレイが布団から起き上がったところだった。
「あ、悪いティア。お前のご飯・・・」
「それはもうお義母さんにして貰ったよ。ねえ、それより――」
ティアの影がアシュレイの顔にかかる。
「な、何だよ。」焦ってアシュレイは尋ねた。
「それより、君は私の恋人だよね?」
「は?ま、まあそうだな。お前の奥さんだよな。」訳がわからずアシュレイは答えた。
「違うよ、恋人だよ!こ・い・び・と。プロポーズした時言ったじゃない。」
まさか忘れてないよね?とティアが四つん這いのまま近寄ってくるのに、アシュレイは腰を引いて思わず後擦さってしまった。
「あ、ああ。言った。確かに言った。」
ティアの目が座っていて口調があまりにも真剣だったので、俺何か悪いことしたかな、と本気で心配してしまうアシュレイだった。
「じゃあ、もっと私のこともかまって。」
「は!?」今度こそ訳がわからない。
「君さ、ジュニアが生まれてから、私のことなんてどうでもいいと思ってない?」
ようやく夫の不機嫌の原因が明らかになり、アシュレイの気持ちも落ち着いてきた。
つまり自分の夫は自分の子供に焼きもちを焼いているのだ。
「ったく、お前は〜〜〜。」
結婚するまで、なんて冷静沈着な男性(ひと)なんだろうと、外見の美しさだけでなく自分と正反対の中身に惚れたと思っていたのに、結婚してから実はとんでもなく甘えん坊だということに気がついた。
「アシュレイ…。」
どんどん顔を近づけてくるティアの顎をぐいっと押す。
「うざい!」
「えっ!!」
「お前は昼間会社に行ってるからいいけどさ、俺1日中チビティアと一緒にいるんだぜ。しかも今日なんて俺にべーったりくっついてくるしさ。ようやくチビを寝かしつけたのに、今度はお前のお守りなんて出来るか!」
「24時間朝も夜も同じ顔で見飽きた!!」アシュレイはそう言うと、ティアを押しのけてさっさと布団に潜った。
あっという間に寝息を立てている愛妻に、外では眉目秀麗で通っている夫はまだ固まったままだ。
「ア、アシュレイ、そんなあ〜〜〜・・・。」
アシュレイに言われた言葉が頭の中を駆け巡り、いつまでも離れないティアだった。
そして翌日決意する。今度はアシュレイそっくりな女の子を作ろうと。


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