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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.223 (2008/06/07 11:19) title:蜂蜜日和
Name:ぽち (softbank220002050189.bbtec.net)

 ある日の昼下がり。珍しく平日休暇となった柢王は居間でゴロゴロしながら桂花の髪を指に巻きつけ遊んでいる。
 テーブルの上では電卓を無心でたたき、家計簿をつけている桂花は、柢王を構っている様子はない。
「なぁ、明日どっか出掛けねぇか?」
「ダメです。明日はアシュレイ殿と出掛ける約束をしましたので」
 視線を帳簿から離さず、レシートの束をさくさくと片付ける。
「へぇー、珍しいな。で、どこ出掛けんだ? 奥さん」
 従妹のアシュレイと仲良くしてくれるのは嬉しいが、夫である自分よりそちらを優先するのは少し…そうほんの少し頂けないだけだ。
「アシュレイ殿とその友人数人と某有名ホテルのプールへ」
 家にばかり閉じこもってたら、具合が悪くなるっ! と、普段から買い物とパート以外 外に出ない吾を別の場所に連れ出してくれると言ってくれた。
「ダメダメダメッ! 絶対ダメ!! そーゆーところは俺が一緒じゃなきゃダメだっ」
 桂花の水着姿なんて他のヤローに見せたくない一心で反対するが、肝心の桂花は冷たい視線で柢王を見返す。
「どうしてですか? 貴方は仕事柄いろいろな所へ行かれてますし、帰宅前にはどこかで飲んで帰ってこられますけど。吾はそのような場所もありませんし、アシュレイ殿も1人で留守番ばかりしていてはつまらないだろうと連れ出してくれるんですから、別に良いですよね」
 友人がそのホテルのオーナーの娘で、無料招待してくれると言ってくれているから心配要らない とアシュレイからの伝言付。
 有無を言わさない桂花の言葉にぐうの音も出ない。
「女性ばかりですから、貴方の心配するような事はありませんよ」
 冷たい表情から一転、柔らかく微笑まれると柢王もついほだされてしまう。
「女ばっかだからって気をつけろよ」
「はいはい」
 クスクスと笑みをこぼしながら、隣の寝室へ帳簿を片付けに向かう桂花に柢王は再度確認。
「なぁなぁ、どんな水着着てくんだ?」
「そうですねぇ…、以前貴方に買ってもらいましたビキニでも着ましょうか。着る機会がないまましまいっぱなしですし」
「!!」
 柢王はテーブルの上に無造作に置いてあった携帯電話を握りしめ、慌てた足取りのまま外へ飛び出してしまった。転げ落ちていなければいいと思う勢いでだ。
 視線をドアに向けたまま、桂花はぼそっと呟く。
「吾が着るはずないじゃないですか…、馬鹿ですねぇ」
 先日パートの帰りに寄った古巣のデパートで手頃な水着を購入したばかり。黒のノーマルワンピースにエスニック柄のパレオがついた普通のもの。
 パレオの生地の色が珊瑚色で、珍しく自分でもすぐに気に入って購入した一品。値段もセール中だったのと レジの女性が入社当時から可愛がっていた夾竹だったので社員割引で売ってくれた。
 ビキニの水着は柢王が従妹の為に偽装の手伝いをした温泉旅行の際、混浴風呂に入る時は必要と勝手に購入してきたもの。
 あの時は、アシュレイ殿と守天殿も一緒で… 自分のサイズを言った事もないし、知らないはずなのに ぴったりサイズを用意してきたのには、心底驚いた。
 見ただけでわかるのかもしれない あの人は。
 しかし その時言った吾の言葉を覚えていないところも、やはりあの人らしい。あの時も言ったはずなのに「吾はこの手の水着は来ません」と。
 柢王が財布を持っていった様子はないし、ここで吾の水着を買って来ようにも携帯では購入不可能にしてあるから大丈夫。
 あの人の飲み代だけで結構な額になってしまっているから、そろそろ貯蓄のほうも考えてもらいたい。今はまだでも、そのうち子どもでも出来たら働きに行く事が困難になってしまうかもしれないから。
「少し、脅かした方がいいのかもしれない」
 真っ赤になっている家計簿を見せるもよし、子どもが出来たとでも言えば… これはよそう。ただでさえ片付けられない柢王が喜び勇んで子どものものを嬉々として集めだし収拾がつかなくなるかもしれない。
「この帳簿と、あの人の給料明細を同時に見せれば、少しは考えてくれるかもしれない」
 これからの事 一緒に考えて絶対幸せになろう と言ってくれたあの人を信じてみようと思う桂花であった。
 
 
 こちら 柢王。ただいまアパート入り口 駐車場前。携帯メモリーをひたすら確認、呼び出し中。
「あっ、ティア! 俺、俺」
『…柢王、どうしたんだ?』
 仕事中に何事だと、怪訝そうな声が返ってくる。しかし 柢王はそんな事に気を配っている状態ではない。
「桂花が明日、プールに行くんだって」
『へぇ…、良かったじゃないか』
「良くないっ! 俺とじゃなくて、アシュレイとなんだ」
『えぇっ? アシュレイと?』
 土曜日は休日出勤して欲しいと先日 上司の閻魔より言われて、渋々了解した覚えがある。婚約者とは週末にしかデートできない状況なのに と歯噛みしたのだが、当の本人にその旨を伝えると「仕事、頑張れよ」と、さらりっと言われて落ち込んでいた最中。「会いたい」とか「寂しい」なんて言葉は一言も出ず、私の方が君に会えなくて電話やメールだけじゃ寂しいと思っているのにっ! 私より義従姉のほうが大事??
 一瞬にして体温急上昇したティアは、柢王に後で掛け直すと言って電話を切り、インターネットでわけのわからないページを開いてニヤついている上司閻魔に詰め寄り、明日の出勤を取り消させた。
 そしてそのまま外回りしてきます と(一応数件まわる予定は入れているが)嘘を言って、外へ飛び出し 真っ直ぐ柢王の自宅へ向かった。
 
 柢王宅近くの小さな喫茶店。ここはフレーバーティーの種類が豊富だと近隣の住人だけではなく、遠方からの客も多いと噂されているところ。
 すぐさま電話を掛けなおしたティアに、自宅はマズイと柢王が指定してきた場所だ。
 カラカラン と、カウベルのような音が響き 「いらっしゃいませ」と店主の声に「ここだ!」と言う柢王の声。
「ごめん、待たせた」
「悪ぃ悪ぃ、無理矢理抜けてきたんだろ? 大丈夫か?」
「ああ、先に2件ほど書類を渡すだけのところに行って来たから。外回りって言ってきたし」
 ひでぇ嘘つきやがんなぁ と柢王に一笑されたが、すぐに真顔に戻ってテーブルの中央に顔を持っていく。
 ティアも声を潜め、周囲に聞かれないように小声で話す。
「で、アシュレイが明日プールに行くって言うのは、本当の事?」
「あぁ、マジな話。桂花から聞いたし、誘ったのもあいつらしい」
 自分がプールだ海だと誘っても頷いてもくれないのに、桂花は誘う? ズルイっとティアは握り拳でテーブルを叩く。
「で、桂花の奴 ずーっと前に俺が買ってやったビキニ着るって言いやがって…」
「それって……」
 (君の場合、それを着た桂花とイチャつこうと思ってたんでしょうが) とは突っ込まない。それよりも自分もまだ今年は拝んでないアシュレイの水着姿を、自分以外の男の視線に晒すなど言語道断!!
「どこなのっ? どこのプール??」
 某有名ホテルの名を柢王は言うと、ティアは暫く考え込み おもむろに携帯を手に持ち席を立った。
「ティア?」
「ちょっと待ってて、確認してみるから」
 外に出てなにやら密談中。怒ったような雰囲気を醸し出しながら喋っているようだったが、暫くして店内に戻って来た時には落ち着いていた。
「えーっとね、説明するよ」
 キャリーバッグからA4ぐらいのパソコンを出し 画面表示されたホテルの説明をし始める。
「ここのホテルは、本館 別館と分かれていて、別館に新しくスポーツ施設を作ったんだって。本館や外からは中を覗く事は出来ないそうだし、大丈夫だよ」
 心配いらないと ホッとした表情で柢王を見つめる。
「でもさぁ…」
「明日はプレプレ(?)オープンで、オーナー夫人とお嬢さんとその友人のみって言ってたから別段…」
「ばっっっっか、だから心配だろう? 確かに有名人さんご招待!って状態のプレオープンとは違うけどさー。お偉いさんと数人の女だけって事は、給仕をする奴とかが居る訳だろう。そいつらがアシュレイに眼ぇつけて、アシュレイもその気になっちゃったら どおすんだよ?」
 柢王はワザと"アシュレイ"と強めに言う。桂花は自分と結婚してるし自分にベタ惚れと思い込んでいるので、ティアの協力を取り付けなければ目論見が破れてしまう。
「それも大丈夫。女性限定なんだって、明日は。従業員も女性のみ出入りが出来るって聞いたよ。それにアシュレイはそういう事の出来る人じゃないから絶対大丈夫だし、信じてるよ」
 にっこりと言い切るティアに柢王はがっくりと肩を落とす。上手くすれば自分たちも入れるようにしてくれるかもしれないと、夢見た結果がこれだ。
「そーゆー事言ってる奴に限って、後で泣くんだよなぁ」
 柢王は不貞腐れたようにイスに寄り掛かり、ティアを見る。
 そんな仕草を見て、呆れたようにティアも口を開く。
「そんなに心配なら帰る頃迎えに行けばいいだろう? 桂花もプールで遊べば疲れるだろうし、帰りに迎えに行って荷物でも持ってやれば喜ぶと思うよ」
 至極 一般的な回答だが、水に浸かると体全体がダルくなるのは本当のこと。これで泳いだり遊んだりすれば全身運動を行ったも同然。
「そりゃそうか。──了解♪ そうするわ」
 サンキューと何とか笑って別れる。ティアのように車で迎えに行く事は出来ないが、一緒に帰るっていうのは自分でも久しくしていない事。結構ワクワクしてきている。
 後は、桂花の全身(特に腹中心に)に跡をつけてしまえば、あの水着は着れないはずだから と本日の最終予定を書き加えて、出てきた時とは正反対の表情でマンションに戻った。


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