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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.21 (2006/10/09 17:17) title:道標
Name:碧玉 (210-194-208-95.rev.home.ne.jp)

ハアッ・・・ここ数年ついたことないため息を今日は何度ついたことだろう、山凍は思う。
 彼はいま南領市街で月に一度開かれる月例祭へ三人の子供を連れやって来ていた。いや引率させられたという方が正しい。
 たまたま天主塔に本を探しにきた折、三人にねじ込まれたのだ。
 もちろん大反対した。
 だが「私はいいから、柢王とアシュレイは行っておいで」と寂しそうに笑った幼い守天に山凍は落ちたのだ。

「やってる、やってる」
「早く、行こうぜ」
 ウキウキ気分の柢王とアシュレイ。
 月例祭に来れた喜びで声も出せず目を潤ませているティア。
 まだ南ではそう顔を知られていない柢王はそのまま、南国の王子であるアシュレイは真赤な髪と瞳を茶褐色に、ティアは御印を消し、髪を軽く結い上げた可憐な少女姿に変装していた。
 問題はなかった・・・三人には。
 問題は変装下手な山凍。あまりの不器用さに三人は嘆息した。せめても髪と瞳を黒くすることで三人は妥協した。

 四人で歩いていると脇から山凍の腕がガシッと掴まれた。
「いらっしゃい、いらっしゃい旨い酒に肴だよっ。他じゃ手に入らない珍味だよっ。兄さん、兄さん味見てってちょうだい」
「いや、結構。すまない・・・」
 ブツブツ断る山凍。
「食べたら変わるよ、ホラホラホラっ」
 強引なおばちゃん。
「わたしは結構・・・」
 断る山凍。
「仕方ねーなぁ」とアシュレイと柢王は顔を見合わせ駆け寄った。
 そして掴まれていた山凍の腕をひっぱり「親父っ、さっさと行こうぜ」アシュレイが言えば、ツーカーのタイミングで「父ちゃん、腹減ったー」と柢王が言う。
「おや、子連れだったのかい?」
 驚き顔のおばちゃんに柢王は擦り寄り何やら囁く。
 おばちゃんは「まぁ!!」と小さく叫び、同情にあふれた目で山凍を見つめた。
 そして「若いのに大変だね。ま、かんばんなよっ」と一抱えのサービス品を山凍に渡した。
 訳がわからぬものの解放され安堵顔の山凍の横でアシュレイは首を傾げる。
「おまえ、なに言ったんだよ」
 柢王はニヤッと笑いアシュレイに囁く。
「俺の母は俺を置いて他の男と駆け落ち、ティアの母は身分違いで泣く泣く別れ、今のおまえの母は病弱で療養中ってな」
「・・・・・」

 しばらくして、またしても山凍が売り子につかまった。
 先ほどのおばちゃんタイプとは違う。
 容姿は中の上。多分、自分の容姿に自信満々の女だ。
「あのタイプはティア、おまえだな」
「私っ?」
「そうそう、はやく行け」
 柢王に促されティアは「父上・・・」と小さな声を出した。
「ダメダメそんなんじゃっ!!親父、さもなきゃ父ちゃんだ」
 アシュレイが口をはさむ。
「オ・・・ヤジ・・・???」
 初めて口にする言葉にティアは躊躇する。
 そして口の中で呟く。「オ・・・ヤジ・・・オヤ・・ジ。×××とー・・・ちゃん。とう・・・ちゃん。とうちゃん・・・父ちゃん♪」と。
 そして山凍の側に行くとそっと上着の裾をつかみ笑いかける。
「父ちゃん♪」
 南の女と山凍が瞬時凍りつく。
 そんな二人にティアは天使の笑みを浮かべもう一度。
「父ちゃん♪」
 一瞬で勝負はついた。
 南の女は敗北を認めた。こんな綺麗な子供の母親には敵わない・・・と。
 
 その後、三人は大いに楽しんだ。
 山凍は柢王やアシュレイ付きの教育係りと違いグチグチと小言を言わない。ハメをはずしすぎるとゴチンとゲンコツが落とされる。そのやり方はすっきり明快で腕白な二人にはピッタリ合っていた。
 それに城の大人が知らない骨董市での目利きや、物の質による値段の相場を教えてくれたりもした。

 さんざん遊び疲れ眠ってしまってティアとアシュレイを山凍は軽々と背負い、その横で柢王は月例祭で手に入れた皆の品を両手に帰途につく。
 肩を並べながら山凍は柢王へ静かに口を開いた。
「守天さまには、おまえやアシュレイのように嘘をつかずに、相談しあえる友達が必要なのだ。守護主天の力は特別のものだが、心が傷つくときは私達と同じだ。よく覚えておいてくれ」
 柢王は山凍のこの一言をしっかりと胸に刻みつける。

 ティアを私室のベットに寝かせると同時にアシュレイは目を覚ました。
 山凍はくれぐれも今回のようなことはしないよう釘を刺し、そして早く守天を護れるくらい強くなれと二人の頭を大きな掌でガシガシとかき回し笑った。
 山凍の大きな手のぬくもりは未来の武将を支える何よりの糧となった。


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