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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.174 (2008/01/16 14:02) title:南国 地獄温泉巡り
Name:碧玉 (210-194-208-237.rev.home.ne.jp)


 ハアッ・・・今日何度目のため息だろうか、山凍は思う。
 3人の子供を伴って南領月例祭に出かけたのはひと月前のこと。
 それが今回も・・・。
 もちろん大反対した。
 だが「私はいいから柢王とアシュレイは行っておいで」と寂しげに笑う幼い守天に山凍は落ちたのだった。

 始まりは三日前、文殊塾での昼休み。
 裏庭にある彼等の隠れ家でアシュレイがティアと柢王にペーパーを読んで聞かせていた。
 今や恒例となりつつある昼のお約束。
 アシュレイの活字嫌い克服に始めたことだったが、実際は彼の昼休みを共有するというティアの秘策だった。
 飽きずに続いているのは一般庶民購読率ナンバーワンである『ザ・テンカイ』のおかげだろう。
『ザ・テンカイ』それは各国のニュースをはじめ、流行のファッション、グルメ、デートスポットやテーマパークの紹介。はたまた人生相談から占いまで何でもござれのオールラウンド誌。
 ここから得る色濃い情報は、幼い3人には胸躍るものばかりだった。
 「当選発表〜」
 「オイオイ飛ばすなっ、何の発表だよ?」
 「ええーっと、第××会、南領月例祭福引当選発表」
 柢王の叱咤に、つかえながらアシュレイが文字を追う。
 そんな姿も可愛いなぁとティアは微笑みペーパーを覗き込む。
 「それ・・・持ってる。 ほらっ」
 ティアは脇に置かれた本からしおりにしていた紙を引き出す。 前回のお忍びの記念にとっておいたものだ。
 「すごいぞっ ティア!!」
 「スゴイもナニも当たってなきゃ意味ねーよ」
 「柢王の言うとおり。 でもチャンスは得た訳だよね」
 当たってるとは思えない。けれどアシュレイの気を挫きたくなくてティアは言葉をつないだ。
 「商品はなぁに?」
 「んーーーと、五等、地獄温泉風呂の素。 四等、四選激辛ラーメンセット。 三等・・・」
 「もっと上、上。特賞は何だよ」
 アタリ、ハズレより商品に興味がある柢王がアシュレイを急かす。
 「特賞、特賞っ、あった、特賞は『御家族四名、国営地獄風呂温泉と豪華ディナーご招待』」
 「へぇー」
 「当選番号、ティアいいか?」
 「うん」
 「 3103 596 3」
 「サントーサン、ゴクロウ、サン・・・エーーーーーッ!!あっ・・・当たっ、当たってる!!」
 「!!!」
 寝転がっていた柢王が跳ね起きるとティアから福引を奪い取り、アシュレイと共に覗き込んだ。
 「すげぇー、当たりってあんだなー」
 主点ズレまくりの柢王。
 「地獄風呂かぁ〜。身体の芯までポカポカするんだろうね」
 夢心地のティア。
 「きまってんだろっ。肌はしっとりの、名物激辛まんじゅうと 地獄玉子は絶品なんだぞっ」
 ここぞとお国自慢のアシュレイ。
 三者三様の感想。
 だが、その心はひとつ。
 『―――――地獄風呂ツアーに行きたーーーいっ!!―――――』
 そうとなったら―――ターゲットは山凍。
 3人は頭を寄せ作戦会議に突入した。
                    

―――という経過でもってまたしても山凍は3人の引率を引き受けることとなった―――
 前回と同じく、南国王子のアシュレイは髪と瞳を茶褐色に、南国ではまだ顔の売れていない柢王はそのまま、御印を消したティアは可憐な少女に変化した。
 しかし、問題はやはり山凍。
 相も変わらぬ怪しい変装に3人は嘆息。
 数回の修正を経て渋々合格点を出した。

 「龍宮城みたーい」
 真赤に塗られた太い柱の門を通ると、寝殿造りの絢爛豪華な建物がそびえたつ。
 ここぞ、二ヶ月前にできた南国、国営新スポット地獄風呂温泉だ。
 情緒溢れる外装とはうって変わり、中は近代的。
 クアハウス的要素を主に、全てが男女共用。水をはじく衣類に着替えて入場することとなっている。
 「五つも風呂があるっ」
 フロントでもらったパンフレットを覗いて興奮する3人。
 そんな3人に山凍は異変を感じたら即姿穏術で姿を消すこと。そしてティアに関しては自身に結界を張ることを固く約束をさせ自由にした。
 「どっから行く?」
 「そうだね〜」
 「俺は『深霧地獄』行ってくるわ〜。 じゃあな」
 迷いに迷うアシュレイとティアをおいて柢王はさっさと身をひるがした。
 「なんだよ、アイツ」
 「いいじゃない。アシュレイはどこに行きたいの?」
 「そうたなぁ・・・ティアは?」
 「うーん迷うなぁ〜」
 「なら全部回ろうぜ」
 アシュレイはティアの手をつかみ『海地獄』へと向った。

 「うわぁ、綺麗たね」
 絵の具を溶いたような澄み切った青が一面に広がる『海地獄』。
 だが、その湯につかっている者はひとりもいない。それもそのはず、この湯98℃もの熱湯なのだ。
 あまりにも綺麗で、手を突っ込みたい衝動にかられる。
 そんな情緒にかられるのはティアのみで、アシュレイに関しては「湯に入れなくて何が温泉なんだ」と大憤慨。
 「此処は湯の蒸気であったまるサウナなんだよ」
 「つまんねー、次行こうぜ」
 アシュレイに急かされ二人は次の『泥地獄』へとむかった。 

「うっ!!」
 入るなり二人は棒立ちとなる。
 二人の前には何十人ものゾンビが!!
 いやゾンビではない人間だ。だが皆が皆全身泥を塗りたくっている。その光景は異様なことこの上ない。
 ミネラルを含んだこの泥はエステ効果のあるのだそうだが、美容に興味などないアシュレイには不気味にしか思えずゾンビ(人)が動くたび炎を出しかけてしまう。
 そんなアシュレイを慌てて引っ張りティアは次の『かまど地獄』へと向った。

「ギャーーー!!」
 入った途端響き渡るすさまじい雄叫びに、アシュレイはザッと身構えた。
 中央の釜から真赤な体の男が飛び出し脇に置かれた水瓶にとびこむ。
 その横で制服姿の従業人がストップウォッチ片手に、「只今のタイムーーー」と実況報告をはじめる。
 「な、なんだよ、コレ・・・」
 よく見ると釜の脇のホワイトボードに本日の温度と上位記録が書かれているではないか。
 「―――身体に悪そうだね。 つ、次、行こうか」
  二人は無口になり『かまど地獄』を後にした。

 「アシュレイ? どこ?」
 もうもうとした白い蒸気で一寸先すら見えない。
 お湯すらも乳白色で、どこもかしこも白につつまれている。
 ここは柢王が向った『深霧地獄』のようだ。
「やっと温泉らしくなってきたな」
 モヤを手で仰ぎアシュレイが顔を出し満足げに呟いた。
 湯の温度もちょうとよく身体に吸い付くような感触も気持ちいい。
「うん♪」
 そのアシュレイの手を握り締め、これまた満足気なティア。
 だが、こちらも長くはいられなくなる。
 湯煙の中から怪しい声が・・・。
 怪しいというより艶めかしいというべきなのか!?
 そう此処はアベックをターゲットにした風呂だったのだ。
「なんだよっ!!この温泉は!!」
 照れと怒りで真赤になったアシュレイはティアを引っ張り最後の『樹海地獄』へと向った。

「ヒャッホー♪」
 天井から垂れ下がった蔓から蔓へ。ターザンの如く動き回るアシュレイには先ほどの不機嫌さは露ほどもない。
 それもそのはず『樹海地獄』こと別名ジャングル風呂は、子連れファミリーの要望から急遽追加され作られた子供の為のスポットだった。
 「ティアもこいよ」
 アシュレイに促されティアもターザン遊びにチャレンジ。
 「お止めください」「危険です!!」とすっ飛んでくる八紫仙も使い女もおらずティアもハメを外し跳ね回る。
 また遊んでる子供達も文殊塾に通ってる子息令嬢とは違い、多少の危険はなんのその、元気一杯楽しんでいる。
 決まりも秩序もないものと思われるが幼い子には蔓をひいてやったり、順番を譲ったりそれなりのマナーは守られてる。
 小一時間も遊んでいると、名も知らないものの言葉を交わし、皆いつの間に仲良しになっていた。
 「おまえ、新顔だな?」
 「うん、初めてきた」
 「へぇー、スゴイ運動神経だな。おまえみたいに跳べるヤツ初めて見た」
 誉められアシュレイに笑顔がこぼれる。
 アシュレイの素早い動きやバネ、そして何よりも楽しそうな笑顔に引き寄せられ自然にたくさんの子供が集まっていた。
「前のところもよかったけど」
「前?」
「うん、もっと奥地にも温泉があったんだ。大きな露天の温泉」
「あたち、そこ好きだったの」
 子供たちは競ってアシュレイに話しかける。
「ふうん。じゃあ俺も今度行ってみよう」
「無理だよ」
「なんで?」
「なくなっちゃったから」
「なくなった?」
「アシュレイ様が火山を吹き飛ばしちゃったんだ」
「そう王子さまが」
「―――――――――」
「ふっ、吹き飛ばしたっていっても温泉自体はなくなってないでしょ」
 黙りこんでしまったアシュレイにかわってティアがフォローを入れる。
「うん。でも温度がまったく定まらなくなって温泉としては使えないんだって」
「あの温泉はリュウマチに効くってウチのばーちゃんのお気に入りだったのに」
「玉子を売ってたおじちゃんも嘆いてたよ」
「アシュレイ様は乱暴だから」
 口々に子供たちは言い募る。
 そのうち周囲は乱暴、乱暴と乱暴コールが広がり始め、アシュレイは拳固を握りうつむいてしまった。
 何とかフォローを入れようとするティアだったが上手い言葉が浮かばず、目に涙が溢れてきた。
 ダメだ。ここで泣いたらもっとアシュレイがつらくなる。
 ティアがそっと涙を払おうとしたとき脇で小さな声が響いた。
 「でもアシュレイ様は優しいよ。だって麒麟に乗ってあたちに手ェ振ってくれたモン」
 その声に誘われ、
 「オレも見たっ。麒麟に乗ってた」
 「麒麟は誰にも触らせないんだぞ。なのにアシュレイ様にはなついてんだ」
 「カッコイイ!!」
 と我先に次々アシュレイ自慢がはじまった。
 周囲にはすっかりカッコイイコールが響き渡っていた。
 俯いていたアシュレイがそっと顔を上げると小さな女の子がニコリと笑い言った。
 「アシュレイ様、ちっこいケドかっこいい♪ね」
 「―――チビにチビと言われた・・・」
 ボッソリ呟いたアシュレイだったが、その顔は喜びに溢れていた。
 そしてもう一遊び。
 「また遊ぼうねー」の言葉に見送られアシュレイとティアは『樹海地獄』を後にした。
 
 「風呂のあとはコレ」
 アシュレイは瓶入りいちご牛乳をティアに渡した。
 恐る恐る口をつけたティアは青い目をキラキラと輝かせる。
 「あっまーい。甘くておいしい♪」
 「だろっ!!」
 ティアの反応が嬉しくて、アシュレイは得意になる。
 着色料と香料のみのいちご牛乳。だがアシュレイとティアにはどんな高価な飲み物よりも百倍も千倍も美味しかった。
 「豪華ディナーはまたにして、そろそろ帰りましょうか」
 いつの間に現れた山凍にティアは素直に頷く。
 「ほら、激辛饅頭と地獄玉子だ」
 柢王もやってきて手にぶらさげた紙袋をティアにさしだす。
 空になった瓶を置きに行ったアシュレイの背を見送りティアは山凍と柢王に頭を頭を下げた。
 「今日は楽しかった。ありがとう」
 ティアはちゃんと気づいていた。山凍と柢王が姿を消して警護していてくれたことを。
 「知ってたのか?」
 「さすがは守天様だな」
 山凍の賛辞にティアは笑って応えてから小声で付け加えた。
 「けれど、アシュレイにはナイショで、ね」
 
 

 


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