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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.115 (2007/05/09 22:45) title:統一地方選挙(11)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)

 
 
暉蚩城内の、選挙事務所。
 
ネフィー「・・・・になったな」
山凍  「は…?」
ネフィー「だから、世話になったって言ったんだよ」
山凍  「ネフィー様…」
 
 最後の個人演説会を終えて、城に戻ってきた途端、さらっとネフロニカの口からそんな言葉がこぼれた。
 
ネフィー「明日、もし私が負けたら、おまえにはもう会えないからね。
     それだけ言っておこうと思って」
山凍  「負けたらなどと……そんなことおっしゃらないで下さい」
ネフィー「じゃあ、言い方を変えるよ。…山凍、」
山凍  「はい、ネフィー様」
ネフィー「守護主天を頼むよ」
山凍  「…それは、」
ネフィー「私がなっても、誰がなってもだ。もちろん、私は勝つつもりだよ」
山凍  「……承知しました」
ネフィー「ああでも、おまえもそろそろ身を固めないといけないだろうから、
      無理はしなくていい」
山凍  「私のことなど、お気になさらず」
ネフィー「うーん。でも、たまに廊下ですれ違う爺やたちがさ、私と目が
     合うと泣くんだよねぇ…」
山凍  「ドライアイ気味な老人ばかりなので、ちょうどいいでしょう」
ネフィー「ははは。言うね、おまえも。……だったら、頼むよ」
山凍  「はい…」
ネフィー「ねえ、山凍。覚えておいて。
     もし、もう二度と会えなくて、おまえに私が見えなくなったとしても、
     私にはおまえが見える。……私はちゃんと、おまえを見てるよ」
 
 投票前夜、天主塔へと帰る前に交わした言葉が、山凍が聴いたネフロニカの最後の声だった。
 
 
 
〜〜〜 * 〜〜・〜〜 * 〜〜〜〜 * 〜〜・〜〜 *〜〜〜〜〜 * 〜〜〜
 
 
 ちょっといいか、と柢王に訊かれてティアは投票前夜、その日の反省会が終わった後も選挙事務所部屋に残っていた。
 
柢王 「守天なんてものから解放されたほうが、楽に生きれんじゃねぇかと
    思ってさ。なりゆき…とか、責任感みたいなもんなら…」
ティア「そうだね。そこまで考えてなかったかな…。守護主天というものを
    他の人たちがどう考えているか分からないけど、本音を言えば、
    立候補者が出るなんて思ってもなかった。だからどうせ私がやる
    しかないんだろうなって。……我ながら傲慢だよね。
    …でも、守天になりたいって立候補者が現れて……」
 
 それが、もし先代守天でなかったら、自分はどうしただろうか……。
 とにかく、先代が出馬した以上、自分は戦って勝たねばならない。
 減価償却(?)が間近とはいえ、今すぐということではないのだ。
 だったら、先代が当選した暁には、この自分の身体を明け渡さなくてはならない…らしい。
 そうなっても、私が消えてしまうわけではないらしい。
 ただ、他の歴代守天の方々と同じような存在になるだけなのだ。
 実体のない、すべてを見守るだけの存在に……。
 
柢王 「ティア…?」
 黙ってしまったティアに、心配して柢王が声をかける。
 
ティア「あ、ああ、ごめん。…他の候補者が立ったおかげで、自分でも
    もう一度守護主天について考えてみたんだ。それで私はまだ満足に
    守天としての仕事を全うしていないことに気がついた。私は、
    守天として私にできることをしたいんだ」
柢王 「おまえが、やるってんなら、俺は応援する」
ティア「清き一票をお願いするよ」
 答えるティアの言葉に笑いがにじむ。
 
柢王 「…で。本当の理由はなんなんだ?」
ティア「うーん…。やっぱり聖水作ったり手光が使えることだね」
柢王 「向こうも聖水とか手光とか言ってるみたいだけど、おまえもか?」
ティア「私には、とっくの昔に私を置いて霊界行きになってそうな親友が
    いるからね。なにかと便利かと思って」
柢王 「親友だけじゃねぇだろ」
 
 柢王の突っ込みに、ティアの顔からすっと笑みが消えた。
 
 私は、私以外のものにはなり得ない。
 だったら、守天の私のまま、守天の力を有効利用させてもらう。
 そのくらいの気持ちでなければ守天なんてやってられない。
 そして本音の本音は…
 
ティア 「守天としての私でなければ、アシュレイのそばにいられないし、
     アシュレイを守れないからね……。守天ていうのは、今の私に
     とっては、手段のひとつとも言えるかな」
柢王  「ま、いんじゃねぇの。だが、そのためにはまず、」
ティア 「明日、勝たないとね」
柢王  「ああ」
 
 そう言って、顔を見合わせたふたりはともに口角の端をあげてニヤリと笑いあった。
 
 
〜〜〜 * 〜〜・〜〜 * 〜〜〜〜 * 〜〜・〜〜 *〜〜〜〜〜 * 〜〜〜
 
その頃の、選管部屋。
 
『♪シバシモ 休マズ〜』
アウ 「…歌まで覚えたのか?」
 
 ぎょっとしながらも、デンゴン君に尋ねる。
 
『てぃあらんでぃあ ノ 趣味ハ 奏器ノ 演奏ナンダッテ。』
アウ 「対抗意識か?」
『?』
アウ 「いや…。アシュレイには聴かせたのか?」
『ウン。すげー!!ッテ。』
アウ 「ほう…。それはよかったな」
 
 頬染める人形というものを、アウスレーゼは初めて見た。
 
アウ 「ところでな…。明日のことだが」
『ウン』
アウ 「アシュレイや桂花に、先に挨拶しておくか?」
『………』
アウ 「明日は、ゆっくり話ができる余裕などないぞ」
『ウン…』
アウ 「デンゴン君」
『イイ。明日、ソノママ 帰ル。』
アウ 「………それでよいのだな」
 
 そのとき、ノックとともにアシュレイが入ってきた。
 
アー 「まだ仕事してんのかー? …アウスレーゼはともかく、
    おまえは小さいのに働き者だなっ」
 
 そう言ってニッコリ笑ったアシュレイに、頭をがしがし撫でられ、嬉しそうなデンゴン君。
 
アウ  「なんだその、我はともかくというのは」
アー  「だっておまえ、少なくとも俺らの10倍は生きてんだろ」
アウ  「まあな。…で、なにか用か?」
アー  「あ? ああ、ほら、俺、明日は投票所の警備に行くからさ。
     ちょっとおまえらの予定も聞いとこうかと思って。
     前に聞いたとき、結果を持って帰るって言ってただろ。
     だから、ちょっと気になってさ…」
アウ  「そうか」
アー  「なっ、なに笑ってんだよっ!」
アウ  「いや、なにも。明日は、投票終了後、結果が判明次第、
     新守天を見届けてそのまま帰途に着く」
アー  「え…」
アウ  「そなたとは、今回はこれが最後かもしれぬな」
アー  「そ、そんな急に帰らなくても…」
アウ  「約束だからな」
アー  「約束?」
アウ  「ここへ来る前、三界主天様との約束だ」
『あしゅれい…』
アー  「おまえ…っ。黙って帰るつもりだったのかっ?」
『ダッテ…我、あしゅれい ニ さよなら 言イタクナイ…』
アー 「馬鹿っ!!! サヨナラなんてな、ただの社交辞令(?)だっ!
    俺とおまえが、そんなもんでどうにかなるはずねーだろっ!」
『ダッテ、さよなら ッテ、ココラヘンガ きゅっ…テシテ…。ナンダカ 苦シクナルンダモン…。』
 
 自分の胸の辺りをぎこちなく手で押さえてデンゴン君が言う。
 
アウ  「…それはきっと、いろんな気持ちがそこに、デンゴン君の胸に、
     あふれてきておるからなのだろうな」
『イロンナ 気持チ…?』
 
 三界主天様は、ご自分の創った『人形』に命を吹き込み、知恵を授けられてきた。
 デンゴン君は、命と、メッセンジャーとしての役割と、選挙の際の集計器としての能力を与えられた。それ以上でもそれ以下でもない。そのために創られ、そして天界につかわされた。
 
(ある程度の知識はインプットされておったが、ただそれだけの”人形”だった。それが、これほどまでに感情豊かになろうとは……)
 
アー  「…あのな。いつも寝るとき、『また明日』って言ってただろ。
     あれと一緒だ。帰るんなら、『またな』って言ってけ。そしたら、
     俺も「おー!またなっ」て言うから」
『マタナ…?』
アー  「おー、またなっ! ……また絶対会える、約束の言葉だ!」
『ウン…!』
 
アー 「……そしたらっ、俺はもう寝る。おやすみ! …また明日なっ!」
 
 そうして、アシュレイは唐突に部屋を出て行った。
 語尾が涙声だったのは、気づかぬ振りのアウスレーゼだった。
 
 


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