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投稿(妄想)小説の部屋 Vol.3

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No.110 (2007/05/09 22:36) title:統一地方選挙(7)
Name:モリヤマ (i220-221-231-207.s02.a018.ap.plala.or.jp)

 
『天主塔ニュースの時間です。今日告示された守護主天選挙は、現職のティアランディア・フェイ・ギ・エメロードと、新人のネフロニカ・フェイ・ギ・エメロードが立候補し、現職と新人の一騎打ちとなりました。第一声はそれぞれ、現職が天主塔前、新人が北領・暉蚩城前で、午前と午後という時間差で行われました』
 
 
柢王 「とうとう始まったか〜」
 
桂花 「…あなた、まだこんなところにいたんですか」
 
 扉を開けて中に一歩踏み入れた途端、どこかのんびりとした口調に桂花は顔をしかめた。
 こんなところ、とは、天主塔・臨時執務室。
 守天選の間は、選挙管理委員会が執務室を使うことになったので、別室に臨時執務室が設けられた。
 おかげで桂花は、要りようのものがあるたびに、執務室と臨時執務室の往復を余儀なくされている。
 
桂花 「今日は文殊塾で剣術指南の授業がある日だったんじゃ?」
柢王 「あれな、再来週の分とまとめてすることにした」
桂花 「…またいい加減な」
柢王 「つーか、四海が休んでいいってさ。たぶん、ティアの味方になって 
    やってくれってことなんだろ。でも表立って動くとうるさいからな〜」
 
 …血の繋がったかまびすしいハエがあなたにはいらっしゃいますからねぇ。と心で思ったが、桂花はただ柢王を冷たく見るだけに留めた。
 
桂花 「だったら、ここじゃなくて事務所部屋に行って江青殿の手伝いでも
    してきたらどうですか」
 
 一応柢王は、三男とはいえ東領の王子なので、とりあえず裏方でティアを支えようと……思っているらしいのだが、選挙事務所ではなく、たいていこの臨時執務室に入り浸っている。守天の仕事の分類・整理をしている桂花のそばでくつろぎっぱなしの毎日だ。
 
柢王 「江青かぁ…。お邪魔虫にはなりたくねぇしなー」
桂花 「は?」
柢王 「そりゃそうと、なんでティアは朝から晩まで帰ってこないんだ?」
 
 選挙期間中、ティアは午前中は選挙で天界中を走り回っているようなのだが、午後には戻ってきているはずなのに、なぜかいつも姿が見えない。
 
『ソレハ、秘密デス。トリアエズ 言エルコトハ、公職選挙法デ 定メラレタ 約束ダカラ、デス。候補者ハ、皆、平等。』
 実は、柢王が気づいてないだけで、ティアは一応戻ってきている。ただ速やかに執務室で新人候補と交代し、遠見鏡から北に直行しているだけで。
 
桂花 「…なにか御用ですか?」
 
 突然現れたデンゴン君に、一瞬目を見張ったものの柢王も桂花も冷静だ。
 
『あしゅれい、知ラナイ?』
桂花 「…いませんよ、ここには」
『嘘。つんつん、あしゅれいト友達。つんつん、あしゅれいニ 会ワセテ』
桂花 「なんで吾が友達なんですか。吾と彼とはいつも喧嘩ばかりでしょう」
『ダッテ、喧嘩スルホド 仲ガ 良イッテ』
桂花 「誰が」
『あうすれーぜ ガ。』
桂花 「残念ですが、大嫌いです、お互いに」
『…キライ キライ モ、好キノ ウチッテ』
桂花 「誰が」
『あうすれーぜ ガ。』
 
桂花 「とにかく、猿はいませんよ」
 
『サル…? ナニ、ソレ??』
柢王 「猿ってのはな、馴れればすっげぇ可愛いんだけど、喜怒哀楽が
    激しくて、なかなか手に負えない野生の生き物のことだ」
『フゥーン…』
柢王 「ところで、その、ツンツン、てのは桂花のことか?」
桂花 「そうですよ」
デンゴン君より早く桂花が応える。
 
柢王 「…どういう意味だ、そりゃ」
桂花 「別に」
 
柢王 (別に…って)
 そんな妙な名前で呼ばれて桂花がなにも言わないのはおかしい。
 
『アノネ、』
桂花 「教えなくていいです」
柢王 「や、教えてくれ!」
『…ドッチ?』
柢王 「桂花は知ってんだろ? だったら俺にも頼むっ!」
『つんつん、イーイ?』
桂花 「……お好きなように」
 
『アノネ、』
柢王 「うんうん」
 デンゴン君、柢王と桂花を交互に見て、口を開く。
『教エナーイ』
柢王 「……なんじゃ、そりゃーーー!!」
 
 柢王も、どうしても知りたいというほどではなかったが、思わぬ肩すかしにがくっとくる。
 
『つんつん、あしゅれい ハ?』
桂花 「今日は、守天殿と一緒に南の領内を回ってるはずなので、そろそろ
    戻ってきますよ」
 
なんだかんだ言いつつ、桂花もデンゴン君に親切だ。
 
『帰ッテキタラ、遊ンデクレルカナー』
桂花 「ここに寄ったら伝えておきます。あなたもお仕事に戻って下さい」
『分カッター。民主主義、バンザーイ!』
 
 そういい残し、デンゴン君はスルッと消えた。
 
 
 
 そして、ここはティアの選挙事務所部屋。
 仕事に戻るはずのデンゴン君。
 これまたティアの選挙部屋に入り浸っているアウスレーゼを呼びに来たらしい。
『アレ? 江青、寝チャッタノ?』
アウ 「疲れておったみたいなのでな。休ませた」
『…ドウヤッテ?』
アウ 「子供は知らなくていいことだ」
『……オ邪魔虫?』
アウ 「ん? なにがだ?」
『分カンナイケド、サッキ 覚エタ。つんつん ノ 相方 ガ、ココ来ルト オ邪魔虫、ッテ。我、今、昆虫?』
アウ 「……いや。大丈夫だ。デンゴン君はデンゴン君のままだ。
    安心しなさい」
『ヨカッター』
 なにがよかったのか、アウスレーゼにも分からないが、デンゴン君がよかったのなら、まあいいか、と思っておくアウスレーゼだった。
 
アウ 「ところで、アシュレイには会えたか?」
『あしゅれい、てぃあらんでぃあ ト、オ仕事ダッテ。』
アウ 「ああ、選挙運動中か。臨時執務室に誰かおったのか?」
『つんつん ト 相方』
アウ 「桂花と柢王か…」
 
 そういうと、アウスレーゼはククッ…と笑った。
 
アウ 「デンゴン君くらいだろうな。そんな呼び方で許されるのは」
『ナンデー?』
アウ 「…まぁ、その愛称の由来があの魔族の気に入ったのだろうな」
『ナニガー?』
 
 デンゴン君にはよくわからない。
 三界主天様・作で、そのメッセンジャーで、自称・神ではあっても、創造されたばかりのいわば赤子同然なのだ。
 
 
 
 その頃。
 夜中戻ってきた守天が、溜まった書類の処理を少しでも早く終えられるよう、鋭意分別作業中の桂花が孤軍奮闘する臨時執務室。
 
柢王 「ヒマだなー。なぁ、桂花ぁ…」
桂花 「吾はヒマじゃありません」
柢王 「俺はヒマなんだって。なぁ…桂花……桂花って。……け、い、かっ」
 
 そう言って、作業中の桂花のすぐ横においた長椅子に寝そべった柢王が、桂花の髪を指に絡めて甘えてくる。そうしてそのまま絡めた髪を自分の口元に持って行ったり、軽くひっぱってみたり。
 
柢王 「お茶にしようぜ。なっ、桂花」
桂花 「…………わかりましたから、ひっぱらないでください」
 
 根負けして、手にした書類の束を置いた桂花は、ふと人形の言葉を思い出した。
『髪ノ毛 つんつん ヒッパラレテ、ナンデ嬉シソウダッタノ? 痛クナイノ?』
 意外な言葉に、自分がなんと答えたのか覚えていないが、続いた人形の言葉は覚えている。
『ダッタラ、我ハ つんつん ッテ呼ボウット。ソシタラ つんつん サレテルミタイニ 嬉シク思ウー?』
 
 柢王にされてることだから自分は嬉しく感じるのだろうと思ったが、人形の言葉がなんだか微笑ましかったので、桂花はつい「お好きなように」と応えてしまった。
 
柢王 「…そういや、ツンツン、ってさ、おまえがツンケンして見える、ってこと
    だろ? 失礼な人形だよなー」
桂花 「・・・・失礼なのはあなたでしょう」
柢王 「はーっ!? なんだよ、それっ。…桂花っ、桂花って!」
 
 そっぽを向いてしまった桂花の髪をツンツンひっぱって訊く。
 
 それが答えですよ、なんて絶対教えてやらない。と、桂花は思った。
 
 
 


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